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(’-’*川ヨクナイコトガアルトキハアロマヲシマス🍹コレカラ🛀デス✨ショウセツカイテミタオ🐰マタ♪
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0001jc!ダオ
垢版 |
2022/01/04(火) 22:32:23.829ID:F6SEack80
王の間へのつづら折りの暗くって陰湿なでも行き届いて清潔な匂いのする廊下の最後の通りの途中にその小さな扉はありました。幾ら叩いてもただ返事はそこにありません。ふと何気なく取っ手をつかむともし神さまがそばにいらしてもその御目もくらませるような当然さというような、悲しい運命の滑稽な流れというようなちょっとした不思議な力に導かれるかのように吸い込まれる妙な容易さでその扉は軽々と、今ひとりの旅人を静かに部屋へ迎え入れました。
「ナウシ●?」
旅人は少女の靴がそこにないことにまず気付きました。何かの理由で部屋から出ているのか、そうでなければこの時間にどのようなもの好きなことなのでしょう。靴と同じく部屋には乱れた様子もなく、またいつも少女が城内で着るような部屋着のような上着も見当たりません。今はただ、足元で祈るような同じこの部屋の主人を探すキツネリステトのかわいらしくももしゃもしゃと何か溺れてもがくような苦しさで求める小さく意味ありげに鋭い動物の鳴き声でした。テトは壁の一部を引っ掻き続けます。
「テト、お前の主はどこにいるのだ?」
薄暗い部屋に見当もなく、ただ不思議に思って壁を押してみた旅人は何とも言えない、ただ耐えがたく悩ましい気持ちでそこに現れた隠し扉と裏通路を見つけます。驚くべきことでした。勝手知ったテトはきちんとそこに現れた薄暗くだらしなくも奇妙に清潔なひどく折れ曲がった階段を飛び掛かるような駆け足で一段一段降りていきました。旅人は扉を一応閉じて、そこをゆっくり通りました。
再び現れたつづら折りの階段は想像以上に長く、それはこの城の全ての階をそっと静かに貫いているかに見えました。降りてみると妙な予感の通り、そこはしだいに明るく非常にやさしい人のぬくもりのような温かさで不思議と澄んだ植物のにおいが人をいざなうように漂っていました。聞こえるのはただ井戸から通じる水路からの微かな水音。自らの足音の他には何も耳に入りません。
打ち捨てられた戦闘艇の汚れた部品らしきと古くくたびれた甲冑。そして数々の武器に埋もれるようにしてその扉は闇に光を落としていました。その扉はこのお城よりももっともっと先からその場所にあって、はるか前から旅人を待っていたかのよう。そして今光の中に吸い込まれるテト。
「ぉおお…!」
旅人は驚きます。それは単に、不思議な地下の森に泣く少女であり、実にいやな命の不穏な輝きの中にとらわれているか弱い命であり、疲れ果てて衰えて、運命を憎んで父親を懐かしがるあまり母を忘れたような気の毒な一人の子供の本当の姿でした。
まるで地獄でした。これを、どうすればいいのか果てしない思考が旅人に巡ってまた何一つとして糸口を示しませんでした。こんな地獄がこの世にあろうとは。それぞれの思考がにらみ合ってそれぞれの思考が裁判官のように憎しみあって睨みあっているかのよう。
「ああ…」
「ナウシ●! これはどういうことだ?! 」
旅人は改めてたった一つの燭台に輝きあふれる夢うつつのようなその部屋を見まわし低い声で問い詰めます。驚きや不安をとうに通り越した不思議で凍った妙に温かい表情でした。何とも言えないせめぎあいの間からいかにも何かを今求めるような、そんな眼でした。
「こ、これは…、腐海の植物ではないか?!」
少女はふと顔を向けます。そっけないような全てを知る勇気の果てのような、はじまりから全ての世界の秘密を握って人を監視しながら一晩中隠れている天使のような、あるいは自分の罪を償うすべての覚悟を固めてしまった狂気の母のような、そんな素振りでした。
「私が胞子からここで育てました。大丈夫、瘴気は出していません」
0002jc!ダオ
垢版 |
2022/01/04(火) 22:32:43.050ID:F6SEack80
旅人は驚きました。気でも変になってしまったかのような少女を気遣うような、恐ろしくなったような、痛々しいその心が力なくその血の気のなくした透き通って少女らしい顔からいくらかためらいがちにゆっくりとようやく目をそらさせました。そのまま旅人は出来るだけ静かに、つぶさにそっと部屋を見回り始めます。旅人は改めて息を呑みます。部屋には危険とされる腐海の植物に満ち満ちていたのです。
「毒を出さない? 確かにこの部屋の空気は清浄だが…」
潤沢な水の中で天地のひっくり返るような美しさですっかりと軽々しく呑気にその身を力一杯に咲かしている花を見てふっと我を忘れ立ち止まります。
「なぜだ!? 猛毒のヒソクサリがこんなに花をつけているというのに…?!」
忘れ物をどうしても思い出せないような、あるいは知らず知らず記憶を意識の底に埋めているまさにその作業の瞬間のような眉根で、少女は複雑な罪の縛る夢幻の亡霊のさまようように振り向き応えます。
「ここの水は、城の大風車で地下500メルテから上げている水です。砂は、同じ井戸の底から集めました」
罪の告白を祝うように、狂った善人の呪われた悪党のように、震える唇を歪ませそこにありはしない劇場を遠くに眺めるようなうろたえ方で、おろおろとした表情の内にも透き通った少女の声で色の白い美しい横顔が能弁に何かを訴えます。
「きれいな水と土とでは、腐海の植物も毒を出さないと分かったのです。穢れているのは土なんです。この谷の土ですら、穢れているのです。なぜ…、だれが、世界をこんな風にしてしまったのでしょう…」
旅人の目はなにか言い知れない致命的な過ちを突き付けられたほどに衝撃を発しました。
「そなた、それを自分自身で…?!」
震える男の言葉をいたわるようななぐさめるような、わらうような悲しみに包まれたその優しい哀れな少女が続けました。
「ええ…、父や皆の病気を治したくって…。でも…、もうここも閉めます。さっき水を止めたので、やがてみんな枯れるでしょう…」
少女の涙が見事に彼女の無念を伝えました。そして彼女の仄かな淡く幼い恋心とともに。
旅人の胸に顔をうずめる少女。小さな鳴き声は次に大きな涙を、その後には直ぐにまた小さな震えと温かい吐息を、旅人はすべて今は一人震える少女のやわらかい肩を抱きながらただ静かに固くそれを受け止めて______

何らかんらで谷はそのあと何らかんら救われます。予言者のおばあさんもいます。脇を固める子供もいます。
「姫様、青い異国の服を着ているの」
「その者青き衣をまといて金色の野に降り立たん。おお、言い伝えは本当であった」
青い服の少女は微笑みながらなおも金の光の上を歩きます。生まれたばかりの天使のように。

おわり
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