今なお残る福島の「風評被害」 生産者の苦悩

東京電力福島第一原発事故から約11年がたち、福島県産の農産物を取り巻く環境
が変わりつつある。生産者はかたちを変えた「風評被害」に苦悩し、海外での輸入規制も
14の国・地域で残る一方で、明るい光も差し始めている。福島から風評のいまを考える。

・コメ60キロ、9500円
2月末、福島県二本松市のコメ農家、渡辺年雄さん(65)に地元の農事組合から配られた
2022年産米の手取り試算には、そう記されていた。2年続けて1万円を割る見通しに、
渡辺さんは思わず頭を抱えた。

原油価格の高騰などもあり、今の生産コストは60キロあたり9千円近い。60キロ1万円を
割れば、赤字も覚悟しなければならない。全国的なコメ余りに加え、新型コロナで外食用の
需要が低迷し、米価が大幅に下落した21年に続いて苦境に見舞われそうな雲行きだ。

原発事故後、放射性物質に対する不安から消費者の間で福島県産の農作物の買い
控えが起こり、福島産のコメも多くのスーパーの棚から姿を消した。それから11年がたつ今、
福島産のコメは市場での低評価が定着し、全国平均を下回る価格での取引が続く。

これには、風評被害を避けようと、「国産」とだけ表示される業務用への切り替えが
進んだことも背景にある。安定的な取引が確保された一方で、業務用の安価な
イメージが強まり、福島産のコメのブランド価値が低下してしまった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b7a1bdc6148160417c8c032ca2efade6c5911aaf