修道女「神よ、斧を振るうことをお許し下さい。――ふんっ!!!」
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― 教会 ―
僧侶「ど、泥棒だ!」
盗賊「ちくしょう、見つかっちまったか。だが、俺は捕まるわけにゃいかねえんだ。
痛い目見てもらうぜ!」チャキッ
剣を抜く盗賊。
修道女「僧侶君、下がっていて」
僧侶「は、はい!」
盗賊「やる気か、姉ちゃん」
修道女「神よ、斧を振るうことをお許し下さい」サッ
盗賊「え……斧!?」 修道女「ふんっ!!!」
ボッ!!!
盗賊「ひえっ!」
刀身は一撃で砕け散っていた。
僧侶「すごい……!」
修道女「さあ、観念して下さい。でなければ……」
盗賊「あ……あああ……」ヘタ…
神父「お待ちなさい」
修道女「神父様!」 神父「この方は見逃しましょう」
修道女「えっ!?」
僧侶「見逃すんですか!?」
神父「身寄りのない子供を集め、育てている盗賊がいるという噂を聞きました。
おそらくあなたのことでしょう」
盗賊「…………」
神父「それと砕けた刃で少し怪我をしていますね。僧侶君、治療を」
僧侶「分かりました」
盗賊「くっ……」 パァァァ…
僧侶「傷は塞がりましたよ」
盗賊「すまねえ……」
神父「最後に、これは少しですがお金です。お持ち帰り下さい」
盗賊「…………!」
神父「しかし、二度とこのような行為に手を染めないで頂きたい」
盗賊「この借りは……いつか返すよ」ダッ
修道女「神父様、お優しいですね。私も見習わなくては」
神父「いえいえ、あなたこそ素晴らしい斧さばきでしたよ」 ……
庭で斧を素振りする。
修道女「えいっ! えいっ! えいっ!」
僧侶「すごい迫力ですね」
修道女「うん、私は僧侶君のように神聖魔法の素質がなかったから、
斧の方を鍛えて、みんなの力になりたいの」
僧侶「たしか、神父様に斧を持たせてもらったら、いきなり振り回せたんですよね」
修道女「そう、斧が吸いつくように私の手にフィットして……」
僧侶「修道女さんは斧の申し子かもしれませんね!」
修道女「やだ、僧侶君ったら! 照れちゃう!」パシッ
僧侶(痛い……) ― 教会 ―
神父「二人とも、おはようございます」
修道女&僧侶「おはようございます!」
神父「今日は町へ出て、人々を手助けして下さい。ただし親切の押し売りになってはいけませんよ」
修道女「はい!」
僧侶「はい!」
修道女「それじゃ行こうか、僧侶君」
僧侶「ええ、町に行くのは楽しみです!」 Ysオリジンの女主人公が斧僧侶だった気がする
親父が魔法戦士 ― 町 ―
中年「近頃、腰が痛くって……」
僧侶「では痛みを和らげる呪文を……」パァァァ…
中年「おお……ありがとう!」
主婦「料理してる時、指先を怪我しちゃって……」
僧侶「これぐらいなら一瞬で治せますよ」
ワイワイ… ガヤガヤ…
修道女(僧侶君頑張ってるな。ようし、私も!) 修道女「神よ、斧を振るうことをお許し下さい」
修道女「皆さん、これより≪アックスショー≫を開始します!」
オオッ… パチパチパチ… マッテマシタ!
修道女「では参ります!」
修道女「はっ!」ブオンブオン
修道女「むん!」ギュルルルルルッ
修道女「てやっ!」ヒュババババッ
目にも止まらぬ速さで斧を振り回す。
修道女「はっ!」ビシッ
オオー… ヒューヒュー! パチパチパチ…
僧侶(すごい……剣舞ならぬ“斧舞”だ!) ― 教会 ―
神父「今日も一日が終わりました。それでは神に感謝しつつ、夕食をいただきましょう。
いただきます」
修道女「いただきます」
僧侶「いただきます」
パクパク… モグモグ…
神父「今日はよく食が進みますね。おかわりはいかがですか?」
修道女「たくさん斧を振ったので、つい……」
修道女(神よ、食べすぎをお許し下さい!) ― 町 ―
町民「いてて……ちっくしょ〜!」
修道女「ひどい怪我をなさっていますね」
僧侶「ボクが治します!」
治療はすぐに終わり――
修道女「いったい何があったんですか?」
町民「それがさ、山に山菜採りに行ったら、ひでえ猟師がいてさ」
修道女「ひどい猟師?」
町民「町外れに住んでる奴なんだが……俺を見るなり『ここは俺の狩り場だ』って矢を射かけてきて……
慌てて逃げたら、足を踏み外しちゃって……」
修道女「まあ、危ないですね!」
僧侶「人に向けて矢を放つなんて……!」 少女「うっ、うっ、うっ……」
修道女「どうしたの?」
小鳥「ピィ……」
僧侶「これは……!」
少女「さっき猟師さんが、この小鳥を射たの……山に入る前の準備体操だーって」
僧侶「さいわい急所には当たってませんし、まだ治せます!」
神聖魔法で回復させる。
小鳥「ピーピー!」パタパタ
少女「ありがとう!」
修道女「僧侶君……」
僧侶「はい?」
修道女「私、この猟師さんを許せない!」 ― 山 ―
猟師「今日も楽しくハンティング〜、っと」
猟師「ん?」
修道女「やっと見つけました」
猟師「なんだお前ら? なんで山にシスターがいるんだよ」
僧侶「あなたはこの山を縄張りに狩りをして、場合によっては人にまで矢を放つそうですね」
猟師「ああ、よく知ってるな。ひょっとして俺のファンか?」
僧侶「危ないとは思わないんですか!」
猟師「ちゃんと当てないようにしたって」
僧侶「当てなきゃいいというものではないでしょう!」
猟師「快適な狩りをするためには仕方ないことなのさ」 猟師「たとえばお前ら、教会の人間だろ? 神様に祈る時はきちんと時間が決まっていて、
きちんとした環境で祈るだろ?」
猟師「それと一緒。俺も『今日は狩りをする』って決めたなら、きちんとした環境でやりたいのさ。
だから邪魔な奴がいたら、どいてもらうしかない」
僧侶「なんて身勝手な……!」
修道女「僧侶君、説得が通じない相手もいるものよ」
猟師「お、分かってくれるかい。じゃあさっさと帰りな。俺が優しいうちにな」
修道女「いいえ、帰りません」
猟師「なんだと?」 修道女「猟師さん、勝負をしませんか?」
猟師「勝負?」
修道女「はい、私と勝負して、私が勝ったら無茶な狩りをやめて頂きます」
猟師「…………」
猟師「いいだろう」
僧侶「修道女さん! 弓相手に勝負なんて……」
修道女「大丈夫、僧侶君下がってて」 猟師(なんだ、このおめでたい女は……。俺と勝負だと? シスターの分際で笑わせる。
万一負けたとしても、俺が変わるわけないだろうが)
猟師(ま、とりあえず……足でも射抜いて黙らせてやるか)サッ
修道女「神よ、斧を振るうことをお許し下さい」サッ
猟師(斧だとォ……!?)
修道女「いつでもどうぞ」
猟師「斧で矢をどう防ぐってんだ!」
ヒュンッ!
修道女「ふんっ!!!」
ブオンッ!
斧の風圧が矢を止めてしまった。
猟師「な……!?」 修道女「矢は一本だけですか?」
猟師「く、くそっ!」
ヒュンッ! ヒュンッ!
修道女「むんっ!」
ブオオンッ!
またしても風に阻まれる。
猟師「ウソだろ……!?」 猟師「くそっ!」ダッ
僧侶「あっ、逃げました!」
修道女「いえ、あれは……」
猟師「…………」クルッ
猟師(これだけ離れれば、弓の距離だ!)
猟師(斧で矢を防ぐなんてそうできることじゃない! ここから矢を放ちまくれば――)
修道女「…………」サッ
斧を振りかぶる。
猟師「…………?」 修道女「ふんっ!!!」
ブオンッ!
ギュルルルルルルルルルッ
猟師「!?」
――ドカァンッ!
猟師のすぐ横の木に斧が突き刺さる。
猟師「〜〜〜〜ッ!」 修道女は斧を手放したというのに、もはや猟師から戦意は失われていた。
修道女「いかがでしょう?」
猟師「ひっ!」
修道女「無茶な狩りを……やめて頂けるでしょうか?」
猟師「やめる! やめますっ!」
修道女「本当に?」
猟師「本当ですぅぅぅ!!!」
修道女「ありがとうございます」ニコッ
修道女「行こう、僧侶君」
僧侶「はい! あ、斧で傷ついた木を治療しておきましょう」
修道女「優しいね、僧侶君は」
猟師(シスターにとって……俺は……まさしく“獲物”に過ぎなかった……)ガクッ ― 教会 ―
僧侶「すごかったんですよー! 斧で矢を吹き飛ばして……」
神父「ほう、見事なものです」
修道女「斧で脅すようなことをしてしまってすみません」
神父「いいのですよ。その方が猟師さんや町の人のためにもなるというものです」
修道女「あの猟師さん、悔い改めてくれるといいのだけれど……」
僧侶「絶対大丈夫ですよ!」
ワイワイ…
神父(相手は猟師とはいえ、斧で弓に勝ってしまうとは……恐ろしい才能だ。
やはり父親の才能を受け継いでいる)
神父(あの時のことは今でも鮮明に思い出せる……) 〜 回想 〜
― 教会 ―
その日は雨が降っていた。鎧をつけた騎士が教会を訪れる。
ザァァァァ…
神父「あなたは?」
騎士「私は……騎士団に所属する騎士だ。あなたは人格者だと聞いてやってきた」
神父「いったいどのようなご用件で?」
騎士「この子を……引き取ってもらえないだろうか」
抱かれているのは女の子の赤ん坊だった。 騎士「私は子供を育てられるような身の上ではなくなってしまった。だから、どうか……」
神父「…………」
普段ならば引き受けるにしても、詳しく事情を聞いたであろう。
しかし、並々ならぬ事情を察した神父は、
神父「分かりました。たった今からこの子の父親は私です」
騎士「ありがたい……。どうか私のことはこの子には話さずにおいて頂きたい」
神父「分かりました。ただし、一つだけ約束して下さい」
騎士「なんだろうか」 神父「この子に……必ず会いにきて下さい」
騎士「分かった……そうしよう」
…………
……
神父(あれからしばらくして、身寄りのない僧侶君をうちで引き取り、今の家族が出来上がった)
神父(未だ約束は果たされていませんが、近いうち果たされる予感がする――)
修道女「どうしました、神父様」
神父「!」ハッ
神父「後片付けをしたら就寝にしましょう。二人とも、おやすみなさい」
修道女「おやすみなさい!」
僧侶「おやすみなさい!」 ……
どこかの町にて――
旅人「ひでえな、こりゃ……」
行商人「ああ……とても町があったとは思えん。破壊し尽くされてる」
旅人「いったい誰が……」
行商人「盗賊団≪大蛇≫の仕業だ」
旅人「盗賊如きにここまでのことができるのか?」
行商人「盗賊団らしからぬ統率力で、あっという間に村や町を飲み込むらしい。
だから≪大蛇≫なんて名乗ってる」
旅人「いくら統率が取れてるからって……」
行商人「首領は元騎士って噂だ。もし本当なら、ありえるかもって思えるだろう?」
旅人「騎士がんなことするようになるなんて、世も末だねえ……」 ― 町 ―
修道女「えいっ! えいっ! えいっ!」
バキンッ! バキンッ! バキンッ!
凄まじい速度で薪割りをする修道女。
妻「ありがとう、助かったわ」
夫「怪我した私の代わりにやってもらったけど、私よりずっと速いよ。よければ代金を……」
修道女「いえ、これはあくまで人助け。お金はいりません」
修道女「では!」
夫「おお……斧を担いで去っていく」
妻「かっこいいわぁ……」
夫「おいおい、惚れないでくれよ」 子供「あのー……」トコトコ
修道女「ん?」
僧侶(子供……町では見ない顔だけど)
子供「ぼくたちのアジトに来て下さい!」
修道女「アジト……?」
僧侶「ど、どうしましょう?」
修道女「行こう。なにかあっても私が守ってあげる!」
僧侶「頼もしいです……!」 ― アジト ―
僧侶(ここがアジト……。いかにも大工さんに頼らず作った家という感じだけど……)
子供「お父さん、もうすぐ帰ってくるので、少々お待ち下さい」
修道女「分かりました」
僧侶(お父さん……?)
ワーイワーイ キャッキャッ
アジトで遊んでいる子供達は、どう見ても似ても似つかなかった。
修道女「どんな人だろうね、お父さんって」
僧侶「さあ……少なくとも、ここにいるみんな、血が繋がってるようには見えませんね」 盗賊「おお、お前たち。来てたのか」
修道女「あっ……」
僧侶「あなたはあの夜の……」
盗賊「あの時は世話になったな」
僧侶「そうか……お父さんというのはあなたのことだったんですね」
盗賊「ああ、こいつらはみんな孤児でな。俺が面倒見てるんだ。
いっとくが、もう盗みはやっちゃいないぜ。近隣に出向いて便利屋みたいなことやって、生計立ててる」
僧侶「そうですか。よかったです!」
修道女「あの時は大変失礼いたしました」ペコリ
盗賊「謝ることはねえよ! 俺はお前らを傷つけて逃げようとしてたんだからな。
殺されたり、牢屋にブチ込まれてもおかしくなかったのに、感謝してる」 盗賊「だから……今こそあの時の借りを返したい」
修道女「え?」
盗賊「俺がお前らをここに呼んだのは、ある情報を渡したかったからだ」
修道女「なんでしょう?」
僧侶「…………」ゴクッ
盗賊「これは俺がまだ持ってる裏社会の情報網から入手したんだが……
≪大蛇≫って盗賊団が、お前らの町を狙ってる」
僧侶「だ、大蛇……!」
修道女「かつてのあなたみたいな人が大勢いると考えてよろしいんですか?」
盗賊「バカいっちゃいけねえ。俺とそいつらを比べるなんて、そうだな……
ネズミとライオンを比べるようなもんさ。しかもライオンの集団」 修道女「それほど恐ろしいんですか?」
盗賊「ああ、恐ろしい。大勢で町や村を攻め込んで、あっという間に殺し尽くし、奪い尽くし、破壊し尽くす。
盗賊団というより破壊団といってもいいかもしれねえ」
僧侶「本当に大蛇みたいだ……」
盗賊「比較的新しく出来た集団なんだが、今までに潰された村や町は十を下らないっていうぜ」
修道女「ひどい……!」
盗賊「それと、首領は“斧の使い手”だそうだ。元騎士だなんて噂もある」
僧侶「斧……!」チラッ
修道女「…………」
盗賊「シスターの姉ちゃんと一緒だ。ま、単なる偶然だと思うが」 誰も興味ないとこでSS書くくらいなら底辺でもなろうでやったほうが評価されるだろうし楽しいと思うんだけどな
どっかで短編オンリーでやってなよ 僧侶「ボクたちはどうすればいいんでしょう?」
盗賊「それは俺が決めることじゃねえ。あくまで俺は情報を伝えただけ。
申し訳ねえが、力を貸すことはできねえぜ。俺にも守らなきゃならねえ奴らがいる」チラッ
ワイワイ キャッキャッ
盗賊「一ついえることは……何もしなきゃ、お前らの町も教会も、数日中に消えてなくなるってことだ」
修道女「ありがとうございます。すぐ教会に戻り、神父様に相談してみます」
修道女「行こう、僧侶君」
僧侶「はいっ!」 ― 教会 ―
僧侶「……というわけなんです」
神父「盗賊団ですか……由々しき事態ですね」
僧侶「盗賊団の名前は≪大蛇≫。首領は元騎士という噂があって、斧を使うそうです」
神父「…………!」
神父(まさか、こんなことが……運命のイタズラということなのでしょうか)
神父「とにかく、三人で町へ行きましょう。町の人々を集めてもらい、どうするか決めるのです」
修道女「はい!」
僧侶「はい!」 ― 町 ―
町長「もたらされた情報によれば、盗賊団は数日中にはここを襲うという」
町長「どうするか話し合ってもらいたい」
ワイワイ…
「戦おう! 町全員で守りを固めればたかが盗賊なんて!」
「逃げた方がいいって……」
「この町出ても行くとこねえし、戦うしかないんじゃないか?」
「元騎士が統率してるような連中に俺らが敵うかよ!」
ドヨドヨ…
意見は真っ二つに割れ、全くまとまらない。 町長「ううむ……神父様、何かご助言はございませんか?」
神父「はい」
神父「皆さん、まず戦った場合のことを考えてみましょう。
戦った場合、相手は凶悪な盗賊団です。犠牲無しに済むとは思えない。
勝ったとしても、大きな犠牲が出て、未亡人になったり親を失う子供が出るでしょうね。
むしろ、負ける可能性の方が高い。負ければもちろん皆殺しです。後には何も残らない」
神父「次に逃げた場合のことを考えます。逃げた場合、町は壊されるでしょうから帰る場所はなくなります。
手に職がある人はいいですが、そうでない人は非常に厳しい生活を強いられることになる。
それに、町の人間全員で逃げたりしたら、盗賊団に察知され追撃される恐れもある。
地の利もない場所で襲われたら我々はたちまち全滅するでしょうね」
町民「そんな……。それじゃどっちを選んでも……」
神父「どちらを選んでも、“あっちにしておけばよかった”となる。これはそういう選択です。
正解はどっちなのか、それは誰にも分かりません……。
しかし、道を示すことはできる」
神父が修道女を見る。 修道女「私は……戦いたいです」
一同がざわめく。
修道女「親のいない私に、神父様も僧侶君も町の皆さんも本当に良くしてくれました。
私はここを捨てることなどできません」
修道女「もし戦うというのであれば、私は斧を持って先頭に立って戦います。
たとえ人を殺めることになるとしても……」
修道女「町の皆様、どうか私にお付き合い下さいませんでしょうか」バッ
高らかに斧を掲げる。
シーン… 町民「やるよ……俺はやる。ここを捨てるなんてできない」
中年「俺もだ!」
少女「あたしも、手伝えることがあったらする!」
「俺も!」 「私も!」 「盗賊なんかにこの町を壊されてたまるか!」
町長「決まったようだな、戦おうぞ!」
オーッ!!!
修道女「ありがとうございます」
僧侶「か、かっこよかったです、修道女さん!」
神父(この統率力……これもまた父親の血がそうさせるのだろうか……) さっそく戦いに向けての準備が始まった。
町民「剣やナイフ、角材……武器になりそうなものは色々集めてみたけど……」
青年「できれば飛び道具が欲しいところだな」
町民「飛び道具か……」
僧侶「となると弓ですよね」
町民「多少はあるけど、あまり使わないからなぁ」
修道女「弓矢なら、ちょうどいい人がいるじゃないですか」
町民「え?」
修道女「ほら、町外れの猟師さん!」
町民「あいつかぁ……」 猟師の家に向かう。
猟師「盗賊が来るから、俺に弓部隊を組織して欲しい?」
修道女「お願いします。短時間で弓をたくさん作り、町の人達を訓練できるのはあなたしかいません」
僧侶「お願いしますっ!」
猟師「俺は……あれから無茶な狩りはやめた」
修道女「!」
猟師「なぜなら、俺はお前に完璧にやられたと思ったからだ。
矢は通じず、距離を離しても斧を投げられ、完全にビビっちまったんだからな」
猟師「だから……いつか、見返してやりたいと思ってた。『猟師さんすげえ』って思わせたいって思ってた」
猟師「それが……今なんだろうな。喜んで協力するよ」
修道女「ありがとうございます!」 猟師「俺の持ってる弓は全部出す」
大小さまざまな弓が家には保管してあった。
修道女「まあ、すごい」
僧侶「まるで弓マニアだ……」
猟師「もちろん、これだけじゃ盗賊には対抗できないだろう。
作り方は教えるから、簡素な弓をたくさん作って、とにかく手数を増やす」
猟師「下手な矢も数射れば当たるってやつだ」
修道女「そうですね。斧もたくさん振り回せばいつか敵に当たるものです」
猟師「……お前の斧は喰らいたくねえな、シスター」 町の外でも準備は進んでいた。
中年「バリケードや罠を仕掛けておきたいんだが……」
青年「どういう風にしていいのか分からないな」
僧侶「果物の皮を置いておくというのはどうでしょう! 盗賊たちが滑るかも……」
修道女「いくらなんでも可愛すぎるよ、僧侶君」
僧侶「す、すみません」
盗賊「おーっと、罠のことなら俺に任せてもらおうか」
僧侶「盗賊さん!」 修道女「どうしてここへ?」
盗賊「ガキどもが町を守りたいってうるさいんでね……。仕方なく、駆けつけてやったんだよ」
子供「えへへ……」
盗賊「こういう生き方してりゃ色々なことを覚える。罠の仕掛け方もな。
とりあえず、落とし穴から作るぞ!」
中年「分かった!」
青年「よろしく!」
僧侶「なんだかボク、勝てそうな気がしてきましたよ!」
修道女「うん、町の人達が力を合わせれば、きっと町を守れる!」 僧侶「神父様、何をしてらっしゃるんですか?」
神父「町の至るところに魔力を込めた護符を貼っています。
気休め程度ですが、町の人々を癒やすことができます」
僧侶「ボクも手伝います!」
神父「ありがとうございます。しかし、私一人で十分ですよ。
僧侶君は当日、回復役を担ってもらいます。少しでも温存しておいた方がいい」
僧侶「分かりました」
神父「ところで修道女さんは?」
僧侶「向こうで斧の素振りを!」
修道女「せやっ! えいっ!」ブオンッ
神父(この戦いは、彼女にとって人生の大きな転機となるかもしれませんね) ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています