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(’-’*川カチノアルコトデカンタンナコトッテナンデショウ❔ショウセツカイテミタオ🐰マタ🍹♪
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0001jc!ダオ
垢版 |
2022/02/28(月) 21:23:28.818ID:qTMk2Yee0
おかしなことに少女はその時、自分の大人の男性に対するすこし切ないような警戒心がなんとはなしにひそかに甘く、実に嘘のようにその心を馬鹿馬鹿しくとらえるのにその後からあわてて気づくのです。
唇にやさしく指をして、少女はその時なんの故なくぼうっとしてそして闇夜の窓にふらり、時折なぜか笑うような妖しく鋭い夜風にゆっくりとひとり静かにその目をやりました。それはともかくうぬぼれや臆病というよりはあまりにも一種異様なはにかみ、あるいは残酷なすこしだけ怖いような有頂天の慰み、小さな血のような色の赤く儚い花の咲く人間の本当の幸福、あるいは狂気なのだと少女は悟ります。
ふたたび着かえの用意を始めながら、少女はすこし上気のもれるようなその肉体のまだドクンッドクンッといって脈打つのをあわただしくもまたひそかにハッとして気付きます。とにかく、扉の向こうのミトに今なにか応えておかねばならないというようなあたりまえの、いつの間にか誰もが身につけるどうすることもできないひとつの習慣というか、すこし抜きさしならないいかにも不思議な義務感というようなものでなんとなく、煙のようにうすい星明りの残りを集めてしじまのなかにも奇妙に奥深い、春山の夕闇のもっとも暗い奥の奥のようななにか好奇心のようなものが漂い満ちていつしか肌になじんで離れがたいその人肌のように優しい闇の中、ようやく常のようにやわらいだ、少女の少女らしく快活な、うたがう余地のないいつもの本当の落ち着きというようなものがだんだんとそのみずみずしいほのかに照るようで温かい血の気というようなものとともに美しいその表情にふたたびもたらされるのを少女自身ようやく知らされます。
少々白々しく恐ろしい、真新しいように感じるほかならないいつもの自分のいつもの部屋のいつもの扉。それとなく小さく呼吸を整える少女。わずかに震える指。これは果たしてどうしたことでしょう。
「もうすぐ夜明けね、すぐいくわ」
扉を開けてしまってからすました表情でいつもの通り、いつもの業務のような言葉を交わしてしまってしずかにその扉を閉めると、フッとまたひと息ついてたたずむわずかの間。やっとしてふたたび温かいその肌着を名残惜しげもなく素早くはだけて急いで着かえに戻るのでした。どうしたって例え夜の闇にもその目に映る、動揺をさそう呪いの石膏のような、恐ろしい夢のようなその自分自身のみずみずしい白肌にひとり、静かに心を鎮めつつ。
お城の広間に通じる入口は当然のように人通りはなく、時折風で大きく苦しむような底知れないなにか人の死を連想させる恐ろしい不思議なうなり声を上げましたが慣れたもので二人はそれに見向きもせず、見張り台までの長いらせん階段まですこし急いで駆けました。なぜか風はわずかにすこしめずらしく冷たく、断末魔を上げながらまばらに散らされる元気なまだ
子供のような多くの小さな木の葉をむりやりひきはがしてその舞いに巻き込むようで、するとそれがまた時折夢中な少女の赤らんでやわらかなその頬をかすめるのでした。
らせん階段は慣れた体にもかろうじてたどれるほど先の見えないほの暗さで、お城の石灯籠は冷たい風のわずかな湿気からかいつしかぽつりぽつりとようやく灯されるかぎり。見張り台はそのしばらくいったすぐ先に万一に備えて大きなかがり火を焚いて空にそびえているはずで、空をぼんやり照らすその賑やかな光とたまらなくたたくように冷たい頬に触れる力強い熱気が、今からとても恋しい心もちで少女は先を急ぎました。
見張り台は打ち上げ台の上にメーヴェをかかげて空を染めるほど明るく照らされ別段いつもと変わるところもなく、やはり少女を待っています。

残念ながら今日はここまでです。
何らかんらで谷はそのあと何らかんら救われます。予言者のおばあさんもいます。脇を固める子供もいます。
「姫様、青い異国の服を着ているの」
「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし。おお、古き言い伝えはまことであった…!」
青い服の少女は微笑みながらなおも金の光の上を歩きます。生まれたばかりの天使のように。

おわり
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