犯人「この俺を陥れやがった汚職警官が名乗り出てきたら人質を解放してやる!」警察「な……何だと!?」
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リポーター「神奈川東警察署に拳銃を持った覆面の犯人が立てこもり1時間が経過しました!ここからは番組の内容を変更して現場から緊急生放送を……!」
新聞記者「おい!犯人と人質が建物から出てきたぞ!」
ワーワー…パシャパシャ…
犯人「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!ようやく集まったなマスコミ共め!」
犯人「いいかよく聞けお前ら!この警察署は俺が乗っ取った!少しでも妙な動きを見せたらこいつの頭ぶち抜くからな!」カチャッ
署長「ひぃっ……!だ、誰か助けてくれぇ!」
男「署長!!」
先輩「クソ!署長が人質となると無闇に手出しはできねえぞ……!」
同僚「くっ……この署に赴任して以来こんな事件ばっかりだぜ……!」
新人「あわわわ…いったいどうしたら……!」
課長「全員落ち着け。まずは犯人の目的を知る必要がある」
男「そ、そうですね」
課長「きっと大きな要求を出してくるに違いない……何を言われても署長の命が最優先だ。それだけは忘れるな」 先輩「凄いな課長、どんなときでも冷静に対処して……」
新人「さすが僕達のリーダーですね」
課長「犯人に告ぐ!今ならまだ罪は軽い!武器を下ろし、署長を解放するんだ!」
犯人「うるせえ!!目的を果たすまで投降なんて絶対しないからな!!」
同僚「なかなか手強い野郎だ……これは一筋縄では行かないぞ」
課長「犯人!!お前の要求は何だ!答えろ!!」
犯人「要求だと!?俺の望みはひとつだけだ!ここの警察署に勤めてる奴に用件があるんだよ!」
課長「何?用件……?」
犯人「この署内の刑事課内にとんでもない汚職事件に手を染めたクソッタレが潜んでいるはずだ!!そいつが犯した過去の過ちをここで白状したら人質を解放してやる!!!」
全員「「「!?」」」
男「刑事課って俺らのことじゃねえか……!」
同僚「このメンバーの中に大悪事を犯した奴がいるってことか……?嘘だろ……!」 リポーター「新たな続報です。犯人の要求は署内の職員に対する不祥事の自認と思われ……」
地域課1「何々?刑事課にまた不祥事を起こした奴がいるのか?」
地域課2「うわぁマジか〜。6年前の件といい、今度は何やらかしたんだよ〜」
ザワザワ……ヒソヒソ……
課長「いったい誰なんだ不祥事を起こした奴と言うのは……!お前か?」
先輩「違いますよ!!何で俺なんすか!?」
同僚「先輩たしかギャンブル好きでしたもんね……遊ぶ金欲しさに魔が差したんじゃないですか?」
先輩「んだとテメェ!!この俺がいったい何したって言うんだよ!!」ガシッ
新人「やめてくださいって!ここで争うのはまずいですよ!」
カメラマン「……」ジー
先輩「っ……!」
男「俺ら全国に放送されてるんですよ!ここは良いように立ち振るいましょう……!ね?」 男「だいたい俺達は今まで一緒に頑張ってきた仲じゃないですか!不祥事なんてありえませんよ!」
課長「そ、そうだ!どんな困難が立ちはだかろうとも、私達は共に乗り越えてきたじゃないか!」チラッ
先輩「ここにいる仲間のことは俺がよく知っている……!悪事に手を染める奴なんかひとりもいないってこともな!」チラッ
同僚「きっと犯人は何か勘違いしてるんだ!奴が探している人物はこの署内には存在しない!存在するはずがないんだ!!」チラッ
新人「僕達警察官の役目は国民を守ること!!誰かを傷付けるようなことなんて絶対に許しません!!」チラッ
カメラマン(いちいちカメラ見てくるんじゃねえよ……!)
犯人「へっ!透け透けなお芝居だぜ!!お前らの中にオオカミが1匹混じってることは明白なんだよ!!」
犯人「チッ……!意地でも出てこないつもりならこっちにも考えがある」
課長「何だと?」
犯人「よく聞け貴様ら!!今から10秒数えてやる!それまでに汚職野郎が名乗り出てこなかったら本気で人質を撃ち殺す!!」 全員「「「!?」」」
署長「へ!?え!!?」
犯人「10!9!8!」
男「ちょっとヤバいですって!カウントダウン始まりましたよ!!」
先輩「おいマジで誰なんだよ!!早く前に出て土下座してこいって!!」
同僚「このままだと署長が!!」
新人「あわわわわ……!」
犯人「本当に出てこない気か!?やっぱ日本の警察官ってのはどこまでも腐ってんだなぁ!!7!6!」
課長「っ……………」プルプル
男「課長?」
犯人「5!4!3!」
課長「まっ……待ってくれ!!!」バッ 全員「「「!」」」
課長「……全て話そう。私が犯した……過去の過ちを」
犯人「なるほど。テメェが……そうなんだな」
先輩「課長……!?嘘ですよね!?」
課長「嘘ではない。私は昔……決して許されざる行為に走ったことがあるんだ」
犯人「……続けろ。カメラの前であの事件の真相を話すんだ」
課長「ああ……………これは私が課長になる前の話だ。私は近辺で発生した強盗殺人の容疑者を追っていたんだ」
犯人「ん?殺人?え?」
課長「当時は昇格のチャンスが掛かっていてな……私は血眼になって殺人犯を捜したよ。そしてついに容疑者と思われる人物を捕まえることができたんだ」
課長「犯行当時に目撃された服装や顔から、私は間違いなくそいつが殺人犯だと睨んだ」
課長「しかし……そいつはすぐにシロだったことが判明したんだ」
同僚「誤認逮捕した、ということですか……?」
男「じゃあ、犯人はそのことに対する逆恨みでこんなことを?」 男「ミスなんて誰にでもあることじゃないですか!たしかに冤罪なんて許されることではありませんけど……ここまでするなんていくらなんでも横暴ですよ!!」
犯人「え?え?」
課長「違うんだ!最後まで話を聞いてくれ!」
男「え、まだ続きが……?」
課長「ずさんな捜査のせいで手違いが発生したことは間違いない。しかし誤認逮捕が判明すれば現状はおろか降格処分までされかねない状況だったんだ……」
課長「……そこで私は凶行に及んだ。ありもしない証拠を捏造し、取調べの記録を書き加え、無実の容疑者を殺人犯に仕立て上げたんだ」
新人「か、課長……!?」
課長「私には家族がいる!地位が下がるのはどうしても避けたかったんだ!精神的にも追い詰められていて……もうどうしようもなかったんだ!!」
男「そんな……」
課長「……今まで罪を隠しながらお前らにリーダーヅラしていたことを謝るよ……悪かった」
課長「あと、テレビの前の皆さん。国民を裏切るような形になってしまい、大変申し訳ありませんでした」
課長「そして田中さん……!あなたの人生を狂わせてしまったこと、本当にすみませんでした……!!許してください!!!!!」ガバッ 犯人「……」
課長「……」
犯人「田中じゃないけど俺」
課長「えっ」
課長「あ、そうか、田中さんはまだ服役中……ということは仲間か御親族の方で……」
犯人「いや俺の知り合いに田中なんていねえから」
課長「え、じゃあ何……え?何?は?何なの?」
犯人「何が??」
課長「何……じゃなくて…あの……えーと……」オドオド
先輩「課長」
課長「!」ビクッ
同僚「今の話本当ですか?」
課長「いやぁまっさか……はは…いやあの、冗談だからな?そんなことある訳ないだろ。ほら…あの違うんですよ国民の皆さんわかってますよね?あっはっは、ねえカメラ止めて。止めてください。おい止めろ」ガシッ
カメラマン「ちょっ……やめっ……!」ググ…
リポーター「もう全国に放送したので撤回するの無理ですよ」 新聞記者「刑事課長が誤認逮捕……証拠捏造……取り調べの記録も……」カキカキ
課長「あ…ああ……やっちまった……私の公務員人生もう終わりだ……」ガクッ
同僚「課長、そんなことして平然と俺らを率いてたんですか」
男「ちょっと軽蔑します」
課長「待てよ!!おかしいじゃん!!犯人が汚職野郎を捜してるって言ったから名乗り出たんだぞ!!カメラの前で土下座までしたのに!!」
犯人「は!?自分が勘違いして名乗り出たんだろ!!俺のせいじゃないだろこれ!!」
男「犯人の言う通りでは」
課長「なあ待ってくれよ違うんだよ……あれは家族を守るためというか……家族がいたからやったというか……家族のせいでというか……」
新人「今度は家族に責任押し付けてますよ」
先輩「最低だなテメェ。地位に目が眩んで職務を怠慢するとかどうかしてるぜ」
課長「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」 犯人「おい!俺の話は終わってないぞ!まだ俺の探し求めている汚職野郎は見つかってねえ!!」
課長「そうだそうだ!!早く出てこい!!頭を垂れてアスファルト舐めやがれ!!!」
先輩「なに犯人側に寝返ってんだテメェ!!さっきまでの弱腰はどこいったんだ!!」
課長「俺がこうなったのも全部奴のせいだ……!!謝ったって絶対許さないからな!!」
犯人「許すか許さないかは俺が決めることだが」
同僚「クビになるの確定で開き直ってやがるぜ課長の野郎……」
男「なあ犯人、お前が捜してるのはいったい誰なんだ!そいつが何したのか教えてくれよ!」
犯人「断る!奴が俺をどのようにして苦しめたのか張本人の口から直接言わせたいんだ!このカメラの前でな!!」
署長「この署内に悪行を働く者なんて1人を除いて誰もいないぞ!こんなくだらないこともうやめにしないか……!」
犯人「るっせえ!!撃たれたいのか!!」カチャッ
署長「ひぃっ!すすっすみませっ……!!」
犯人「銃口を突き付けられた人質を前にして未だに名乗り出ないたぁよっぽどのクズだぜ!!また10秒数える必要がありそうだなぁ!!」 犯人「わかってるな汚職野郎めが!!ゼロまでに出てこなかったら署長の頭ボーンだぜ!」
犯人「10!9!8!」
男「またカウントダウンが始まったぞ!」
同僚「どうすんだよ!!俺らマジで悪いことした記憶なんてないぞ!?」
新人「自覚がないだけという可能性もあるのでは……!?3人とも本当に心当たりないんですか!?よく思い出してくださいよ!!」
同僚「ないよ!!俺達ずっと健全に過ごしてきた仲だぞ!?課長はまあアレだったけど……」
男「そうだよ!非人道的な行いなんて一度も……!」
犯人「まだ出てこねえのか!!早くしないとお前のせいで死人が出るぞ!!5!4!」
先輩「っ……………」ガタガタ
男「先輩?」
犯人「3!2!」グッ
署長「あっああっあっやめっ……!」ビクビク
先輩「待ってくれ!!!」バッ 全員「「「!」」」
先輩「……もう騙し通すのは無理だな。全部白状するしかないか」
同僚「先輩?え……?嘘ですよね?」
犯人「ふん、ようやく名乗り出やがっ……
課長「テメェかコラァァァ!!!私は残り3秒で名乗り出たというのにお前2秒で名乗り出やがったな!!?お前がもっと早く名乗り出てさえいれば私まで巻き込まれずに済んだはずだ!お前が先に名乗り出てさえいれば私はあああああ!!」
犯人「うるっせえ!!!主犯の俺より目立つんじゃねえ!!」カチャッ
課長「あっス…スンマソ……」
先輩「何すかぁ?課長が早とちりするのが悪いんじゃないですかぁ」ニヤニヤ
男「先輩の雰囲気が変わった……?」
新人「い、いつもの先輩じゃない……!」
犯人「……お前なんだな。今度こそ本当に」
先輩「ああ。お前が捜しているのは他の誰でもない。この俺だろう」
先輩「自白するよ。例の家屋火災事件を携わった担当職員……それは俺のことだ」 犯人「は?家屋火災……?」
先輩「5年前の話だ。俺はとある人物を失火の容疑で捜査していた」
先輩「空き地で火遊びをしていた若者が隣接する住宅に引火させてしまうという事件が発生してな。その家は全焼し、そこに住んでいた母親と2人の子供、合わせて3人が死亡した」
先輩「火をつけたその若者は消防に通報することなくそのまま逃げちまってな。だが現場には目撃者がいなくて、失火犯は依然として逃走したまま。未だに逮捕まで至ってないんだ」
先輩「あれから5年。捜査は打ち切られ、時効も残り僅かとなった。その家族の父親からは容疑者の捜索をずっと懇願されていたが、俺にはどうすることもできなかった……」
同僚「そんなことが……」
課長「つまり犯人は火災で死亡した被害者家族の父親で、失火犯を捕まえることができなかった先輩を恨んでこんなことを?」
男「不祥事でも何でもないじゃないか……!!先輩だって人間だぞ!全ての事件を解決できるほど完璧な警察なんている訳ないだろう!!」
犯人「ちょ、ちょっと待って」
男「先輩だって必死になって失火犯を捜し回ったはずです!逃がしたくて逃がした訳ないじゃないですか!あなたのために一生懸命……!なのに……!!」
先輩「逃がしたさ。逃がしたくて」
男「……え?」 先輩「実はな、失火犯はもう見つかっているんだ。ただ捕まってないだけで」
新人「それは、どういう……?」
先輩「失火犯の正体はな……有名な政治家の息子さんだったんだよ」
同僚「政治家……?」
先輩「事があらわになれば問題になることは考えなくてもわかるだろ?そこでだ。俺はそいつの家族に立ち会って取引を持ち込んだのだ」
課長「ま、まさかお前……!」
先輩「息子さんを無罪放免とし、事件をなかったことにしてやる。その代わり相応の謝礼金を用意しろってな」
新人「収賄を受けたということですね……」
男「……いくら貰ったんですか?」
先輩「8500万」
同僚「8500万!?」
先輩「凄ぇだろ?粘りに粘って最大限まで引き上げた額だ。やっぱ上場の政治家ってのはこういうときのために貯めてっからよぉ」 先輩「夢のようだったよ。犯罪を見て見ぬふりするだけで一生分を賄えるほどの大金が手に入ったんだからさ。はは」
先輩「冷静に考えてもみろよ、こんな美味い話に乗らない奴の方がバカだろ?こんなストレスの多い仕事で人生を終えるくらいなら倫理を冒して金一封受け取った方が賢い判断だろ。結果的に5年もの間バレずにやってこれたんだしよぉ」
課長「お、お前って奴は……!」
先輩「俺が賄賂を受け取っていたことをどうやって知ったかはわからないが、バレちまったもんはもうしょうがないわな」
先輩「金を貰ってからはもうこんなクソみたいな仕事をする意味もなくなったんだが、事件の直後に退職するのも不自然かと思ってしばらくの間はいつも通りに働いてたんだ。時期を見てそろそろ辞めようとは思ってたんだけどよ」
男「これが先輩の本当の顔だったんですね……」
先輩「爽快だったよ。周りの奴らは乏しい給料で生き永らえるために必死でノルマ争奪してるんだからさぁ!」
同僚「先輩……見損ないましたよ……!」
先輩「おうおう何とでも言え!!どうせ俺は直にクビだ!国から重い処罰を受け、日本中からも目の敵にされるだろう!」
先輩「しかし!8500万という金を持っている俺にダメージなど無効!俺は密かな場所に隠してあるあの大金を使って一生働かずに暮らしていくんだからな!!」
犯人「……」
先輩「やい佐藤!!お前は今どんな気分だ!?妻と子供を殺した奴を逃した張本人を目の前にして今どんな気持ちだ!!?聞かせてくれよ!!!フハハハハハハ!!!!!」 犯人「……俺佐藤じゃないぞ」
先輩「え……」
犯人「火災……?賄賂……?さっきから何の話をしてんだ?」
先輩「お、お前は佐藤家の主人だろ……?そうだろ……?」
犯人「産まれてこの方独身だぞ俺」
先輩「……え、なん……は?」
同僚「先輩、今の話について詳しくお聞きしたいのですが」
先輩「………な、なーんちゃって〜!はは……いやいや……嘘ですからね?これはあの…あれですよ。あの……犯人の気を逸らすための作り話というか…佐藤ってのは架空の人物で……」
リポーター「無理がありますよ」
先輩「いや違っ……ほんと違くって……ねえ一旦カメラ止めてくれない?ねえ、ちょっと、ねえって」
カメラマン「うわぁネットすごい荒れてますよ……見ます?」ヒソヒソ
リポーター「勤務中にスマホ触ってんじゃないわよ……うわボロクソじゃんヤバ」ヒソヒソ
先輩「見せろそれ!!!」バッ
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