DQN「お前漫画なんか描いてるのかよwちょっと見せてみろよw」
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DQN「お? お前漫画なんか描いてるのかよ!」
男「!」サッ
DQN「隠してんじゃねーよ! ちょっと見せてみろよ!」
男「や、やめ……」
DQN「ギャハハハッ! なんだこのヘッタクソな絵! 小学生かよ!」
男「ううう……」
DQN「だが、アイディアは悪くねえ。この設定なんかは感心しちまった」
男「え……」
DQN「漫画ってのは描く人の心を映し出すもんだ。このアイディアを生み出せる心……大事にしろよ!」
男「う……うん!」 DQN「おい、何描いてんだ、そのノート貸せよ」
キモヲタ「返せよ勝手に見るなよ・・・」
DQN「フェイトじゃねーか、おい皆これ見ろよ」
女子「何これキモい、何なのこれ?こいつオタクなの?」
DQN「フェイト・テスタロッサ、魔法少女リリカルなのはのキャラだな
インテリジェントデバイス・バルディッシュを操る天才魔導師で
実はプロジェクトFの産物として生み出された人造生命クローンだ
後に時空管理局提督リンディ・ハラオウンの養子になって
名前がフェイト・T・ハラオウンになる
ちなみに声優は水樹奈々だ」
女子「何それ魔法少女ってこいつヤバいよロリコン?」
DQN「まぁな見てるのはロリコンだけのクソアニメだ」
キモヲタ「くそぉぉぅちくしょぅう・・・・」 DQN「お、また漫画描いてるのか。見せてみろよ」
男「いいよ」
DQN「おっ、絵はだいぶ上達したな」
男「うん、あれから色々見て、勉強して……」
DQN「だけどなんか、どこかで見たことがある絵って感じなんだよな」
男「だよね……それは自分でも自覚してる」
DQN「上達させつつ、自分独自の絵柄を完成させてくことが今後の課題になるな」
男「うん、頑張ってみる!」 DQN「おい漫画見せろよ」
男「どうぞ」
DQN「おっ、なんかいい感じの絵柄になってるじゃん。オリジナリティ出てる出てる」
男「ありがとう!」
DQN「相変わらずアイディアも悪くねえが……なんかストーリーが平坦だな」
DQN「特に山場もなく、あっさり終わっちゃう感じで……物足りなさが残るんだよな」
男「あっ、たしかに……」
DQN「そこを直せば、もっといい漫画になると思うぜ!」
男「やってみるよ、DQN君!」 DQN「へへへ……漫画はどうだ?」
男「また描いてみたんだ」
DQN「よっしゃ、読むぜ!」
男「……」ドキドキ
DQN「だいぶよくなったじゃん! ただ……」
男「ただ?」
DQN「コマ割りがちょっと普通すぎるな。たとえばここなんかせっかく大技決めるんだからもっとでかいコマの方がいいだろ」
男「たしかに!」 ある日――
DQN「この漫画も面白かったぜ! 読ませてくれてありがとよ!」
男「あのさ、DQN君」
DQN「どうした?」
男「僕、卒業したら漫画家を目指すよ!」
DQN「!」
男「きっと大変だろうけど……絶対なってみせる!」
DQN「お前ならなれるさ! 頑張れよ!」 ……
DQN「よう、こんなところでどうしたんだ?」
男「実は……これから持ち込みに行こうと思ってるんだけど……」
DQN「持ち込み!」
DQN(あんなに内気だったのに成長したなぁ……)
男「だけど、踏ん切りがつかなくて……」
DQN「だったら俺もついてってやるよ。そしたら、勇気も出るだろ?」
男「ありがとう、DQN君……!」 編集者「君が持ち込み希望者かい。作品は?」
男「これです。読んで下さい!」
編集者「ふーん……」
編集者「……」ペラペラ
編集者「うん、つまんない。帰っていいよ」バサッ
男「!」ガーン
男「あ、あの……全然読んで……」
編集者「僕ほどのプロになるとね。流し読みでも分かるの。ほら、帰った帰った」
男「は、はい……」ガックリ
DQN「待てや」ギロッ 編集者「なんだ……君は」
DQN「こいつはこの一作を描くためにメチャクチャ苦労してきた……」
DQN「もちろん、苦労すりゃ報われるわけじゃねえってのは分かってる。だがよ……」
DQN「仮にも漫画のプロを自称するんなら、命削って描いてきた原稿に、しっかり目を通すぐらいしろやァ!」
編集者「うぐ……! わ、分かったよ……」
男「DQN君……」
DQN「わりぃ、出しゃばりすぎた」
男(いや、そんなことないよ……) 編集者「ふむ……ほう……」
男「ど、どうでしょう?」
編集者「なかなか面白い。たしかに光るものはある」
男「ありがとうございます!」
編集者「ただ……これはウチの雑誌向きじゃない。もう一本……もう一本描いてきてもらえるかな?」
編集者「それを編集部の中で会議にかけて、説得材料にしたい。やれるかな?」
男「や、やります! やらせて下さい!」
DQN「チャンスをつかめたな!」
男「うん、ありがとうDQN君!」 ……
男「DQNくーん!」
DQN「おう、どした」
男「あれからもう一作描いて……それが会議を通ったみたいで……」
男「連載が決まったよ!」
DQN「! やったな!」
男「君がいなきゃ……きっと編集者にあしらわれた時点で心が折れてたよ。ありがとう!」
DQN「ああいう場面で役に立てなきゃ、俺なんている意味ねえからな。連載頑張れよ!」
男「うん! きっと売れっ子になってみせる!」 ……
男「うう……間に合わない……もう時間がない……」
男「分かってたけど、週刊連載がここまで過酷なものとは思わなかった……」
男「こんな連載始まったばかりで原稿落としたら、読者に見放されてしまう……」
DQN「おーい!」
男「DQN君!?」
DQN「ずいぶんやつれてるな……」
男「まあね……連載始まったばかりなのに締め切りに追われてて……」
DQN「やっぱりそういうことか。だが、安心しろ!」
男「え!?」 DQN「漫画の心得がある舎弟を連れてきたぜ!」
舎弟A「背景なら任せて下さい」
舎弟B「大抵の絵柄ならエミュれます」
男「え〜〜〜〜!?」
DQN「俺もこんな時のために、多少絵を修行してきた。足手まといにはならねえ!」
男「こんな時ってどんな時!?」
DQN「しゃべってる暇はねえ! 描くぞ! 読者をガッカリさせたら漫画家失格だ!」
男「分かったよ! DQN君! 読者をビックリするほど楽しませてみせる!」 精神科医師「要受診」
DQN「・・・・・」
男「やっぱりな」 男「間に合った……」
DQN「やったな!」
舎弟A「パン買ってきました」
舎弟B「ジュース買ってきました」
DQN「おう、サンキュー!」
男「ありがとう……。これからはきちんとスケジュール管理するようにするよ」
DQN「へっ、体壊さないようにな」 ……
DQN(あれから、あいつの連載は順調に進み……雑誌の中の上あたりの人気をキープしてる)
DQN(すっかりプロ漫画家になりやがって……)
DQN「ってあれ!?」
男「うぅぅ……あぁぁ……」
DQN「お前こんなとこで何やってんだ!? 漫画は!?」
男「もうダメだ、僕は……」
DQN「いったい何が……」
男「スランプなんだよぉぉぉぉぉ!!!」 DQN「スランプ……!?」
男「いくら考えても次の展開が思いつかないんだ! もうダメだ、オシマイだぁ!」
DQN「んなことねえって……」
男「しょせん僕は才能がないんだ! ここまでの男だったんだ! 今の連載なんてとっとと投げて、漫画家なんて辞めて……」
DQN「いい加減にしろぉ!」
バキィッ!
男「ぶげっ!」 男「DQN君……」
DQN「甘ったれてんじゃねえ!」
DQN「才能がない? ここまでの男? 勝手に決めてんじゃねえ!」
DQN「才能がなきゃないなりに無い才能を絞り出せ! ここまでならここまでなりにあがいてみせろ!」
DQN「少なくとも! お前の描いてる漫画のキャラどもならそれができるはずだぜ!」
男「うう……」
DQN「だったらお前にもできるはずだ!!!」
男「DQN君……!」 男「ごめん……。おかげで目が覚めた。やってみるよ」
DQN「よし、その意気だ」
男「今、主人公のピンチを打開するには新キャラを投入するのが一番だと思う」
DQN「王道だな」
男「どういう新キャラにするかなんだけど……」
DQN「難しいところだな」
男「例えば、見た目は悪そうなんだけど、心は優しくて男気に溢れたキャラ、なんてのが登場すれば完璧なんだ」
DQN「いいじゃねえか。きっと人気出るぜ」
男「だけど、描くにはモデルが欲しい」
DQN「モデル……? そんな奴、そういねえもんなぁ……」
男「……いたーっ!!!」
DQN「誰!?」
男「君だよ!」
DQN「俺!?」 DQN「大丈夫かぁ? 俺がモデルのキャラなんて出して……」
男「うん、平気平気」
DQN「もし、人気が落ちたら……」
男「落ちないって!」
DQN「しょせん俺なんてワルよ? 大したことない男よ? 漫画に出す価値なんて……」
男「そういうことを勝手に決めるのはよくないよ」
DQN「うぐ……」
男「心配いらない。僕だってプロなんだから!」
DQN「はい……(なんて貫禄だ、これがプロ漫画家……)」 ……
男「人気投票の結果――DQN君モデルのキャラが一位だ! おめでとう!」
DQN「えええええ!?」
男「やったね! このキャラのおかげで漫画自体の人気も上がったよ!」
DQN「お、おう……」
男「嬉しくないの?」
DQN「嬉しいというか、照れくさいというか……。つか、主人公が一位じゃなくていいのか?」
男「なぁに、主人公が一位じゃない人気投票なんてよくあることさ」
DQN「ならいいけどよ」 やがて――
男「DQN君……」
DQN「?」
男「聞いて驚かないでくれよ……」
DQN「なんだよ?」
男「僕の漫画が……ついにアニメ化決定だよぉ!!!」
DQN「おう、おめでとう」
男「え、驚かないの?」
DQN「そりゃ俺は、お前の実力ならアニメ化までこぎつけるって信じてたからよ」
男「僕以上に僕のことを信じてたとは……」 男「ここまで来られたのは君のおかげだ。漫画を手伝ってもらったことも何度もあるし」
DQN「よせやい」
男「そこで……僕から提案なんだけど」
DQN「?」
男「君も漫画を描いてみたら?」
DQN「!」
DQN「俺はワルだぜ? んなもん描けるわけが……」
男「いや、僕には分かる。君には僕以上の素質が眠ってると……」
男「僕はそれを引き出すためなら、どんな労力も惜しまない。例えば推薦文なんか喜んで書くよ!」
DQN「そうまでいってくれるなら……やってみるよ。俺もちょっと興味あったんだ」
男「すぐ追いついてきてよ!」 ……
……
男(あれからDQN君は漫画に専念するといって、僕の前から消えた……)
男(いったいどうなったのだろう)
男(漫画家はダメだったのか、それとも今も描いてるのか……それすら分からない)
男(そう思ってたある日――)
男「あ、DQN君!」
DQN「お、おう」
男「どうして、出版社(ここ)へ?」
DQN「えと、いや、なんていうか……」 男「分かった! 持ち込みだね!? だったら――」
DQN「いや……持ち込みはもう終わって……」
男「へ?」
DQN「その……ついさっき……デビューが……決まったんだ……」
男「そうだったの! おめでとう!」
DQN「あ、ありがとよ……」
男「だけど、ひどいじゃないか。連絡一つよこさないなんて。僕たち友達じゃなかったの」
DQN「あー、なんか、照れくさくて……」
男「気持ちは分かるけどさ。とにかく、おめでとう!」
DQN「う、うん……」
男(どうにも煮え切らないな) 男「ああ、そうだ! どんな作品でデビューするの? 教えてよ!」
DQN「え、と、あの……」
男「お願いだよ! よかったら宣伝もしたいし!」
DQN「うん……これ、なんだけど……」
男「これは……!」
男(動物たちが平和な村で楽しそうに遊んでる漫画……!)
DQN「児童誌に連載することになって……」ポッ
男「君のいってた、漫画は描く人の心を映すというのは本当だったんだね」
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