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2021/12/26(日) 19:29:33.032ID:uV8ymBbk0
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夢は叶えれば実現する。

        ――ヴェルター・ディスティニー著『夢を実現するたった一つの方法』より抜粋


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昔。
気の遠くなるほど昔。
天才と謳われた誰かが言った。

            __, --──−、_
           /::_, -‐─ ‐-、_::::`‐-、
.           /::/        `‐i:::::::ヽ
           |:./           ',ミ::::::}
           }:l             lミ::::::l'
         _!,'_ ,..-- ..、   __ !::::::::|
        lヽ! `i ィェッ、.i'゙"i';;;ィェッ;,`i===,、
         ',.l  ゙、゙゙゙゙゙,ノ  ヽ_"゙゙゙/ r;;;;;;/
          i|    ̄,'  ::::ヽ `''" .,{;;;;;;/
           ',.    ゙`-"゛''   ,};;;;;;'
          !   ,_、,___,  /;;;/"
         _,` 、       /;;r'
   _,, -─ '';;;;;;;;;| 、ヽ,,____,,-‐';;;;;;;;;;;\_
   ;;;;;;;;;;;;;;;;;;『第三次世界大戦は最新の武器と兵器による戦争になるだろう。
   ;;;;;;;;;;;;;;;;;; その時の武器は想像も出来ないが、その次なら断言できる。
   ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 石と棍棒だ』

しかし、それは誤りだった。
確かに、第三次世界大戦は最新の武器と兵器が飛び交う戦争になった。
世界は焼け野原と化し、人類史に大きな傷を残した。
戦術核の炎が生物を焼き払い、舞い上がった粉塵と灰が青空を奪い、太陽の光と熱を地球から遠ざけた。

世界は再生を始めたが、人々の生活の基盤には第三次世界大戦が起きた当時の文明の力があった。
偶然発見された文明の利器が人類の進化を停止させると同時に、その水準にまで進化させた。
手にしたのは石と棍棒ではなく、銃と“棺桶”と呼ばれる強化外骨格。
世界を支配するのは、力という単純なルール。

そして、時が経った九月二十五日。
世界が失ったものを取り戻すための戦争が、幕を開けた――

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Ammo→Re!!のようです
Ammo for Rebalance!!編

第四章【 Ammo for Rebalance part1 -世界を変える銃弾 part1- 】

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2021/12/26(日) 19:30:26.898ID:uV8ymBbk0
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September 25th AM06:04
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‥…━━ ジュスティア ━━…‥
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街に設置されたラジオから放送された内藤財団の発言は、世界の正義を掲げるジュスティアの街の隅々に響き渡っていた。
それは内藤財団傘下の企業が作ったラジオに組み込まれた一声放送装置を利用した強制的な放送で、まだ眠っている人間もいたが、ほぼ例外なく、その発表を聞くことになった。
電源さえ確保されている状況であれば、主電源に関係なく放送をかけることが出来る仕組みを知るのは今日の放送に関わる人間達だけだ。
状況を正確に理解していない人間が多くいる中、放送を聞いていたジュスティア軍の人間は宣戦布告の対象になっていることを理解し、即座に行動に移していた。

後に、ジュスティアの命運を分けることになったのがジュスティア海軍の初動だった。
ジュスティア海軍が所有するレーダーとブイは東の海に正体と所属不明の艦隊がいることを捕捉し、基地中にけたたましいサイレンを響かせた。
そのレーダーとブイはいつの日か、イルトリアが攻めてくることを想定して設置され、数十年間一日も休むことなく稼働していたものだった。
レーダーを担当していた人間も、その場で指揮をする人間も、この事態がイルトリア海軍による侵略行為であるとは考えなかった。

イルトリアであれば、レーダーに捕捉されるというヘマはしない。
イルトリアであれば、捕捉された瞬間に砲撃を始めている。
イルトリアであれば、海だけでなく陸からも攻撃が来ている。
そうしたあらゆる“イルトリアであれば”が、今回はあまりにも欠落していたのである。

連絡は迅速かつ訓練通りに海軍大将、海兵隊大将、陸軍大将、軍の元帥、そして市長へと通達された。
宣戦布告が現実のものとなったと断言するには、あまりにも十分すぎる情報だった。
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2021/12/26(日) 19:31:58.983ID:uV8ymBbk0
(ΞιΞ)「東の海上に所属不明の艦隊を確認。
     数、14。
     進路は西南西」

連絡を受けたフォックス・ジャラン・スリウァヤは連絡を即時修正させた。
攻めてきているのは所属不明の団体ではなく、内藤財団である、と。
それと同時に、フォックスは一般市民の避難誘導を陸軍と警察に命じた。
この間、僅かに2分。

指示を受けた各組織の末端が動き始めるのには1分。
ラジオによる宣戦布告から3分で、ジュスティアは体制を整えることに成功した。

爪'ー`)y‐「避難先は予定通り、地下シェルターを開放しろ。
      避難させる人間はジュスティア内の全員とするが、避難を拒否するのならば構わん、放っておけ。
      警察は火事場泥棒、略奪者の類を射殺することを許可する。
      この期に及んで治安を乱す、避難の邪魔をする輩は老若男女、理由を問わず殺して構わない。

      スリーピースは現時刻をもって閉鎖、あらゆる物流を停止させろ。
      誰も入れるな。
      文句を言う輩は壁の上からでもいい、外に叩きだせ。
      対イルトリア用のマニュアルに従って、迅速に行動しろ。

      発砲、逮捕は各位の判断に委ねる。
      あらゆる責任は私のものとする。
      スリーピースの防御装置を起動。
      艦隊を出撃させ、攻撃がなくても現場の判断で戦闘を開始しろ」

その指令は訓練以上の速度で各部署に伝わり、実行された。
スリーピース前に並んでいた車列は全て物理的に排除され、代わりに、陸軍の戦車が現れてその場を封鎖した。
強引にその場に留まろうとした車輌は容赦なく踏み潰され、蹴散らされた。
戦車の砲塔は海に、そして陸に向けられ、完全武装歩兵を乗せた輸送車が現れて所定の位置に向かう。

海軍が保有する最新鋭の艦隊が襲撃者を迎え撃つために出航し、ジュスティアの早朝は騒々しいものとなった。
汽笛が鳴り響き、海鳥は空と海と大地を行き交う。

『これは訓練ではない。
繰り返す、これは訓練ではない。
内藤財団の艦隊による襲来を確認、各位、完全装備で配置に着くように』

基地を走り回る兵士たちの顔には焦りがあったが、その口元には、笑みを浮かべている者が多かった。
ある意味でこの瞬間は、彼らが待ちわびた時なのだ。
この時に備えて訓練を積み重ね、この時の為に軍に入隊したのだ。
大規模な戦闘において英雄として称えられることこそが、彼らの誉であり憧れなのである。

相手がイルトリアではないこと以外、何一つとして訓練内容に変更はない。
世界最大の企業を相手取るということは、世界のほとんどを敵に回すということ。
奇しくも、その布告を受けたのは彼らが日々仮想敵としていたイルトリアも同じだった。
これまでは互いに睨み合う関係だったが、今だけは、その視線を僅かにずらして互いの背中に向けるしかない。

イルトリアも、この状況ではそうするはずだ。
それはジュスティア軍人ならば誰もが信じて疑わない、絶対的な信頼だった。
野生の世界でも、殺し合っていた獣同士が共通の外敵が現れた時は殺し合いを止めて協力し、絶妙な連携を見せて対処するという。
今は目の前に現れた強大な敵を、全身全霊で迎え撃つことこそが最優先であることを疑う余地はない。

彼らの故郷の平和を脅かす愚劣な輩を、正義の鉄槌によって打破するのである。

爪#'ー`)y‐「ちっ、ノースエストの氷山に隠れていたか、あるいは流氷に偽装していたのか……
      ……なるほど、そういうことか。
      そのための陽動だったのか」
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2021/12/26(日) 19:32:23.774ID:uV8ymBbk0
市長室で情報の整理を行い、統制し、指揮をする市長の顔にはまだ余裕が見て取れるが、その実、腸が煮えくり返る思いだった。
昨夜地図上から姿を消したブーオへの攻撃を経て、いきなりの今日である。
対策を練る間もなく行われた一連の動きは計画的、そして用意周到なものだ。
数年単位ではなく、数十年、それ以上のスパンで考えられたものだとしても驚くことは無い。

少なくとも、内藤財団が街に支援をしていたのはこの時のため。
宣戦布告の対象となる街の周辺を静かに、根を張るように着実に駒を置いてきたのだ。
気付けるはずがない。
ただの企業が行う、ただの商業活動がこの日に結びついていると予測できる要素がない。

開戦時の優位性は当然向こうにあるが、大きな違いがある。
実戦経験の差だ。
充実した装備を整え、素人を戦いのプロへと昇華させる棺桶を持ち出そうとも、結局殺し合うのは人なのだ。
治安維持のため、世界中に派遣された経験のあるジュスティア軍人に棺桶持たせれば、経験のあるこちらが有利。

苦戦はするだろう。
死者も出るだろう。
だが、負けはしない。
ジュスティアにある組織の最高責任者に向け、フォックスは無線越しに檄を飛ばした。

爪'ー`)y‐「糞忙しくなるぞ、諸君。
      相手は世界最大の企業だ。
      我々を差し置いて世界の正義を名乗る不逞の輩だ。
      イルトリア相手でなくて残念だが、最大限の敬意を表して、完膚なきまでに叩き潰してやれ!!」

彼らにとって警戒すべき最大の敵はイルトリアであり、企業人ではないのだ。
この程度を乗り越えられなければ、イルトリアとの戦争に勝てるはずがない。
彼らにとって、この戦争に敗北していい理由など、何一つないのである。
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2021/12/26(日) 19:32:43.066ID:uV8ymBbk0
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同日 AM06:04
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‥…━━ イルトリア ━━…‥
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世界で最も宣戦布告に慣れている街は、イルトリアを置いて他にはない。
小さな町から恨みを買うだけでなく、イルトリアから小さな町に対して宣戦布告をすることもある。
それは彼らが契約によって傭兵を派遣する関係もあるが、それを生業とする街であるが故の宿命でもあった。
内藤財団の宣戦布告の相手に自分たちが含まれていることを理解できない人間は、イルトリアの中には一人としていなかった。
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2021/12/26(日) 19:34:20.336ID:uV8ymBbk0
常に争いに身を投じるために、いつ復讐の対象になってもおかしくないということは、彼らが幼少期の頃に親と学校から教え込まれることだ。
“武人の都”という呼び名は、断じて過大評価による渾名ではない。
それはイルトリア人の心得であり、そこに生きる人間の覚悟の現れでもある。
宣戦布告を受けるのと同時に、イルトリア軍は一気に厳戒態勢へと転じ、陸軍と海軍は索敵を行った。

戦争の始まりは宣戦布告よりも前に始まっている。
布告が終わると同時に攻め込むためには、すでに行動は始まっていなければならないのは常識だ。
内藤財団ほどの大企業が相手であれば、その行動は迅速であり、尚且つ最大級の警戒に値するものだ。
ジュスティアからの宣戦布告に備えていたイルトリア軍にとって、今回は図らずもそれが役に立つことになった。

(●ム●)「……は?」

対ジュスティア海軍の監視用にブーオ近海に設置された、ブイ型のレーダーが反応を示した。
レーダースクリーン上にその影を見つけた時、あまりの巨大さに担当者はレーダーの故障を疑った。
通常の機影の優に10倍、いや、それ以上の影の出現は訓練でも想定したことのないものだった。
だがしかし、担当者はそれを報告した。

例え彼の目には信じられなくても、今の状況ではそれが事実である可能性の方が大きい。
即座に対応することになったのは、同じく遠海にいるイルトリア海軍の高速哨戒艇だった。
船に積んだ高性能な望遠鏡を使い、夜の名残が霧散する空の向こうに浮かぶ異形を捉えた。
渡り鳥のように大きな羽を広げて飛来する2機のそれは、あまりにも現実離れした巨体をしていた。

望遠鏡から目を離さず、軍人は無線機に手を伸ばした。

(,,゚,_ア゚)『……こちらアルバトロス・スリー。
     ネスト、応答せよ』

軍人らしく、落ち着いた声で軍人は報告を行う。
無線機の向こうではレーダーを見ている管制官が同じく落ち着いた声で答える。

『こちらネスト』

(,,゚,_ア゚)『バカでかい航空機が12時の方向から接近中。
     数は2。
     進路はイルトリアで間違いなさそうだ』

『大きさはどの程度だ?』

(,,゚,_ア゚)『目視でしか言えないが、全幅1キロはあるように見える……
     速度はそこまでではないが、とにかく大きい』

『了解した。
他の情報があれば随時報告を』

(,,゚,_ア゚)『了解』

全ての報告は適切に処理され、統合され、現実の侵略行為が目前に迫っていることが確定した。
対処すべく、すでに抜錨までを終えていた海軍の艦隊が出航する。
戦艦、駆逐艦、護衛艦。
イルトリア海軍の所有する全兵力が、空からの災厄に立ち向かうべく動き出した。

最短距離を来るのならば内陸を飛べばいいが、彼らはそうしなかった。
腹を海に向けて飛行するということは、陸上からの砲撃を避けたいという考えがあるためだろう。
更に、どこかの港から随伴の艦隊が出撃して同時に攻撃が行えるという利点もある。
陸上であれば、出撃前にイルトリアによって潰される可能性があると考えてのことだろう。

巨体は目立つ。
目立つ分、そちらに目が行きがちになる。
それが攪乱を兼ねていることを考え、防衛における重要性は陸上の方が大きかった。
海に面している為に、挟撃されることは避けたいのだ。
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2021/12/26(日) 19:34:57.743ID:uV8ymBbk0
そのため、陸軍は海軍よりも動きが早かった。
戦車、装甲車が海岸線と街に通じる道に配置され、提携している街に避難する人間は優先的に誘導された。
街に入る全ての車輌と人間は理由の如何に関わらず拒否され、抵抗する意思を見せた者はその場で足か腕を撃たれた。
一切の慈悲も例外もなく行動し、迎撃の準備が整うまでには5分の時間を要した。

イルトリア市長、フサ・エクスプローラーは執務室の椅子に腰かけ、飛び交う情報に耳を傾けていた。
万年質を紙の上に走らせ、必要と思われる情報だけを整理していく。
各軍への指揮は責任者に一任されており、フサは彼らの決断に全幅の信頼を寄せていた。
彼が行うべき仕事は、別にあった。

ミ,,゚Д゚彡「ブーオを吹っ飛ばしたのは、空路と海路を確保するためか」

フサの言葉は、来客用のソファに腰かける女性に向けられていた。
朝日に照らされる彼女の物憂げな横顔は、ともすれば、その内に激情を秘めているようにも見える。
黒のジーンズと黒のシャツ、そして黒のジャケットが彼女の豪奢な金髪の美しさをより一層引き立てている。
澄んだ蒼穹色の瞳が、静かにフサに向けられた。

ζ(゚、゚*ζ「まぁセフトートは、砲撃性能の確認でしょうね。
      ジュスティアもイルトリアも間違いなく射程圏内ね。
      大丈夫かしら」

デレシアはそう言って、紅茶を一口飲んだ。
自分が砲撃の危険に晒されているとは微塵も感じさせない優雅な動きだった。

ミ,,゚Д゚彡「あいつらも昨夜の一件は知ってるし、対処用の人間は送っているさ。
      うちも一人、手練を送ってる。
      向こうで合流してしばらくの間、砲撃は防ぐさ。
      それで、連中が使っている兵器だが、何か心当たりはあるか?」

ζ(゚、゚*ζ「砲撃に使ったのは“ハート・ロッカー”ね。
      空にいるのはニューソクで動いている、棺桶と同時期ぐらいに出た航空空母ね。
      ニューソクを集めていたのはアレを動かすためで間違いないわね。
      あの兵器に燃料切れ、という概念はないと思っていいわ。

      むしろ、落とし方を間違えるとそれだけで街が吹き飛ぶわよ」

ミ,,゚Д゚彡「空飛ぶ爆弾、って感じか」

ζ(゚、゚*ζ「そうね。 落とすなら、海上で落とさないとだめよ。
      海に落としさえすれば、後は海軍の火力でどうにか出来るわ」

ミ,,゚Д゚彡「分かった。
     連中の拠点は、恐らくハート・ロッカーのある場所だろう。
     ウチの陸軍を送るとしたら、どれだけ急いでも3日はかかる。
     一握りの精鋭なら数時間で送れる」

ζ(゚、゚*ζ「一握りの人数は?」

ミ,,゚Д゚彡「どれだけ頑張っても3人が限界だ。
     とりあえず、連中の拠点を叩き潰さないと話が終わらない。
     制空権を取られる前に、諸々片付けないとな」

その言葉を聞いて、デレシアはすぐに答えた。

ζ(゚、゚*ζ「拠点には私が行くわ。
      でも、拠点を潰したところで連中は止まらないわ。
      これで少しでも連中が優勢だと分かれば、周辺の街が一気に攻めてくるわよ」
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2021/12/26(日) 19:36:27.824ID:uV8ymBbk0
圧倒的な武力があるからこそ、イルトリアやジュスティアに恨みのある町は決して歯向かうことをしなかった。
武力による抑止力。
皮肉なことに、暴力が平穏を保っていると言ってもいい。
その均衡が崩れる時、間違いなく争いが始まる。

グラスに並々と注がれた水が溢れるかどうかは、今後そこに注がれる水の量による。
それを止めなければ、間違いなく、水が溢れ返る。
溢れ出た水が何をもたらすのか、それは考えるまでもない。

ミ,,゚Д゚彡「世界中が敵に回るってことか。
      いやはや、これは楽しくなってきた。
      電撃戦に対抗するには電撃戦しかない。
      ……ちょっと電話をしよう」

フサはそう言って、赤い電話を取り出し、受話器を持ち上げた。
そしてボタンを押し、通話をスピーカーに切り替える。
数回の呼び出し音の後、不機嫌そうな男の声が返ってきた。

『何だ、この忙しい時に』

ミ,,゚Д゚彡「こんな時だからだよ、フォックス。
      ちょっと情報の整理をしておきたくてな。
      こっちの方には二機、バカでかい飛行機が来てる」

爪'ー`)y‐『あぁ、知ってるさ。
      そっちも知っているだろうが、ウチは船が14隻。
      その内一隻はド級の戦艦、正直見たことのない大きさだ。
      航路的に、ノースエスト地方の流氷に紛れてたんだろうな。

      やられたよ、ノーマークだった。
      連中、氷の下で建造していたんだろうな』

ジュスティア市長とイルトリア市長がこうして電話しているとは、当事者たち以外、誰も想像したこともなかっただろう。
世間では犬猿の仲である街同士の最高責任者なのだ。
そして、そんな彼らが独自の直通電話を用意しているなど、夢にも思うまい。

ミ,,゚Д゚彡「ウチはこれから連中の拠点を叩こうと思うんだが、どうだ」

爪'ー`)y‐『そりゃ奇遇だな。
      こっちもそれを考えていた。
      “影法師”にそれを任せている』

“影法師”。
それは、円卓十二騎士の中でも、優れた功績を持つ七人にのみ与えられる“レジェンドセブン”の称号を持つ者の渾名だった。
優れた諜報員であると同時に、暗殺の名手であると言われ、その姿が公に出ることはほとんどない。
残るのは名前だけだが、実態を持つ影として、他の街の諜報員に恐れられている。

本来それは超極秘情報にあたるのだが、彼らの間にそれを気にする様子はない。

ミ,,゚Д゚彡「だろうな。 その前に、ちょっと連中の詳細について知っておいてもらいたいことがあってな」

爪'ー`)y‐『手短に頼む』

ζ(゚ー゚*ζ「お久しぶりね。
      それとも、覚えていないなら初めましての方がいいかしら。
      フォックス・ジャラン・スリウァヤ」

その瞬間、フォックスの声を覆っていた冷静さの仮面は音を立てて砕け散った。

爪;'ー`)y‐『……嘘だろおい、お前、デレシアか?!』
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2021/12/26(日) 19:36:44.916ID:uV8ymBbk0
電話越しにでもフォックスの動揺が目に映るようだった。
彼にしてみれば、捕らえようとしている大物が緊急時用の電話に出てきたのだ、無理もない。
その反応が面白く、デレシアはからかうように言った。

ζ(゚ー゚*ζ「あら、よく分かったわね」

爪;'ー`)y‐『おい、フサ、どういうことだ?
      どうしてデレシアがそこにいるんだ?』

ミ,,゚Д゚彡「どうしてって言われても、俺の古くからの友人だからな」

爪;'ー`)y‐『ちっ、だったら教えてくれればいいものを。
      まぁいい、今はそれどころじゃない。
      それで、何の用だ』

切り替えの早さは優秀さの証だった。
少なくとも、宣戦布告を受けた二つの街が協力関係にあれば、状況の打破は夢ではない。
そこにデレシアという存在が加われば、それは現実味を強く帯びることになる。
フォックスの状況判断は流石だった。

ζ(゚ー゚*ζ「連中の本拠地にこっちでも攻め込むんだけど、ちょっと借りたい人がいるの。
      いいかしら?」

爪'ー`)y‐『今の状況で貸せるような人間がいればな。
      どこの誰だ?』

ζ(゚ー゚*ζ「トラギコ・マウンテンライトを借りたいのよ」

爪'ー`)y‐『……いいだろう、丁度、今イルトリアにいるんだろ?
      ただ、おまけが一緒にいるはずだが』

オサム・ブッテロは、正直なところデレシアとしてはどちらでもいい存在だった。
輸送する人数制限を考えると、雑魚はいらない。
働いてもらうとしたら、別の場所の方が適任だろう。

ζ(゚ー゚*ζ「そっちはいらないわ」

爪'ー`)y‐『彼は、多分そう言わないだろうね。
      まぁいいさ、好きにしてくれ。
      いちいち許可を求めたってことは、こっちは何か見返りがあるんだろう?』

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、勿論。
       これは私の予想だけど、そっちに攻めてきている船、全部大きいでしょう?
       一隻は戦艦なのは分かったけど、後の種類は分からないんじゃない?」

爪'ー`)y‐『……それが分かれば苦労はしないさ。
      バカでかい甲板を持ったバカでかい船だ。
      見たことのない種類だ』

確かに、その種類の船は現代では使われることは無い。
それは人類が空を支配できる力を持っていた頃の産物なのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「それは海上基地として使う、空母ね。
       甲板上に飛行可能な棺桶やヘリがいるはずよ」

爪'ー`)y‐『ちっ、やっぱり海だけじゃなくて空からもか。
      あれだけの巨体だが、動力は何なんだ?』
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2021/12/26(日) 19:38:23.880ID:uV8ymBbk0
その巨大さは、船上都市“オアシズ”に匹敵するほどのものだ。
積載されている様々な物を考えると、フォックスの疑問は当然だ。
客船と軍艦では、そもそもの装甲の厚みなどによる重量差がある。
巨体で尚且つ重量のある船を動かすためのエネルギーは、自然の力を利用した物では賄いきれない。

ζ(゚ー゚*ζ「ニューソクよ。
       だからエネルギー切れについては期待しないで。
       エンジン部を破壊したら大きな爆発が起きるから、出来るだけ沖合でやるのをお勧めするわ。
       ティンカーベルで起きた爆発と同規模よ」

爪'ー`)y‐『なるほどな。
      攻め込むしかないか』

空を飛ぶことのできる兵器がある以上、早い段階で迎え撃たなければ街に攻め入られる。
可能な限り早い迎撃が必要になるため、現実的なところで言えば、足回りの速い船で喫水線に穴をあけるのが一番だ。
今の段階で攻め入ってこないということは、彼らの所有する棺桶や航空兵器が十分に活動できる距離にいないということ。
接近を許さなければ、まだ戦う余地はある。

ミ,,゚Д゚彡「こっちもそんな感じだ。
      昨晩と今朝の砲撃の件は聞いただろ?
      あれがある以上、守りの戦いはできない。
      拠点にいるハート・ロッカーを潰せば、こっちは余計なことを気にしないで自由に動ける。

      後は、内藤財団のトップも殺せば色々と陽動も出来るだろうさ」

爪'ー`)y‐『ふむ……
      ニョルロックにいいのが二人、あー、場合によっては三人か。
      いるが、そいつらも使った方がいいな。
      こちらの管轄で二人、そっちの元管轄で一人だ。

      ギコ・カスケードレンジがニョルロックで大暴れしたという情報がある。
      ひょっとすれば、この騒動を聞いたギコが動く可能性があるだろうさ』

ミ,,゚Д゚彡「連絡手段がないな。
      まぁ、あいつなら間違いなくこっちの期待通りかそれ以上に上手く立ち回るさ。
      そっちの管轄ってのは誰だ?」

爪'ー`)y‐『“花屋”と写真家だよ。
      となると、こっちからは影法師、トラギコ、花屋と写真家。
      そっちからは“惑狐”、ギコそしてデレシアか。
      やれるか?』

デレシアは即答した。

ζ(゚ー゚*ζ「内藤財団のトップ連中をまとめて潰すのは私がやるわ。
       聞きたいことも、言いたいこともあるから。
       残りの人たちでハート・ロッカーと拠点をどうにかしてちょうだい」

とにかく、最優先で潰すべきはハート・ロッカーの砲撃能力だ。
頭上から飛来する砲弾を迎撃するのは容易ではない。
視認する頃には着弾するため、弾幕を張ってどうにかする他ない。
フレシェット弾などの特殊なものが使われれば、その被害は計り知れない。

だが、疑問になるが連日の砲撃がありながら、まだ二つの街に砲撃がされていないことだった。
すでに潜入している“惑狐”が何かしらの対応をしているのかもしれない。
それがいつまで続くのか、そして今の状況がどうなっているのか、それはイルトリア側でもまだ把握できていないことだった。

ミ,,゚Д゚彡「だ、そうだ。
      ギコについては正直分からんが、まぁ、どこかで役には立つはずだ」
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2021/12/26(日) 19:38:52.112ID:uV8ymBbk0
爪'ー`)y‐『そうであると願うよ。
      悪いが、ウチは今の状況的に街にいる“騎士”を現地に送るだけの余裕がないんだ。
      砲撃がいつ、どう来るか。 それが一番の懸念だな。
      ハート・ロッカーと戦艦の砲撃を同時に防ぐだけでも、中々厳しい話なのは分かってくれるよな。

      内藤財団の息のかかった街から攻め込まれることも考えると、流石に溜息が出る』

スリーピースの防壁があれば、正面からの攻撃にはしばらくは耐えられる。
戦艦の砲撃を真正面から受けてどこまで耐えられるのか、それは相手の使用する砲弾次第だ。
こうして通話しているが、ジュスティアは今銃口を向けられている状況であり、余裕などないだろう。

ζ(゚ー゚*ζ「誘導弾じゃないから、どこか街を見下ろせる位置に観測手がいるはずよ。
       とりあえずはそいつらを始末しておけば、砲撃をある程度は回避できるわ。
       “腕のいい狙撃手”がいれば、すぐにできると思うけど」

砲撃には観測手が必要となる。
特に、精密な砲撃が必要となればなおさらだ。
着弾との誤差を常に報告し続ける人間がいなければ、超遠距離の砲撃は大した脅威ではなくなる。

爪'ー`)y‐『なるほどな、そうさせてもらおう。
      ……あぁ、だからか、カラマロス・ロングディスタンスが連中に取り込まれていたのは』

ミ,,゚Д゚彡「こっちも、ペニサス・ノースフェイスが殺された理由が分かったよ。
      あのばあさんなら、この街から見つけて撃ち殺せるからな。
      ってことは、観測手の距離も分かるな。
      公式記録は5キロ、非公式を含めると7キロ以内だ」

半径7キロ以内に街を見下ろせる場所となると、それはかなり限られてくる。
特に二つの街は海に隣接していることも有り、方向も限定できる。
逆に観測手が潜んでいそうな場所に向けて迫撃砲で砲撃をすることも可能だ。

爪'ー`)y‐『こっちもそれぐらいを目安に索敵してみよう。
      他に何か有益な情報はあるか?』

ζ(゚ー゚*ζ「ハート・ロッカーは電源がないと動けないの。
       多分、もう対策されているとは思うけどね」

爪'ー`)y‐『分かった。
      ともかく、やれるだけのことをやるさ。
      ではな』

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、またな」

そして通話が終わると、フサは溜息を吐いた。
ゆっくりと右手で髪をかきあげ、そして、デレシアを見た。

ミ,,゚Д゚彡「ふむ……
     なぁ、デレシア。
     お前の連れはどうする?」

旅の連れである、ヒート・オロラ・レッドウィングとブーンはこの戦争に参加する義務はない。
デレシアはこの戦争を引き起こした組織との因縁があるため、参加するのは当然だった。
むしろ、どう芽吹くかを見守っていた立場である以上、それを踏み潰して摘み取るのは彼女の責任だ。
二人を無理矢理危険に巻き込むのはデレシアの本意ではない。

彼女たちの意思が最優先だ。

ζ(゚ー゚*ζ「私と一緒である必要はないわ。
       本人たちに訊いてみましょうか」
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2021/12/26(日) 19:41:51.250ID:uV8ymBbk0
ミ,,゚Д゚彡「ブーンもか?」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、あの子が行きたいって言うのなら、ね。
      ペニーの最後の弟子よ?
      どんな選択をしようとも、あの子の選択は尊重したいの」

彼は今、拳銃を取り扱えるようになっていた。
以前までのブーンではない。
射撃が出来るのならば、人を殺せる。
人を殺せるのならば、己の道を作ることが出来る。

だが不必要に人を殺す必要はない。
人を殺せば、その先は決して終わらない人殺しの道を歩くことになる。
子供にその道を歩ませるのはデレシアもヒートも、そしてペニサスも望んではいない。
しかし今の時代では、例え子供でも人を殺さなければ生きられないことがある。

もしもティンバーランドの掲げる夢が成就すれば、世界は今よりも整理されることだろう。
国家という枠組みを用意し、そこに適さない人間や街が力によって姿と形を変える。
己の在り方を変えなければ生き残ることのできない時代が来る。
例えば。

彼らが劣等種として見下している“耳付き”は奴隷としての人生すら歩むことはなくなり、この世界から文字通り駆逐される。
同性愛者は異常者として扱われ、十字教以外の宗教は異教として排除される。
さながら疫病であるかのように、徹底してこの世界から居場所を奪われる。
そしてその思想に従えない人間、街が集まり、新しい国が生まれる。

国が生まれ、争いが生まれ、そして火種を残して争いが終わる。
春に芽吹くように火種が新たな国を生み出し、争いが始まるのだ。
統一国家という考えは第三次世界大戦の影に存在していたもので、カリメア合衆国が密かに実行しようと計画していた考えだ。
世界最大の軍隊と権力を持つ国が抱いた夢が、今、こうして現代に蘇るのは趣味の悪いホラー映画を思わせる。

だがしかし、これもまた世界の在り方の一つとしては理想なのだ。
力による支配は変わらないが、それが誰によって、どのように行われるかの違いでしかない。

ミ,,゚Д゚彡「そうか。 だが、こっちが回せる輸送機は一機だけ。
      デレシア、トラギコが乗ると、後一人しか乗せられない」

ζ(゚ー゚*ζ「積載重量の問題かしら?」

ミ,,゚Д゚彡「席の都合だ。
     量で考えればまだいける」

デレシアには考えがあった。
重量の問題でないのであれば、まだ用意は出来る。

ζ(゚ー゚*ζ「なら、どうにでもなるわね。
       ちょっと話をしてきてもいいかしら?」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、勿論だ。
     出発は七時、でどうだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「十分よ。
       ありがとう、フサ」

ミ,,゚Д゚彡「なぁに、気にするな。
     じゃあまた後で陸軍の“404”兵器庫前で合流しよう」
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2021/12/26(日) 19:42:23.857ID:uV8ymBbk0
デレシアは立ち上がり、その場を立ち去った。
ブーンとヒートの姿はイルトリア軍の食堂にあった。
ラジオからの放送は既に終わり、慌ただしい食事風景が広がっていた。
戦闘服を着た人間がひっきりなしに行き交う中、ヒートとブーンは軍人に混じって黙々と食事を続けている。

食べることの重要性を知る者達は、必要なエネルギーを補給し、活力を得ることの重要性を知っている。
今こうしている間は配置についている仲間が必要な行動を行っているという信頼があるからこそ、食事をする余裕があるともいえる。
近くのコーヒーマシンから紙コップに注ぎ、それを手に持って二人の姿を探す。
探す時間は、ほんの数秒で済んだ。

(∪´ω`)

ノパ听)

二人は揃って同じ朝食を食べていた。
カリカリになるまで焼かれた分厚いベーコンにケチャップとマスタードを添え、両面焼きの目玉焼き。
小皿にはトマトとレタス、そして人参のサラダが盛られ、フルーツの入ったヨーグルトが並んでいる。
違いは二人の選んだ飲み物だけだが、トーストにたっぷりのバターを塗って食べているところも同じだった。

ζ(゚ー゚*ζ「お待たせ」

ノパ听)「おう」

ヒートはトーストを飲み込み、口の端を拭ってそう言った。
一方、ブーンは口の中に入ったトーストを懸命に咀嚼していた。

(∪´ω`)ザフザフ

ζ(゚ー゚*ζ「無理して喋らなくていいわよ。
      しっかりと味わうのよ」

(∪´ω`)゛

ノパ听)「どうする?」

二人の前の席に座り、デレシアは端的に伝えた。

ζ(゚ー゚*ζ「私は連中の頭を潰すわ。
      まぁ、その場にいなければその場所を消すだけ」

ノパ听)「そっか。 状況はどうなってるんだ?」

湯気の立ち昇るコーヒーを一口すすり、デレシアは答えた。

ζ(゚ー゚*ζ「ジュスティアに13隻の空母、とド級の戦艦が1隻ね。
      オセアンで見たハート・ロッカーが拠点にいるから、それを潰すためにそれぞれ動くわ」

ノパ听)「で、後はこっちに向かってるバカでかい飛行機か。
    ……デレシアが頭を叩くんなら、あたしはこっちに来てる連中をやるよ」

ζ(゚、゚*ζ「いいの?」

ノパ听)「こんな状況で何もしないなんて、あたしには無理だよ。
    正直、あたしがデレシアと一緒にいても足を引っ張りそうだからね。
    あたしも連中の夢を潰す理由があるし、あいつなら、きっとこっちに来るだろうさ」

ヒートは母親に家族を殺され、自分自身も殺されかけた。
母親を動かしたのは、耳付きと呼ばれる人種に対する並々ならぬ嫌悪感。
彼女の母親であるクール・オロラ・レッドウィングはティンバーランドの夢に賛同したから家族を殺したのか、それとも殺してから夢に賛同したのかは分からない。
だが間違いなくヒートの敵であり、その人生を狂わせた張本人だ。
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2021/12/26(日) 19:43:43.146ID:uV8ymBbk0
復讐に身を焦がし、殺し屋として生きた彼女なら、間違いなく夢を潰す道を選ぶと分かっていた。
推測だが、クールはイルトリアを攻め込むチームにいるとデレシアも考えていた。
耳付きに対する異常なまでの殺意。
世界でも類を見ない、耳付きに対する偏見のない街。

耳付きの持つ類まれなる身体能力を生かして軍人として雇用し、高い階級を得られるなど、他にはありえない。
あの女からすれば、イルトリアは魔窟の様なものに見えていることだろう。
ならば自らの手でその街と共に耳付きを滅ぼしたいと考え、その役割を喜んで果たそうとするはずだ。
駆除をする人間は、すべからくその手で息の根を止め、完遂された状態を自分の目で見たいと考えるものだ。

ζ(゚ー゚*ζ「ブーンちゃんはどうする?
       ここにいれば安全よ」

(∪´ω`)「僕も何かしたいです」

一切の迷いもなく、ブーンはそう返答した。
基地の中に漂う空気の中でも、彼は周囲の軍人と同じくおびえた様子がない。

ζ(゚ー゚*ζ「なら、ヒートと一緒に行動してちょうだい」

(∪´ω`)゛「分かりましたお」

ノパ听)「あたしとか? いいのか、デレシアとじゃなくて」

どちらと一緒に行動したとしても、ブーンは必ず何かを学ぶ。
今のブーンが学ぶべきものは、過去の妄執が終わる瞬間よりも、復讐に人生を狂わせた人間の背中の方にこそ多くある。
ティンバーランドとの因縁は、デレシア一人で請け負えばいい。

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、いいのよ。
       あと、ディも一緒に連れて行ってあげて」

(∪´ω`)「おー」

ζ(゚ー゚*ζ「私は後50分ぐらいで出発するから、その間に何か訊きたいことがあれば――」

(∪´ω`)「――デレシアさん」

ζ(゚ー゚*ζ「あら、何?」

ブーンは席を立って、デレシアの傍に歩いてくる。
そして、デレシアに抱きつき、不安そうな声で言った。

(∪ ω )「大丈夫ですかお?」

表情は分からない。
だが、感情は痛いほどに分かる。
一時的な別れで済めばいいが、永遠の別れになるかもしれないと危惧しているのだ。
事実、そうなる可能性は十分にある。

この三人がこうして会えるのは、これが最後になるかもしれない。
今までとは規模も相手も違うことを、ブーンは情報ではなく空気から察しているのだろう。
賢い子だった。

ζ(゚ー゚*ζ「ふふっ、大丈夫よ」

(∪ ω )「また、会えますかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、会えるわ」

小さな手に、力が込められる。
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2021/12/26(日) 19:44:56.398ID:uV8ymBbk0
(∪ ω )「また、ぎゅーってしてくれますかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「勿論」

背中を優しく撫でさすり、落ち着かせる。
デレシアの胸から顔を離すと、そこにはいつものブーンの笑顔があった。

(∪´ω`)「お!」

ノパー゚)「……」

ヒートは多くを語らなかったが、その目が雄弁に告げていた。
デレシアは微笑み、右手を差し出した。
握手に応じ、ヒートは言った。

ノパー゚)「さっさと終わらせて、旅の続きに行こう」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、そうしましょう。
      次はホールバイトにみんなで行きましょう」

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                / / |│ :│  | /| ://  /// ̄:|メ|     |八 !
              //∨|八i |  | ヒ|乂 /// イ弐示く |    :j: : : . '.
              ///: : i: : : :i i  │∠ : イ//   弋少 刈   //: : :八: :\
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       /   人 : : :  -=ニ二 ̄}川 >、  `''=こ=一   ∠ -匕 /´ ̄ ̄ ̄`Y: :{/: /
       {   { 厂      . : { /⌒\   ー       イ///: : : .____   人: :\/
       ':   ∨} _: : : : 二二/ /   | \_   -=≦⌒\く_: : /: : : : : : :_:): :\: :\
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September 25th AM06:15

トラギコ・マウンテンライトとオサム・ブッテロは朝食の途中でイルトリア陸軍に連れられ、兵器庫の中で状況の説明を受けていた。
出されたホットドッグの最後の一口を口に押し込み、咀嚼しながらトラギコが言った。

(=゚д゚)「俺が拠点を叩く班に入る理由は何ラギ?」

口の横に着いたケチャップを親指で拭い取り、口に運ぶ。
紙ナプキンで手を拭くトラギコに、軍人が機械じみた口調で答えた。

(,,゚,_ア゚)「作戦上必要な人材だからだ」

( ゙゚_ゞ゚)「じゃあ俺が空の方に行くのはなんでだ?」

(,,゚,_ア゚)「作戦上必要な人材だからだ」

先ほどと全く同じトーンの言葉。
紙コップに注がれたコーヒーを飲み、トラギコは息を吐くように言葉を発する。

(=゚д゚)「詳細は話せないって事ラギね。
    まぁいいラギ。
    俺は乗った」
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2021/12/26(日) 19:45:19.658ID:uV8ymBbk0
( ゙゚_ゞ゚)「ちっ、結局ここに来たのは無駄足だったのかよ。
    とりあえず、俺も乗った」

既にこの騒動に無関係とも無関心とも言えない以上、トラギコとしては結末を見届けたいという気持ちがあった。
犯罪者が大義名分を掲げて世界に混沌をもたらすというのを見過ごすのは、彼の流儀に反する。
少なくとも彼らが動かなければ無事であった命があったはずだ。

(=゚д゚)「この機に乗じて逃げようなんて思うなよ」

( ゙゚_ゞ゚)「どうだろうな。
    その時になったら決める。
    ただし、条件がある」

その言葉は軍人に向けられていた。

(,,゚,_ア゚)「何だ」

( ゙゚_ゞ゚)「俺に棺桶をくれ。
    コンセプト・シリーズか名持ちのだ」

(,,゚,_ア゚)「……いいだろう。
     ただし、軍で保管している物だけだ」

( ゙゚_ゞ゚)「中長距離の攻撃が出来る重装甲のやつがいい。
     何がある?」

(,,゚,_ア゚)「そうだな……」

軍人が考えを巡らせていると、トラギコとオサムの背後から静かに鉄色の髪の女が姿を現した。
市街戦用の迷彩服を着た女は氷の様な視線を一瞬だけ二人に向け、無感情に告げる。

(゚、゚トソン「その男にはユリシーズのカスタム機を用意してください。
     元々はエイブラハムを使っていたはずですので、重装備の方がいいでしょう」

(,,゚,_ア゚)ゞ「はっ!!」

軍人はより一層に背筋を伸ばし、敬礼をしてその場から駆け足で移動した。
女は改めて二人の前に立ち、腕を胸の下に組みながら言った。

(゚、゚トソン「他に何か質問は?」

(=゚д゚)「……あんた、確か」

トラギコは女に見覚えがあった。
ワタナベ・ビルケンシュトックと殺し合っていたとき、間に入ってきた女だ。
本名は知らないが、ニクラメンから脱出する時に近くにいた女に間違いはない。
並みはずれた雰囲気と言葉のアクセントからイルトリア人であることは分かっていたが、この場で会うとは想像すらしていなかった。

有無を言わせぬ命令と、その雰囲気は女の存在が並々ならぬものであることを雄弁に物語っている。
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2021/12/26(日) 19:46:09.608ID:uV8ymBbk0
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(゚、゚トソン「トソン・エディ・バウアーです。
     質問がなければ、トラギコさんはここに残っていてください。
     ディキンス上等兵、オサムさんを案内してください」

( 0"ゞ0)ゞ「はっ!!」

( ゙゚_ゞ゚)「よろしく頼む、俺は気が小さいんだ」

オサムは大人しく軍人の後ろについて兵器庫を出て行った。
残されたのはトラギコ、そしてトソンだけとなった。

(=゚д゚)「あんた、あの時の女ラギね」

(゚、゚トソン「会うのは二度目ですね」

(=゚д゚)「……あんたの階級は?」

(゚、゚トソン「今、それを教える必要が?」

(=゚д゚)「俺の興味ラギ」

(゚、゚トソン「で、あればお答えする必要はありませんね」

その答えには一切の感情は込められていなかった。
オサムがいなくなったところで、改めて、トラギコは質問をした。

(=゚д゚)「まぁいいラギ。
    それで、どうして俺が連中の基地を叩く役割になったラギ?」

(゚、゚トソン「ご指名です」

(=゚д゚)「指名?」

(゚、゚トソン「はい」

(=゚д゚)「誰の指名ラギ?」

(゚、゚トソン「それは後々分かります。
     さて、私からは状況の説明をさせていただきます」

(=゚д゚)「……あぁ」
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2021/12/26(日) 19:46:33.531ID:uV8ymBbk0
(゚、゚トソン「先ほど説明があった通りですが、敵の拠点にはハート・ロッカーという棺桶があります。
     規格外の大きさなので、Cクラスというレベルではありません。
     対都市攻略用に設計された棺桶で、超長距離の砲撃が可能です。
     昨晩ブーオがこれによって文字通り壊滅しました。

     恐らく生存者はいません。
     ブーオはガス弾、フレシェット弾、焼夷弾など様々な弾種の実験台となりました。
     そして今朝、セフトートが砲撃され、消し飛びました。
     トラギコさんにはチームを組んでいただき、ハート・ロッカーと基地の無力化を行っていただきます」

(=゚д゚)「チームって言ったラギね。
    メンバーを知りたいラギ。
    経歴とか、そういう具体的な話をしてくれラギ」

(゚、゚トソン「現地にはすでに2人、潜入しています」

(=゚д゚)「2人? たった2人だけラギか」

拠点を制圧するのであれば数は必須だ。
特に、相手が質と量を持っているのであれば、油断や慢心をするだけの余裕のある立場ではない。
状況を逆転させるには、それを可能にさせるだけの圧倒的な質と作戦が不可欠である。

(゚、゚トソン「一人はイルトリアの“惑狐”、そしてもう一人はジュスティアの“影法師”です」

(;=゚д゚)「マジか、“レジェンドセブン”ラギよ?
    よく共闘できるラギね……」

(゚、゚トソン「ご存知の方でしたか」

(;=゚д゚)「そりゃ、“モスカウ”の特別指導官ラギよ。
    流石に知ってるラギ」

ハロー・コールハーン。
モスカウでは潜入捜査の特別指導を行い、トラギコもその指導を受けたことがある。
円卓十二騎士の一人で尚且つ限られた七人にのみ与えられたレジェンドセブンの称号を持つとされる、若き天才潜入工作員である。
トラギコ自身も彼女のことをよく知っているわけではない。

幾つもの通り名を持ち、幾つもの過去を持つ人間だ。
何が真実で何が偽りか、それを知るのは本人ぐらいだろう。
ジュスティアには彼女の様な潜入工作員が多数おり、世界中の街の情報が集約されるようになっている。
同様に、“惑狐”はイルトリア屈指の諜報員であり、ハローと同じく名前だけが伝わる影の存在だ。

惑狐が関わったとされる事件をモスカウが担当したことがあるが、何一つとして痕跡はつかめなかったと聞いている。
敵に回すと厄介だが、味方である限りはかなり心強い。

(゚、゚トソン「後はニョルロックから2人。
     “花屋”とアサピー・ポストマンというカメラマンですね」

“花屋”はニダー・スベヌだ。
トラギコとは違った点から事件を解決するためのスペシャリストであり、円卓十二騎士の一人である。

(;=゚д゚)「アサピー?!
    ダメだ、わけが分からなくなってきたラギ……
    円卓十二騎士が二人、そんでもってカメラマンかよ」
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2021/12/26(日) 19:47:04.059ID:uV8ymBbk0
(゚、゚トソン「で、こちらからはトラギコさんとあともう一人派遣することになります。
     そのもう一人が、相手の頭を叩きます。
     情報によれば、相手の頭がいる施設はハート・ロッカーのいる施設から離れているとのことです。
     他のメンバーでハート・ロッカーの無力化を最優先で行ってください。

     基地内の詳細等は現在報告を待っていますが、何せ潜入任務ですので、情報があるとは思わないでください」

(=゚д゚)「そのもう一人が誰なのか、教えちゃもらえねぇラギか?」

(゚、゚トソン「えぇ、無理です。
     ですが出発時には分かるはずです」

(=゚д゚)「そうラギか。
    規模は分かるラギか?」

(゚、゚トソン「花屋とこちらの持っている情報をすり合わせると、少なくとも千単位でいるはずです。
     無論完全武装の戦闘集団と想定していただいて構いません。
     ですが電撃戦で物を言うのは質と速度です」

(=゚д゚)「……そうラギね、あんたの言うことは信用できそうラギ。
    ところで、俺には何か棺桶を支給してくれたりするラギか?
    俺の“ブリッツ”でやりあえっていうラギか?」

ブリッツは近接戦闘に特化した棺桶で、尚且つ緊急時に限られる。
携帯性に優れているという点を除けば、高周波刀を使う別の棺桶の方が優れている。
相手の拠点に対する強襲作戦では大した優位性はない。
しかし、トソンはきっぱりと言い切った。

(゚、゚トソン「はい、そのつもりです。
     少なくとも野外戦ではなく、屋内戦です。
     強力な銃弾も砲弾も、爆薬も必要ありません。
     しかし、銃は好きなのをお渡しします。

     あって困るものではないでしょうから」

暴れるのであればCクラス、もしくはBクラスの棺桶が必要だろう。
だが陽動する人間が別にいれば、狭い空間に隠れることのできる携帯性が必要だ。
そう考えれば、確かにAクラスであるブリッツと強力なライフルがあれば十分かもしれない。

(=゚д゚)「そうラギね。
    弾と銃と爆薬、それと防弾装備とバッテリーが欲しいラギね。
    ブリッツの充電が切れると厄介ラギ」

(゚、゚トソン「用意しておきます。
     好みの銃があればお伝えください」

(=゚д゚)「最低限Bクラスの装甲を撃ち抜ける強装弾が使えりゃいいラギ。
    あと、試射したいラギ」

(゚、゚トソン「かしこまりました。
     ではこちらに」

案内されたのは、兵器庫の裏側にある簡易的な射撃場だった。
そこに用意されていたライフルの中で、トラギコが目を付けたのはH&KG36A2だった。
イルトリア軍で正式採用されているアサルトライフルで、部品を変えるだけで支援火器としても活用できる。
ジュスティア軍と方向性が似ているが、目的が異なる。
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2021/12/26(日) 19:49:36.003ID:uV8ymBbk0
ジュスティア軍はアタッチメントによる拡張性を重要視しており、基本的に支援火器は別の銃を用意している。
ライフルを手に取り、百連装のドラムマガジンを装填する。
棹桿操作を行い、初弾を送り込む。
射的の的として置かれているのはジョン・ドゥの外装だった。

(゚、゚トソン「反動がいくらかありますが、ジョン・ドゥレベルの装甲であれば貫通可能です」

レールと一体化しているドットサイトを覗き込み、銃爪に指をかける。

(=゚д゚)「どれど――」

ジョン・ドゥの装甲は優秀なことで知られており、通常のライフル弾では貫通も難しい。
しかし、トラギコが発砲した瞬間、ジョン・ドゥの外装が吹き飛んだ。
それと同時に、トラギコが肩に当てた銃床を伝って凄まじい衝撃が襲う。

(;=゚д゚)「――れぅおわっ?!」

(゚、゚トソン「対強化外骨格用の徹甲弾ですが、ジュスティアに納品されているのとは少し違いますね」

(;=゚д゚)「少しってレベルじゃないラギね。
    だけど、これなら十分やれそうラギ」

(゚、゚トソン「現地で弾の調達が出来ないので、その点に注意をしてください」

(=゚д゚)「分かったラギ。
    Cクラスの棺桶用に、マスターキーを付けてほしいラギ」

(゚、゚トソン「散弾ですか?」

(=゚д゚)「いや、スラッグ弾で頼むラギ。
    どうせ散弾なんて効く相手は出てこないラギ」

(゚、゚トソン「ではそれも用意しておきましょう。
     しばらくの間は射撃をしていますか?」

(=゚д゚)「あぁ、そうするラギ」

再び銃爪を引き、その衝撃を体で味わう。
これから先の展開を考えれば、射撃に慣れていなければならない。
残された時間は多くない。
後悔をしている時間もないだろう。

世界がこれから大きく動こうとしている中では、僅かな躊躇さえも大事に至る。
内藤財団という巨大な組織、企業が相手となる事件は始めてだ。
極めて興味深い。
非情に楽しい。

トラギコは、今、興奮を覚えていた。
だがその興奮は、彼の中では二番目のものだった。
足りないのだ。
この程度では、足りないのである。

彼が生涯最後の事件と決めたその時の興奮に比べれば、まだ物足りないぐらいだ。
デレシアという、この世界の謎全てを内包したような存在を追うことこそが、トラギコにとっては最も心躍る事件なのだ。
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2021/12/26(日) 19:50:15.383ID:uV8ymBbk0
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同日 AM07:00

イルトリア陸軍の兵器庫が並ぶその敷地内に、ひと際大きなかまぼこ型の兵器庫があった。
陸軍の管理下にありながら、その兵器庫には陸軍の所属を示すエンブレムはない。
他の兵器庫からは慌ただしく兵器と弾薬が運び出される中、その“存在しないはずの”兵器庫だけは分厚いシャッターを下ろしていた。
この兵器庫こそが、イルトリアにとっての切り札であり、今日まで秘匿され続けた“第四の軍隊”の兵器庫なのだった。

そこに集められたのは、限られた情報を知る人間の中でも更に限られた人間だけ。
灰色の迷彩服を着た軍人が2人。
彼らは一様にHMD付きのヘルメットを被り、兵器庫の中央に置かれた特殊なプロペラを持つヘリコプターの前にいた。
二重反転プロペラを採用し、通常のヘリとは異なり、テイルローターの向きが魚雷と同じく機体の横ではなく真後ろにあった。

そのヘリの詳細を知るのはその場にいるイルトリア人と旅人だけだった。
ヘリの前に立つのは、ジュスティア警察の男が一人。
だがその全身を包むのはイルトリア軍の装備で、背中には充電用のバッテリーを取り付けた小型コンテナを背負っている。
“虎”と呼ばれ、数多くの難事件を解決してきた側面にだけ目を向ければ優秀な警察官だ。

その反面、数多くの規律違反と命令違反を積み重ね、凶悪犯でさえ彼の名を聞けば怯えすくむほどの凶暴性のある男だった。

(=゚д゚)

旅人が一人。
カーキ色のローブで体を覆い、そのローブの下には二挺の拳銃とソウドオフショットガンが隠されている。
黒のジーンズ、デザートブーツ。
彼女が纏い、手にする全ての物は長い旅を経て今日まで残ってきた一品ばかりだということは、目の肥えた識者であれば分かっただろう。

しかし、例え歴史に名を遺すほどの偉人であっても、最初に目に付くのは旅人の美貌であることは間違いない。
黄金色の髪は仄かに波打ち、同じ色の長い睫毛の下にある蒼穹色の碧眼は宝石を思わせる。
世の美術家がその生涯をとして作り出したどの作品よりも整い、そして、慈愛に満ちた面影を持つ旅人。
その旅人が持つ危険性を、その場にいる全ての人間が理解していた。

仮に空腹の灰色熊がいたとしても、より恐ろしいのはその旅人だと断言するだろう。
0022以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2021/12/26(日) 19:51:37.496ID:uV8ymBbk0
ζ(゚ー゚*ζ

そして、イルトリア市長がいた。
世界を二分するとしたら、イルトリアとジュスティアに分けることが出来る。
即ち、世界の半分を支配するだけの力を持つとされる街の最高権力者。
事実、彼の力は世界最強の市長と言わしめるだけの物があった。

単純な腕力、膂力ならば恐らくは世界一。
積み重ねてきた戦歴は間違いなく、世界一の男である。

ミ,,゚Д゚彡

必要な人員が揃ったことを改めて確認し、イルトリア市長、“戦争王”フサ・エクスプローラーは腕時計を一瞥して厳かな声で話を始めた。
その仕草は軍人のそれであり、尚且つ、多くの人間を指揮することに慣れている人間のそれだった。
低く、心臓を震わせるように響くその声が兵器庫内に反響した。

ミ,,゚Д゚彡「作戦の説明を始めよう。
      目標はここから南にあるクラフト山脈の麓だ。
      超高高度で飛行し、そのままそこで降ろす。
      以降は標的を潰し、即時撤退だ。

      基地を強襲するチームはハート・ロッカーの排除、そして基地の無力化。
      残りは、連中の頭を潰してもらう。
      内藤財団の社長、副社長等々だな。
      戻る場所はイルトリア、もしくはジュスティアだが、手段は問わない。

      何か質問は」

その言葉が主に向けられていることを自覚するトラギコ・マウンテンライトは、挙手することなく口を開いた。
イルトリアの市長と言えば世界最強の市長であり、恐れるべき相手としてジュスティアでは教え込まれる。
一対一の素手で戦っても、トラギコが勝てる見込みはない。
権力、腕力、戦闘力、どれをとっても圧倒的な格上なのは本人も自覚しているところだ。

理不尽なまでの戦力差を有することを知りつつ、トラギコの態度はいつもと変わらない物だった。
彼にとって戦力差とは態度に現れるものではなく、戦いの手段に現れるものなのだ。

(=゚д゚)「正直、算段はあるラギか?
    仮にこっちが連中の基地と頭を潰して、いざ帰ってきたら街がなくなってるなんてのは嫌ラギよ」

勝利条件はイルトリア、もしくはジュスティアの存続、各都市に向かっている大型兵器の撃墜、そして相手の司令塔の排除である。
仮に相手の司令塔を潰したとしても、思想が根付いている組織は決して息絶えることは無い。
徹底的に潰さなければ、いくらでも蘇るのだ。
それこそ、雑草のように。

ミ,,゚Д゚彡「ジュスティアの奴がいるが、この際だから教えてやるよ。
     ウチには陸、海、海兵隊そして空軍がある」

聞きなれない単語を耳にしたトラギコは、思わず聞き返した。

(=゚д゚)「空軍? 空を云々するラギか?」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、そうだ。
      空を制すれば、陸を制するのが容易だからな。
      各軍に分散させておいた連中だ。
      攻撃用のヘリ、輸送用のヘリ、そしてこのジェットヘリだ。

      まぁ、空についてはこっちの方でどうにかする」
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2021/12/26(日) 19:54:30.314ID:uV8ymBbk0
機密中の機密情報を、市長自ら公にしたことに対する衝撃はあったが、状況を考えれば出し惜しんでいる暇がないということなのだろう。
空軍という存在があれば、イルトリアからジュスティアへの進攻は容易になっただろう。
ヘリは極めて高価かつ貴重な兵器であるため、数を揃えるには相当な時間が必要になる。
長い時間をかけて用意し、軍内部でも知られないように分散して管理し続けていたために、ジュスティア軍も気づけなかったのだ。

(=゚д゚)「それならいいラギ。
    結局この基地から出るのは二人だけラギか」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、残念だが後は現地で合流してくれ。
     ギコについては考えずに行動してくれ」

(=゚д゚)「分かったラギ。
    ……デレシア、どうして俺を指名したラギ?」

ζ(゚ー゚*ζ「この事件、解決したいと思ってるんでしょう?」

(=゚д゚)「俺が手前を逮捕するってことは考えていないラギか」

トラギコは笑み一つ浮かべずそう言ったが、デレシアは全てを見透かしたように答える。

ζ(゚ー゚*ζ「できるならそうしているでしょう?
      それに、刑事さんは戦争よりもこっちの方が得意だと思うんだけど、違うかしら?」

(=゚д゚)「いいや、あってるラギ」

ミ,,゚Д゚彡「話し合いは終わりか?
     なら、さっさと出発だ」

三人は黒塗りのヘリに向かって歩いていく。
ヘリには翼があり、本来はその翼の下に武装を吊り下げることになっているのだろうと予想が出来た。
しかし、今は武装の代わりに両翼には追加のバッテリータンクが2つずつ取り付けられている。
武装は機首の下に取り付けられた機銃が一機のみだ。

(=゚д゚)「どれくらいで現地に到着するラギ?」

ミ,,゚Д゚彡「予定では6時間ほどだ。
      可能な限り急ぐが、これよりも短縮は難しい」

ζ(゚ー゚*ζ「急ぎましょう。
      こっちの動きを観測している連中がいるなら、ヘリが来ると分かれば対空砲の準備をするはずよ」

ミ,,゚Д゚彡「あぁ、分かってる。
     向こうが何かやる前に、こっちで動かないと手遅れになる」

――その発言から数分後、フサの予言は的中することになる。
相手は妄執に取りつかれた夢追い人の集団。
あらゆる可能性を考慮し続け、模索し、研究し、試行錯誤を繰り返して対抗勢力の予想を裏切ることに注力してきたのだ。
その執念と実行力は、デレシア達の予想を越えたものだった。
0024以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2021/12/26(日) 20:09:03.324ID:uV8ymBbk0
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     .イ人ー-ミ:.:.ー-ミ     . : : : : : :
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   /イ.:.:/:{    `ヾハ{{: : : : : :
   ∨才.::リ_____ r芸.!  : : : : : : :.
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同日 AM07:05

(’e’)「あぁ、やっぱり?」

イルトリアを見下ろすことのできる山岳地にいる観測手からその報告を受けた時、イーディン・S・ジョーンズはさほど驚きもしなかった。
これから彼らが攻め入ろうとする2つの街は、決して一筋縄ではいかない。
それは作戦を考えるよりも前に分かっていたことであり、計画実行において必ずクリアしなければならない関門だった。
その関門を越えられなければ、彼らが相手にしようとする旅人には到底太刀打ちは出来ない。

彼女の想像を超えるものを用意し、運用しなければならなかった。
ハート・ロッカーが発見され、その運用を考えた時、ジョーンズはその構造上の矛盾に気づいていた。
そして、発見されたハート・ロッカーは未完成の状態のまま戦場に投入されることになったのだと推測した。
それは確信に近かった。

ハート・ロッカーは都市攻略用の棺桶であり、巨大な砲を用いて砲撃し、敵の都市を壊滅させるという使い方が示されていた。
だがそれならば、約240メートルもの巨体を有する必要はなく、砲だけで十分なはずだ。
砲撃場所に制限をなくすために無限軌道による移動が可能であるとはいえ、あまりにも大きすぎる。
装備している武装と稼働のための機構を考えても、理にかなっていない。

あまりにも小規模すぎる装備。
対人用の装備と言ってもいい。
つまりは、対都市用の砲は備えているが、それ以外の装備は街を攻め落とすにはあまりにも不似合いな物なのだ。
更なる大口径、更に強力な武装がなければ対都市攻略用強化外骨格としてのコンセプトから逸脱してしまう。

解体し、運び出す段階でいくつもの発見があった。
巨体を覆う装甲は、その実、武装を収納するための空間を無理矢理に覆った物であること。
有線式の給電方法以外にもハート・ロッカーを動かす術があり、そのための空間が設けられていること。
そのため、外部からの攻撃を受けたとしても本体に直接深刻なダメージを受けることは無く、意図的に作られた空間がそれらを無力化する設計であること。

ハート・ロッカーが陸上母艦としての役割を果たせるということ。
湾岸都市にあったのは、海上、陸上のどちらにも対応することができるためで、かつてハート・ロッカーを所有していた街が追い詰められた状況だったということが分かった。
未完のまま完成を迎え、その役割を果たすことなく街の地下深くで眠っていた哀れな棺桶だ。
これは世紀の大発見であると同時に、過去から現代に向けての巨大な宿題でもあった。

再構築をする中で、ジョーンズは自分たちの手に余る装備を外すことを決めていた。
作られた時と今とでは、このハート・ロッカーが担う役割が違う。
防衛用ではなく攻撃用。
固定ではなく遠征するため、有線式の給電方法を廃した。

強力な砲は折り畳み式にすることで、超長距離への精密な砲撃を可能とした。
不安定な巨体は台形になるように再設計し、前傾姿勢の物へと変えた。
これによって足元の安定性が向上すると同時に、無駄に巨体を晒さずに済む。
代わりに、取り払った装甲を両腕部に取り付け、巨大な盾とした。
0025以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
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2021/12/26(日) 20:10:33.990ID:uV8ymBbk0
対人用の装備も随所に復元し、設計者が意図した対都市攻略用強化外骨格としての目的を果たせるものになった。
ニューソクを電源とする方法は既に実用化しており、ハート・ロッカーに積み込むのは容易だった。
設計者もこれを考えていたのだろうと思われる痕跡が電源周りにあったのを発見した時は、ジョーンズは密かに射精していた。
彼の知識と発想力は、今よりもはるかに優れた文明力を持つ太古の人間に追いついたか、凌駕したのである。

都市攻略。
そのために必要なのは火力、速度、そして意外性。
昨晩と今朝の砲撃は、全て地下からの射程内にある街だけに限定されていたが、これからは世界中全てが射程圏内に入る。
ギリギリまでその姿を見せないことにより、こちらの本気を悟らせないという涙ぐましい努力の甲斐もあり、今に至るまで攻撃は受けていない。

(’e’)「いいさ、こっちの動きが分かったところで関係ない。
   よぅし、我々も行こうか!!」

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         ̄フ |丁天了ト'´'´  | |ニ二二l----、_ / |―‐' ̄ ̄
        ∠ -┘`フ‐'フ´ ̄`▽三 ̄7   ̄¨`''ーッ< /
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  ∠=ァ  ム=≠ヲ、 ̄ヽ._}ー、∧ノ `i レ 'i´    l  l
  `ー‐<  〉li `YT王三|「| ̄}_, -r''"   i.     レ'′
      `エ -、∠_ム.__三j|.jへ,l   i    l.   /
       }lヽr┴く(ェrェr/`ヽ(=)   l    l. .ィく
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その言葉をきっかけに、一斉に低い唸り声の様な音が響き渡る。
世界を変える咆哮。
鋼鉄の装甲同士が擦れ、軋み、それの悲鳴が咆哮と化す。
ハ ー ト ・ ロ ッ カ ー
傷だらけの箱に、新たな傷が刻まれる。

『作業員退避完了を確認。
リフトアップ開始。
補助電源ケーブル切断、主電源への切り替え開始』

一瞬、ハート・ロッカーの動きが止まる。

(’e’)「コード再入力。
   さぁ、頼むよシィ君!!」

『そして、大好きだった物も忘れていく。 私には一つだけ残っている』

無感情な音声が響き、ハート・ロッカーに再び命が吹き込まれる。
軋みが頭頂部から脚部にかけて駆け巡り、振動が足場に伝わる。
足場となるリフトはその衝撃を吸収しつつ、圧倒的質量のハート・ロッカーを地上へと押し上げる。
そのまま巨体の頭部が朝日に照らされ――

(’e’)「……ん?」

――そこで、リフトが動きを止めた。
ハート・ロッカーの中に作られた指令室で椅子に座っていたジョーンズは首を傾げた。
彼の疑問に対する答えは、すぐに出てきた。
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2021/12/26(日) 20:11:00.401ID:uV8ymBbk0
『施設全体に停電発生。
主発電室より応答なし。
非常用電源に切り替わりましたが、リフトアップに必要な電力を確保できません』

(’e’)「不要な電力を全て回してくれ」

『それでも足りません。
非常用電源の発電量では、今の状態でリフトを固定するので精一杯です』

(’e’)「急いでくれたまえよ」

『現在、発電室に対応班を向かわせています。
状況が分かり次第お伝えしま――』

通信もそこで途絶し、ジョーンズは深い溜息を吐いた。
問題が発生してしまったのであれば、早急に処分しなければならない。

(’e’)「担当者が誰だか知らないが、やってくれるなぁ」

言葉とは裏腹に、苛立ちも焦りも込められていなかった。
彼にとっての真の目的はハート・ロッカーの起動でも、イルトリアの殲滅でもない。
これはあくまでも目的に続く道中であり、道を外れたとしても、別の手段がある。
そう。

焦る必要は、何一つとしてないのだ。
依然として状況は彼らにとって有利なままであると同時に、ジョーンズにとって理想的なものであることに変わりはない。
仮にこの基地に侵入者がいてこの状況を生み出したのだとしても、羽虫が巨象に抗う程度の時間稼ぎしか出来ないだろう。
何が起きても、ジョーンズの夢はここで潰えることは無い。

一方。
発電室ではその時間を稼ぐために抗う者たちがいた。
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2021/12/26(日) 20:11:42.228ID:W0BkldoS0
しえん
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2021/12/26(日) 20:11:42.364ID:uV8ymBbk0
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    ゙':., "7__| | :|    `丁う元対「 ̄\   'マ¨¨⌒\   ./ / . :/ ̄ ̄\_/ . : : :/
       ̄√ | |_\__}/{_少’八  \\  \   \__/ / . :/    : : :\__/
       ∧__|/^yf元k==く___/ ∨  |\\__`ニ=-< ̄ ̄ ̄\   . : : : : :\__
     /  | _j{ {少’))   ̄   |  |  \∨ ___{_ 〕 ̄}  /⌒\: : : :\: : : : :\
      | |  弋_/ ` _    |  /   リ/ ◇  ̄\:.{ 〈: : : : / ̄ ̄ ̄``ヽ、: :\
      | \  ∧    ´ ゚     |: /    /´ _√ ̄⌒^\  >: :´ ̄ ̄ ̄\    \ ハ
      人  \_公。           ,ふ    /\厂:::::::::::::::::::::::::::\_: : |\: : \: : \    \|
    /  \_  \>。,    / |'    /\/:\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\: :|: : |: :\_|    ヽ

ハハ ロ -ロ)ハ「これでどれくらい稼げル?」

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      |:. .{\. \、 |.   ィぅ示ミk. |   |    ``〜、、__彡
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      i|  |\,ィ笊ミk \|       / /: / }/} }  .i!:i     |
        i: :|  \..ゞ'       ノ ,  /   :} / :|:i    |
         ',.| ト {⌒ ヽ      .⌒ ,/, イ〈/:}  } | |:i    |.
        Y:{ { 从     __    ./'^ / / /  八.|:i     i|.
            /人.|i|:\  ‘ '     |..:'⌒i /. ./:. :|:i     i|

ノト∧ハ∧,
イ从゚ ー゚ノi、「良くて一日。 悪くて半日、といったところかのぅ。
       あのバカでかい奴が日の目を見る前に、どうにかするぞ」
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ハハ ロ -ロ)ハ「しかたなイ」

ノト∧ハ∧,
イ从゚ ー゚ノi、「たまには日の下で労働したいものじゃな」

ハハ ロ -ロ)ハ「日陰者には影の中での仕事が一番ダ。
       じゃあナ」

ノト∧ハ∧,
イ从゚ ー゚ノi、「うむ。 また、いつか、どこかでな」

非常口を示す電灯の明かりが消えた時、二人の姿はその場になかった。
彼女たちは影の中を動く存在。
月明かりの下、闇よりも濃い影として生きる存在。
逆転の要であり、ティンバーランドの宣戦布告に対して誰よりも速く対応した人間だった。

話は前夜に遡る――

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Ammo→Re!!のようです
Ammo for Rebalance!!編

第四章【 Ammo for Rebalance part1 -世界を変える銃弾 part1 - 】 了

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0029以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
垢版 |
2021/12/26(日) 20:15:51.997ID:uV8ymBbk0
支援ありがとうございました
これにて本日、今年の投下は終了です

来年もまたよろしければお付き合いいただけれ嬉しい限りです

質問、指摘、感想等あれば幸いです
0030以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
垢版 |
2021/12/26(日) 20:25:33.317ID:W0BkldoS0
乙!来年も期待してる
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