斧戦士「え、斧を使って剣に勝て!? できらぁっ!」
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斧戦士「できらぁっ!」
剣士「今なんていった?」
父「よせ!」
斧戦士「いいんだよ、父ちゃん!」
斧戦士「斧を使って剣に勝ってやるっていったんだよ!」 剣士「こりゃあ面白い小僧だぜ」
父「いや、こいつは斧のことになるとすぐムキになるんだよ」
父「すまん、こいつに代わって謝る!」
剣士「そうはいかないぜ、伝説の斧の達人さん」
剣士「大勢のお客さんの前でケチをつけられたんだ」
剣士「こりゃあどうしても、斧を使って剣に勝ってもらおう!」
斧戦士「え、斧を使って剣に勝て!?」
剣士「そうだ、この小僧と俺で剣と斧のデスマッチだ!」
剣士「いいな小僧! 勝負は三日後! 場所は近くのコロシアムだ!」
斧戦士「受けて立ってやらぁっ!」 ― 斧戦士の家 ―
斧戦士「うーん……」
父「まったく……熱くなってあんな勝負を受けちまいやがって」
父「勝算はあるのか?」
斧戦士「ねえっ!」
父「そんなことだろうと思ってたがな」 斧戦士「父ちゃんだったらどうやって戦う?」
父「そりゃもちろん、ワシ専用の2トンの巨大斧で一瞬でミンチよ」
父「あの斧で、一週間前も王様の依頼で敵兵一万を全滅させてきたしな」
父「だが、ワシがやったら意味ねえだろう?」
斧戦士「ねえっ!」
斧戦士「この勝負は俺が受けたんだから、俺が自分の力で勝つんだぁっ!」 父「ま……だったらワシは一切手も口も出さねえ」
父「自分の力でやってみせろ」
斧戦士「できらぁっ!」
父「だが……オヤジとして一つだけアドバイスだ」
斧戦士「アドバイスぁっ!?」
父「勝負までは三日しかねえ。三日間であまり大それたことをやろうとしてもそりゃ無理ってもんだ」
父「斧という武器と向き合い、斧なら何ができるのかよく考えるこった」
斧戦士「斧と……向き合う……」 斧戦士「斧と向き合う……」ジーッ
斧戦士「斧と向き合う……」ジーッ
斧戦士「斧と向き合う……」ジーッ
……
……
斧戦士「一時間ぐらいずっと斧と向き合ってみたけど……」
斧戦士「わかんねえーっ!」ポイッ グサッ!
斧戦士「ゲ、斧が床に刺さっちまった! あとで父ちゃんに叱られる!」
斧戦士「!」ハッ
斧戦士(斧最大の武器といえば、この切れ味……!)
斧戦士「これだぁーっ!!!」 とりあえず泉に落として金と銀の斧手に入れて資金調達だな 斧戦士「こうやって研ぎ石で研ぎまくれば……」シャーコシャーコ
斧戦士「さらに切れ味がパワーアップして……!」シャーコシャーコ
斧戦士「最強の斧が……!」シャーコシャーコ
斧戦士「あーっ! 研ぎすぎてボロボロだぁーっ!」ボロッ…
斧戦士「これじゃダメだぁーっ!」
斧戦士「へっ、だけど俺はこれぐらいじゃへこたれねえぞ! 次は剣の研究だぁーっ!」 ― 女剣士の家 ―
女剣士「あら、どうしたの? あんたが訪ねてくるなんて珍しいじゃない」
斧戦士「三日後に剣士と戦うことになったぁっ!」
女剣士「あの人と? あの人、かなりのベテランだけど……勝てるの?」
斧戦士「できらぁっ!」
斧戦士「今、俺は斧と剣の研究をしてる! お前の剣を見せてくれ!」
女剣士「なるほど、そういうことね。分かったわ……訓練場に来てちょうだい」 女剣士「本当は人に技なんか見せたくないけど、あんただから特別よ」
女剣士「はっ! せやっ! てやっ!」ヒュッ ヒュオッ ビュオッ
斧戦士「はええーっ!」
女剣士「でしょ?」フフッ
女剣士「剣の強みは色々あるけど、一番はやっぱりこの速さよね」
斧戦士「速さぁっ!」 女剣士「近頃は剣の精製技術が飛躍的に進歩して、薄さと丈夫さを備えた剣がどんどん量産されてるの」
女剣士「つまり、あたしみたいなかよわい女の子でも手軽に扱えるってわけ」
斧戦士「え!? お前がかよわい女の子!?」
女剣士「……今なんかいった?」ジロッ
斧戦士「いってません」
斧戦士(速さか……よーしっ!) ― 斧戦士の家 ―
斧戦士「武器を軽くすれば、当然スピードを出せるようにならぁっ!」
斧戦士「斧を徹底的に軽量化するんだ!」
斧戦士「あちこちに穴を開けて、徹底的に“肉抜き”だぁーっ!」グリグリ
斧戦士「穴を開けまくった斧なら、軽々扱えるから、ものすごいスピードでブン回すことができて」
斧戦士「剣士に勝てらぁっ!」
斧戦士「できたぁっ! これがスーパーきこりん坊のスピードアックスだ!」ジャキーン 斧戦士「よーし、軽量化された斧を振り回してみるか……」
斧戦士「おりゃ! おりゃ!」ブンッ ブンッ
斧戦士「へへっ、軽い軽い――」
ボキッ!
斧戦士「折れたぁっ!?」
斧戦士「しまった……! 穴を開けすぎて、強度が脆くなっちまったんだ……!」
斧戦士「これも失敗かぁ……」 次の日――
― 槍使いの家 ―
槍使い「おお、斧戦士じゃんか。どうした?」
斧戦士「剣士と勝負することになったぁっ!」
槍使い「剣士と? いくらオヤジさんの血を引くとはいえ、今のお前が勝てるか?」
斧戦士「できらぁっ!」
斧戦士「だけど、あれこれ試してんだけど、なかなかうまくいかねえんだ!」
斧戦士「だから……ここはいっそ斧でも剣でもない槍を見れば、なんかつかめるんじゃと思ってよ!」
槍使い「相変わらずぶっ飛んだ発想してやがんな、お前は」 槍使い「オレの槍さばき、よぉーく見とけよ!」
斧戦士「見てらぁっ!」
槍使い「だっ! だぁっ!」ブオッ ブオッ
斧戦士「なげえーっ!」
槍使い「その通り! このリーチの長さこそが槍の最大の強みだ!」
槍使い「相手が剣でも斧でも、間合いの外から一方的に刺突を加えることができる!」
斧戦士「へえ〜、できるんだ」 槍使い「試しに……ほれ、オレにかかってこいよ」
斧戦士「かかっていくぁっ!」ダッ
槍使い「ほれっ」シュッ
斧戦士「うわっ」
槍使い「ほらっ」シュッ
斧戦士「わわっ!」
槍使い「ほれ、ほれっ」シュッ シュッ
斧戦士「近づけねえぁっ!」 槍使い「な? 槍ってのも結構スゴイだろ?」
斧戦士「ハァ、ハァ、ハァ……すげえ……」
槍使い「どうだ? 参考になったか?」
斧戦士「なったぁっ!」
槍使い「試合、頑張れよ」
斧戦士「頑張らぁっ!」 ― 斧戦士の家 ―
斧戦士「いやー、槍のリーチってのはすげえな! 勉強になった!」
斧戦士「つまり斧のリーチを伸ばせば、俺も相手に攻撃させず攻撃し続けることができらぁっ!」
斧戦士「斧に物干し竿をくっつけて……と」ペタペタ…
斧戦士「できたぁーっ!」
斧戦士「スーパーきこりん坊のロングアックスの完成だぁーっ!」 > 斧戦士「アドバイスぁっ!?」
ここがピークだった 斧戦士「さっそく振り回すぁっ!」
斧戦士「どりゃ!」ブンッ
斧戦士「だりゃ!」ブオンッ
斧戦士「おりゃ!」ブオッ
ボキッ!
斧戦士「物干し竿が折れちまった……!」
斧戦士「これも失敗かぁ……」 次の日――
― 斧戦士の家 ―
斧戦士「明日はいよいよ試合だぁっ!」
斧戦士「だけど、切れ味作戦も、軽量化作戦も、リーチ作戦も全部失敗だぁっ!」
斧戦士「このままじゃ、俺は剣士に勝てねえーっ!」
斧戦士「どうすれば、俺は剣に勝てるんだ……!」
斧戦士「どうすれば……!」 女剣士「ちょっとちょっと、一人で悩んでるんじゃないわよ!」ザッ
槍使い「オレたちがいるだろ?」ザッ
斧戦士「お前たち!?」 女剣士「そんなに落ち込むなんて、あんたらしくないじゃない」
女剣士「ウジウジ悩んでたって、いいアイディアは浮かばないわよ!」
槍使い「そうそう、悩んでる時は体を動かせ! これが戦士の鉄則だ!」
槍使い「一緒に訓練してれば、なにか閃くかもしれないぜ!」
斧戦士「お前たち……ありがとう!」
槍使い「なぁに、オレたちだってお前の戦いから色々盗もうと考えてんだよ」
槍使い「持ちつ持たれつってやつさ。さ、やろうぜ!」 斧戦士「でやっ!」ブオッ
女剣士「はっ!」キンッ
斧戦士「どりゃあ!」ギュオッ
槍使い「甘いぜ!」シュッ
キィンッ! ガキンッ! キンッ! キィンッ! キンッ!
父「ふっ……いい友達を持ったな」 女剣士「たあっ!」ヒュオッ
斧戦士(スピードに対抗するには……パワー!)ブオッ
ガキンッ!
女剣士「きゃっ! あたしの剣が弾き飛ばされちゃったわ!」
槍使い「おりゃ!」ヒュッ
斧戦士(リーチに対抗するには……遠心力!)ギュルルッ
ギィンッ!
槍使い「うおおおっ! オレの突きをもはね返すとは! なんて回転だ!」 槍使い「ふうっ、この辺にしとくか」
女剣士「どう? なんか見えてきた?」
斧戦士「おうっ! なんとなくだけど見えてきたぁっ!」
槍使い「そりゃよかった。オレたちも付き合ったかいがあるってもんだ」
斧戦士「二人とも……ありがとな!」
女剣士「あたし、ノド渇いちゃった。三人でカフェでも行かない?」
槍使い「そうだな」
斧戦士「カフェに行くぁーっ!」 ― カフェ ―
店員「ご注文は?」
槍使い「アイスコーヒー」
女剣士「あたし、クリームソーダ」
店員「かしこまりました」
斧戦士「ステーキ!」
店員「できねえよ」 槍使い「いやー……運動した後の冷たいもんは格別だわ」チュー…
女剣士「ホントね〜」チュー…
斧戦士「このステーキ、うんめぇ〜!」モグモグ
斧戦士「――ん」
槍使い「どうした?」チュー…
女剣士「どうしたの?」チュー…
斧戦士「……」
斧戦士「これだぁーっ!!!」
女剣士&槍使い「どれだぁーっ!!?」 試合当日――
― コロシアム ―
剣士「来たか、小僧」
斧戦士「勝負だ!」
剣士「ふん、逃げずにやってきたことだけは褒めてやる」
斧戦士「褒められたぁっ!」
剣士「約束通り、剣と斧によるデスマッチ開始だ!」 父「この三日間、お前がやってきたことを全部ぶつけてやれ!」
女剣士「ファイト!」
槍使い「負けんなよ!」
斧戦士「おーうっ!」
審判「両者、構えて!」
斧戦士「構えぇっ!」ジャキッ
剣士「ほう、いい気迫だ」チャキッ 審判「ファイッ!」
剣士「さぁ、来い!」
斧戦士「行ってやらぁ!」
剣士「一太刀であの世に送ってやる……!」
斧戦士「俺は剣に勝つため、この三日間で新しい斧を作り出した!」
剣士「なにっ!?」
斧戦士「これがスーパーきこりん坊の……スーパーアックスだぁっ!!!」
ジャーンッ!!!
https://i.imgur.com/c3yzmEL.jpg 剣士「なんだ!? あの斧は!?」
剣士「よく見ると、柄にストローみたいに穴が開いてやがるっ!」
斧戦士「これを口にくわえて……」ハモッ
斧戦士「フッ!!!」フヒュッ
チクッ
剣士「うっ!? なんか刺さった!?」
剣士「か、体が……シビれて……」ドサッ やっとわかった、スーパーきこりん坊ってスーパー食いしん坊からきてたのか 槍使い「そうか、オレらがストローでドリンク飲んでるのを見て、斧に吹き矢のような機能をつけたのか!」
女剣士「すごい! あれなら相手がどんなに離れてても攻撃できるわ!」
斧戦士「しかも、飛ばした矢には、ちゃんと毒を塗ってあらぁっ!」
剣士「こりゃあ……面白い小僧だった、ぜ……」ガクッ
斧戦士「できたぁーっ!!!」
父(成長したな……! こりゃワシもうかうかしてられんな……)
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