男「核シェルター? んなもんいらねえよw核戦争なんて起こるわけねえwww」
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男「ふふふ……ハーッハッハ!」
男「見ろ、この大金を!」
男「長年の努力が実って、ついに俺は大金持ちになった!」
男「この金で、誰からも羨まれる素晴らしい人生を歩んでやるぜェ!」
商人「景気がよさそうですね」
男「誰だお前?」
商人「私は商人です」
男「へえ、今の俺ならなんだって買ってやるぞ」
商人「でしたら核シェルターはいかがでしょう?」
男「核シェルター?」 商人「核シェルターを持っていれば、核戦争が起こっても安心です」
男「万一のために買っとくのもいいかもしれない。いくら?」
商人「……です」
男「たけえ! 俺の全財産が飛んじゃうじゃん!」
商人「しかし、それだけの価値はありますよ。このシェルターがあれば、どんな核戦争も怖くなく……」
男「いらねえよ! 冷戦時代じゃあるまいし、核戦争なんて起こるわけねえ!」
商人「そうですか、分かりました。失礼します」
男「――ったく、危うく変なもん買わされるとこだった」 男(大金を得たらやりたかったことのNo.1!)
男「美食だァ〜!」
ジャン!
男「うほっ、なんだこの肉! めっちゃぷるぷるしてる!」
男「うめぇ〜! 口の中で肉がとろける!」
男「このフルーツも甘ぁい! 上品な甘さ! いくらでも食える!」
男「とここで最高級ワインを……」グイッ
男「ぷはーっ! 最高!」 男(美食ときたら次は……)
男「やっぱり美女!」
美女A「こんにちは〜!」
美女B「はぁ〜い」
美女C「たっぷり楽しんでね」
男「おう、たっぷり楽しんでやるぞ。なにしろ金はごまんとあるんだ!」
男「ほらっ、拾え拾え!」バッ
美女達「キャ〜!」 ブロロロロ…
男「ふんふ〜ん」
男(レトロなスーパーカーを買った。みんなが見てきやがる)
ガリガリッ
男「あ、こすっちまった! やっぱ運転が難しいな」
男「へぇ〜、ここがあの有名な遺跡かぁ。写真たくさん撮ろうっと!」パシャパシャ
男(金があれば旅行もできる)
男(そのうち宇宙にだって行ってみせるぜ!) 男(金があれば何でもできる。誰でも寄ってくる。誰もが羨む)
男(なんて素晴らしい人生なんだ……!)
ピカッ
男「?」
男「遠くで何かが光ったような――」 男(あれ……? 周囲が真っ白になった……)
男(ふわふわしてる……俺の体どうなってんだ……?)
商人「お久しぶりです」
男「お前は……いつだったかの商人!」
商人「よく覚えていて下さいましたね。嬉しいです」
男「んなことより、ここはどこなんだ!? 俺はどうなったんだ!?」 商人「あなたは死にました」
男「は?」
商人「正確にいうと死んでいる最中です。核爆発の光に?み込まれているのです」
男「な、なんだって!?」
男「本当に核戦争が起こったのか……そんな予兆なかったぞ!」
商人「核戦争なんてのはそういうものですよ。指一本で始まってしまうのですから」
男「うう……せっかく楽しい人生を歩んでたのに……」
男「核シェルターを買ってれば助かったかもしれないのに……」 商人「やり直しますか?」
男「え?」
商人「あなたはあの核シェルターを買うかどうかの場面からやり直すことができます」
男「できるの!?」
商人「はい、どうしますか?」
男「そりゃやり直すよ! このままじゃ死んじゃうんだから!」
商人「分かりました。では望みどおりに……」
…………
…… 男「ふふふ……ハーッハッハ!」
男「見ろ、この大金を!」
男「長年の努力が実って、ついに俺は大金持ちになった!」
男「この金で、誰からも羨まれる素晴らしい人生を歩んでやるぜェ!」
男「……あれ!? 本当に戻った! やり直すことができたのか!」
男(ってことは……)
商人「景気がよさそうですね」
男「あの時と全く同じだ!」 商人「私は商人です」
男「知ってるよ! 一度経験してるんだから! 核シェルターを売ってくれるんだろ!?」
商人「おっしゃる通りです」
男「買うよ! 貯めた金失うことにはなるが……買う!」
商人「ありがとうございます」
男(これで俺は……核戦争を生き延びることができる!)
男(生き延びた世界で上手く立ち回れば、天下を取ることだって可能!) 男(高かっただけに立派な核シェルターだ……。中途半端なシェルターじゃきっと俺が死んだ爆発に耐えられないだろう)
男(しかし、マジで金なくなっちゃったからな……)
男「とりあえず、今日のご飯は缶詰だ」
男「……」パクパク
男「……」モグモグ
男(すごい肉やらワインやら、美食を極めたやり直し前の生活が夢だったようなひもじさ……) 仲間を募れなかったプレッパーが
世界が滅亡した後に自己消費だけでは数百年分の備蓄をした小噺を思い出した
地球最後の男ほど救いようがないのがなかなかプレッパーぽくって笑った記憶 男(仕事も……全然うまくいかない)
男(シェルター買った時から一気に落ちぶれた……)
男(もう何回転職してるんだ俺……)
男(さて、今日も面接に行かなきゃ……)
男「失礼いたします」
面接官「お祈り申し上げます」
男「いくらなんでも早いよ!」 貯めた金でシェルター付きの家建てなかったのがこいつの不覚 シェルターあったところで光ってからじゃ避難できなくないか? 男「君のこと……好きなんだ!」
女「……」
男「結婚しよう!」
女「悪いけど私、将来性のない男に興味ないの」
男「将来性ならあるさ! 核シェルター持ってる話は知ってるだろ!」
女「核シェルターがなんだってのよ! 核戦争なんて起きる訳ないのに、んなもん買ってバッカじゃない!?」
男「いや、本当に起こるんだって……」
女「……」スタスタ
男(くそっ、金がないと女も寄ってこない!) 男(なんとか仕事にありつけたけど……)
男「いい年してバイトとは……」
男(しかも――)
若者A「おっさん、使えねえな!」
若者B「なんでいつも同じミス繰り返すんだよ!」
男(完全に足手まといになってる……)
男(しかし、核戦争さえ起これば俺が勝ち組になれる……。もうすぐ起こるはずだ……) 十年……
二十年……
三十年……
……
……
男(なんでだ……やり直す前は起きたのに……)
男(全然起こらねえぞ核戦争!) 長年努力して大金持ちになったんだから同じ努力をすればよかっただけなのでは 男(体が動かない……ついに俺も……)
商人「お久しぶりです」
男「! お、お前は……!」
商人「年老いて死の床についている、といった状態ですね」
男「そっちはあの時のままだな……すぐに分かった」
男「シェルター買ってからは転落人生……。結局、核戦争も起きなかった」
男「これはどういうことなんだ? 俺が味わった一度目の死は、全部あんたの見せた幻覚だったとか?」
商人「いいえ、そうではありません」 商人「実は、あなたがシェルターを買う、買わないの選択こそが“分岐点”だったのです」
男「分岐点……? なんの?」
商人「あなたがシェルターを買えば核戦争は起きず、あなたがシェルターを買わないと核戦争は起こるという分岐点です」
男「なんだって……?」
商人「もちろん、せいぜい個人の一富豪程度に過ぎなかったあなたの選択が直接世界情勢に影響を及ぼすことはない」
商人「しかし、色々な回り道をして、必ず核戦争が起きる起きない、いずれかの結果を導いてしまうのです」
商人「私ですらどうにもできない、運命というやつなのです」
男「いわゆるバタフライエフェクトとか、風が吹けば……ってやつか」 商人「さて、ここでもう一度だけあなたは“やり直す”ことができます」
男「!」
商人「これは運命の分岐点になってしまったあなたへの特権だとか慈悲だとか思って下さい」
商人「もちろん、やり直したところで、例えば未来を知るあなたが核戦争を防ぐだとかそういうことは不可能ですが……」
商人「少なくとも、今までの二度の人生よりは充実した人生を送ることができるはず」
商人「人生を……やり直しますか?」
男「……」 男「やめておくよ」
商人「え……?」
男「細かい理屈は分からんが、今の俺はシェルターを買ったおかげで核戦争を防いだわけだ」
商人「そうなりますね」
男「だったら……このままでいい」
男「俺は世界を救ったんだ……。誰もが羨む素晴らしい人生を歩めたんだから……やり直す理由なんかないさ」
― 終 ― 1度大富豪になった男が落ちぶれるってのが無理あるがまあ… 核戦争を生き延びても札束なんてケツを拭く紙にもなりゃしないってのによー >>41
ロシアの地下鉄に潜伏するんだ
戦前に製造された弾薬はそのまま通貨として使えるぞ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています