0001以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 21:00:07.376ID:xF66gnf60
― 教会 ―
僧侶「ど、泥棒だ!」
盗賊「ちくしょう、見つかっちまったか。だが、俺は捕まるわけにゃいかねえんだ。
痛い目見てもらうぜ!」チャキッ
剣を抜く盗賊。
修道女「僧侶君、下がっていて」
僧侶「は、はい!」
盗賊「やる気か、姉ちゃん」
修道女「神よ、斧を振るうことをお許し下さい」サッ
盗賊「え……斧!?」
0062以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:09:21.311ID:xF66gnf60
盗賊団≪大蛇≫陣営――
首領「…………」
じっと斧を見つめる首領。
部下A「いやー、この間の稼ぎはすごかったな!」
部下B「ああ、だけど、首領は全然儲けに興味がないんだよな」
副官「あの方は金銭などどうでもいいからな。あるのはこの国に対する破壊衝動のみよ」
部下A「恐ろしい人だぜ」
部下B「ま、俺らも破壊は楽しんでますけどねー」
0063以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:12:11.436ID:xF66gnf60
プーン…
部下A「あ、虫だ!」
部下B「ちっ、うっとうしい! ……あ、首領の方に……」
首領「…………」
ヒュルンッ!
滑らかな斧さばきで、羽虫を砕いてしまう。
部下A「うお……!」
部下B「すげ……!」
副官(≪大蛇≫とは、別に統率のとれた部下達のことを指すのではない。
あの方の流麗な斧捌きを指すのだ。間違いなく次の仕事も成功する……)
0064以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:15:42.794ID:xF66gnf60
……
……
― 町 ―
町長「みんな、ご苦労だった。神父様の護符のおかげで、疲れの取れた状態で
敵を迎え撃つことができそうだ」
神父「それでは作戦を改めて確認しましょう」
神父「まず、盗賊団が罠にかかったら、猟師さん率いる弓部隊が矢を発射します」
神父「その後、矢をかわして突撃してくる者達を……」
修道女「私が先頭に立ち、迎え撃ちます!」
神父「怪我人はすぐ後ろへ運んで下さい。私と僧侶君が手当てします」
神父「犠牲無しに済むとは思えない、といいましたが、私は一人も死なせるつもりはありません」
町長「みんな、盗賊から町を守ろうぞ!」
オーッ!!!
0065以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:18:20.177ID:xF66gnf60
時をほぼ同じくして、迫る盗賊団。
ドドドドド…
首領「…………」
副官「首領、町が見えてきました」
首領「潰せ、跡形もなく」
ウオオオオオオオッ!!!
ドドドドドドド…
盗賊が一斉に突撃する。
0066以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:21:25.008ID:xF66gnf60
部下A「潰せ潰せ潰せ!」
部下B「皆殺しにしろォ! やっちまえェ!」
ズボッ!
部下A「ぐおっ!」
落とし穴にはまる。
部下B「ど、どうした! ……うおわっ!?」グラッ
ロープに引っ掛かり、落馬する。
ヒヒーン… ガヤガヤ…
0067以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:24:09.053ID:xF66gnf60
高台に位置する弓部隊。
猟師「みんな、弓を引け!」
猟師「狙うより、とにかく射まくるんだ! 相手を人間と思うな!
あいつらに町に入られたら終わるぞ!」
ヒュンッ! ヒュヒュヒュンッ! ヒュンッ!
部下C「ぐあっ!」グサッ
部下D「ぎゃっ!」グサッ
しかし、これでも盗賊の勢いは衰えない。
0068以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:27:15.176ID:xF66gnf60
ワァァァァァ……!
修道女「…………」
部下E「町の入り口に……シスター!?」
部下F「かまわねえ! ブチ殺せ!」
修道女「神よ、斧を振るうことを……お許し下さらなくても構いません!」
部下E&F「斧!?」
修道女「はあっ!」ガシュッ
修道女「せやっ!」ドシュッ
部下E「うああっ……!」
部下F「いでえ……!」
修道女(人を……ついに斧で斬りつけてしまった……)
修道女「しかし、私は町を守るため戦います!」ビシッ
「俺たちも行くぞ!」 「おう!」 「町を守るんだ!」
0069以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:28:42.052ID:yECQ5CyFr
俺が許す
0070以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:30:22.037ID:xF66gnf60
僧侶「怪我人はこっちへ!」
中年「ぐうっ……!」ヨロヨロ…
僧侶「すぐ治療します!」
中年「ありがとう……。それにしても修道女ちゃんはよくやってるよ……」
僧侶「はい、あの人はこの町の誇りです!」
中年「そして、君もな」
僧侶「あ……いえ……ボクなんて……」
神父「どんどん怪我人が増えるでしょう。魔力が尽きるまで回復しますよ」
僧侶「はいっ!」
0071以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:32:58.547ID:xF66gnf60
ワーワー…
修道女「はぁ、はぁ、はぁ……」
首領(あの斧さばきは……まさか!?)
副官「妙なシスターがいますね。首領、ここは俺にやらせて下さい」
首領「いいだろう。油断はするなよ」
副官「任せて下さい」
0072以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:36:08.385ID:xF66gnf60
副官「小娘、俺が相手になってやる!」
修道女「む!(この人、強い……)」
副官「シスターの分際で斧なんか持ちやがって……」
修道女「それは私の台詞です。あなた方の首領は元騎士だと聞きました。
なのに、あちこちの村や町を滅ぼすなんて!」
副官「あの方は騎士や騎士団を徹底的に憎んでるのさ。
だから、奴らが守ろうとする国や市民を破壊し尽くすおつもりなのさ」
修道女「な……!」
副官「元々大した勢力ではなかった俺たちだが、あの方のおかげで最強の盗賊集団になれた。
盗賊団≪大蛇≫にな」
副官「特に俺はあの方直々に訓練してもらい、“騎士団でも通用する”とお墨付きを頂いてる。
騎士級ってことだ!」
修道女(騎士級……!)
0073以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:39:02.939ID:xF66gnf60
副官「その強さを見せてやる……行くぞ!」ヒュルンッ
副官の得物は槍だった。
ビュオッ!
修道女「!」
副官「そらそらそらっ!」
ビュボボボボッ!
修道女「くっ!」
連続突きで瞬く間に追い詰める。
0074以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:42:15.093ID:xF66gnf60
修道女「はあっ!」
ブワオンッ!
副官「うおっ!(斧で風圧が……!)」
副官(なるほど……こんなものを喰らったらタダでは済まんな。だが、俺の敵じゃないッ!)
ビュオッ!
シュバッ!
長めの間合いから突きを繰り返す。
修道女(ダメだ……ただ斧を振り回していては、この人のまっすぐな突きには勝てない!)
修道女(ならば――)
0075以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:44:13.544ID:xF66gnf60
副官「トドメだッ!」
渾身の突き――
修道女「ならば私もまっすぐ参ります!」
突きから逃げず、正面からまっすぐ振り下ろす。
ガキンッ!
ぶつかり合う斧と槍。
副官「な……ッ!?」
ギィンッ!
副官「しまっ――」
打ち勝ったのは斧だった。
0076以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:46:26.879ID:wZUGI23pp
まとめサイトに乗りたいがためにスレ立て
だから外野も無視
0077以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:48:21.505ID:xF66gnf60
修道女「だああっ!」
ズバァッ!
副官「ぐ、ふっ……!」
副官「く、くそ……ッ! まだ、まだ……」
首領「もういい、ご苦労だった」
副官「首領……!」
首領「お前は役に立った」
ズバンッ!
副官の頭を斧で真っ二つにする。
修道女「あ……!」
首領「おかげで確信できた……。お前は“娘”だと。今こそ約束を果たす時ッ!
殺してやる……殺してやるぞォ!!!」
修道女「…………ッ!」
0078以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:50:29.492ID:xF66gnf60
僧侶「なんて奴だ……自分の仲間を……! それに娘というのは……?」
神父「…………」
修道女(なんて恐ろしい……目つきも蛇のよう……)
修道女「あなたが首領ですね? 参ります!」
首領「楽しませてくれよ」
ギィンッ! ガキンッ! ガキィンッ!
斧での激しい打ち合い。
修道女「くっ!」
首領「やるなァ……。ではそろそろ、本気でやってやるか」
0079以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:50:47.701ID:9xm+bQys0
せめて鈍器を使えよ
モーニングスターとか置いてないのか
0080以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:52:40.379ID:xF66gnf60
ヒュルッ……
ザシッ!
修道女「うぐ!? ……くっ!」
首領「どんどん行くぞ」
ヒュルッ! ギュルッ! シュルルッ!
蛇の如きしなやかな軌道で、斧を操る。
修道女「くうっ!」
首領「よく防御している。だが、いつまでかわせるかな?」
0081以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:55:51.660ID:xF66gnf60
町民「修道女ちゃんがヤバイ! なぁ、なんとか援護できねえか!?」
猟師「分かってる! だが、あの二人の動きが速すぎて、とても狙えねえ!」
ヒュルッ! ギギギンッ! ガキンッ! キンッ!
首領の猛攻を、修道女も必死に凌ぐ。
首領(次は……)ヒュルッ
修道女(右!)サッ
首領(残念、逆だ)シュルンッ
ズバッ!
修道女「あぐうっ!」ガクッ
ついに足を斬られてしまう。
0082以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/15(水) 23:59:06.401ID:xF66gnf60
修道女「ぐっ……!」
首領「重い斧を扱うにおいて、剣や槍以上に足は要といえる。勝負は見えたな」
修道女「……これからです!」ブオンッ
首領「無理だ。まるで力が入っていない」ヒュルンッ
修道女「ぐっ!」キンッ
僧侶「修道女さん!」
神父「いけません! 邪魔になるだけです!」ガシッ
僧侶「でも……でも!(あの足さえ回復することができれば!)」
僧侶(きっと修道女さんは逆転してくれる!)
0083以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:05:02.867ID:dbDih/QT0
僧侶「…………」ダッ
神父「僧侶君ッ!」
猟師「おい」
町民「なんだ?」
猟師「もし……もしもだ。これから放つ一矢を……シスターに当てるようなことがあったら、
俺を殺してくれ」
町民「ハァ!?」
猟師「頼む。そんぐらいの覚悟で射なきゃならない」
町民「…………!」
町民「わ、分かった……」
0084以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:07:23.373ID:dbDih/QT0
首領「ぬんっ!」
修道女「ぐうっ……!」ズキッ
修道女(やはり、足のふんばりが利かない……! このままでは……)
パァァァ…
修道女「え?」
足元には――
僧侶「これぐらいならすぐ治します!」
修道女「僧侶君……!」
首領「ちっ、無粋なことをしてるんじゃないぞ、小僧ッ!」
首領が僧侶めがけ斧を振り下ろす。
0085以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:10:03.188ID:dbDih/QT0
猟師(狩りってのは楽しむためにやるもんじゃない。
狩るか、死ぬか――それを思い知らせてくれたのはシスター、あんただ)
猟師(今こそその恩を……返す時!)
ヒュンッ!
渾身の一矢は――
ザグゥッ!
首領「ぐおっ……!?」
首領の肩を射抜いた。
首領「ぐっ、おのれぇ! ゴミどもがァァァッ!!!」
0086以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:13:11.011ID:dbDih/QT0
修道女(ありがとう……僧侶君、猟師さん!)
修道女「だあああっ!!!」
ギィンッ!
修道女「神よ、どうか私に力を!」
ギンッ! カキンッ! ギンッ!
首領「ぐっ、くそっ!」
首領(こいつ……! ここにきて力が増している!)
修道女「みんな、私に力をォ!」
ブオンッ!
ガァンッ!
首領「あっ……!」
修道女の一撃が、首領の斧を弾く。
0087以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:16:31.357ID:dbDih/QT0
修道女「だッ!!!」
ガシュッ!
首領「ぐはぁっ……!」
刃がクリーンヒット。血しぶきと共に首領が崩れ落ちた。
ドザァッ……
修道女「入った……!」
僧侶「やったァ!」
ワアァァァァァ……!
神父(見事……! これで我々の勝利――)
0088以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:19:40.116ID:dbDih/QT0
首領「…………」ムクッ
修道女「えっ!?」
首領「騎士時代の……プレートを……着込んでて助かった……」ハァーハァー…
首領「いい一撃だった……が、わずかに急所には届かず、だ……」ニヤ…
修道女「くっ!」
首領「だが、お前は俺を怒らせてしまった……これがどういうことか分かるな……?」
首領「遊びは終わりだッ! 全員、町になだれ込めッ! 罠だろうが矢だろうが突っ切って、突撃するんだッ!
尻ごみした奴は俺が頭を砕いてやるッ!!!」
ウオオオオオオオオッ!!!
なりふりかまわない最終号令がかかる。
僧侶「そ、そんな……」
盗賊「マジかよ……!」
町民「ちくしょう、こんなに頑張ったのに……」
0089以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:22:59.392ID:dbDih/QT0
修道女「私は諦めません! この町を守ってみせます!」ザッ
僧侶「修道女さん!」
猟師「俺もだ……最後の一矢まで射る」
「修道女ちゃんに続け!」 「諦めないぞ!」 「戦うんだ!」
首領「諦めようが諦めまいが、お前らは終わりなんだよォ!」
首領「皆殺しにしろォォォォォ!!!」
大量の足音が地響きとなって押し寄せる。
首領「ハーッハッハッハ! この手でやれなかったのは無念だが、“あの野郎”の娘の死にざまを見れる!
今夜は祝杯だァァ!」
0090以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:25:41.634ID:dbDih/QT0
盗賊「ん? この足音は……?」
ドドドド…
町長「なんだ?」
ドドドドドドド……
青年「あ、あれは……」
中年「騎士団だ!」
盗賊「本当だ! ありゃ騎士団じゃねえか!」
神父(やはり……来て下さいましたか!)
首領「な、なんだとォ!?」
0091以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:28:45.295ID:dbDih/QT0
ワァァァァ……! ワァァァァ……!
ドドドドド…
ザシュッ! ドシュッ! ザンッ!
「ぐえっ!」 「ぎゃっ!」 「ぐはぁっ!」
騎士団は瞬く間に、≪大蛇≫の盗賊たちを飲み込んでいく。
首領「騎士団……ということは、まさか!」
騎士団長「…………」パカラッ
首領「!」
騎士団長「やっと……会えたな。この十数年、長かった。ずっと貴様を捜していた!」
首領「く、くそっ……」
0092以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:31:11.618ID:dbDih/QT0
騎士団長「我が妻の仇! 覚悟しろ!」
首領「ほざけぇ! お前を殺したかったのは俺の方だァ!」
二人の斧が激突する。が――
ギィンッ!
騎士団長「盗賊などに身を落とし、腕も落ちたようだな……。
その上、負傷しているのでは、私の相手にはならん」
首領「う……ぐ! くそぉぉぉぉっ!」
騎士団長「ハァッ!!!」
ドシュッ!
首領「ぐおぁ……! ぢくじょ……」
盗賊団≪大蛇≫首領の命は潰えた。
0093以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:36:03.428ID:dbDih/QT0
頭を失った盗賊団は風前の灯。そして――
ワァァァ… ワァァァ…
騎士団長「君は……」
修道女「あなたは……」
修道女(この人の斧の振り方を一目見ただけで、すぐに分かった)
修道女(この人は、この人は私の――)
…………
……
0094以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:41:01.663ID:dbDih/QT0
― 教会 ―
神父「お久しぶりです。ようやく約束を果たしに来て下さいましたね」
騎士団長「長らく果たせず、かたじけない」
神父「私も彼女を預かった後、あなたについて調べました」
騎士団長「…………」
神父「かつて、あなたと盗賊団の首領は、共に騎士団に所属したライバル同士でした。
斧を武器とする者同士、切磋琢磨していた」
神父「やがて、二人は団長の座を争うようになる。
しかし、強さにおいても人望においても、あなたが彼を一歩リードしていた」
神父「それに焦った彼は、騎士にあるまじき行為に出てしまいます。
あなたの妻を人質に取り、団長の座を辞退させようとしたのです」
騎士団長「……あの日のことは今でも忘れない」
0095以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:43:29.332ID:eu9xnplia
人の嫌な記憶の再生ボタン押してやるなよ悪魔かこいつ
0096以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:43:36.562ID:dbDih/QT0
神父「あなたの妻は、騎士の妻に相応しく気丈でした。であるがゆえに……」
騎士団長「奴の手に落ちまいと抵抗した。そして……斧で斬り殺された」
神父「出産間近だったお腹の子だけは何とか守って……」
騎士団長「全ては明るみになり、奴は騎士団を逃亡した。その時、私の前に現れ――」
『お前の娘は生きてるらしいな? だったらこの手で必ず殺してやる! 必ずな!
約束してやる! ハーッハッハッハッハ!』
神父「恐ろしい執念です。もはや自分の手元に娘を置いてはおけぬと悟ったあなたは……
私に彼女を預けたんですね」
0097以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:46:36.052ID:dbDih/QT0
神父「その後、十数年、あの男は地下に潜っていましたが、ついに盗賊団≪大蛇≫の首領として動き出した」
騎士団長「元騎士だったことを生かし、ならず者どもを手なずけ、長らく訓練していたんだろうな。
いくつもの村や町が破壊された。まさしく大失態だ」
神父「私も、つい先日あなたから届いた手紙で知りました。
あなたが≪大蛇≫を追っており、首領が修道女さんの母を殺した男であると」
神父「まさか、その後この町がターゲットになるとは思いませんでしたが……
運命のイタズラというものを感じました」
騎士団長「よく町の人々で戦ってくれた。おかげで我らが追いつくことができた」
神父「町の皆が戦う勇気を得たのは、修道女さんのおかげですよ。
首領をあそこまで追い詰めたのも修道女さんです」
神父「つまり……この戦いは、父と娘で仇を討てたというわけですね」
騎士団長「…………」
0098以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:48:57.731ID:dbDih/QT0
修道女「失礼します」
神父「どうしました?」
修道女「あの……騎士団長さん」
騎士団長「なんだね?」
修道女「今日は町をお救い下さり、ありがとうございました」
騎士団長「なんの。騎士として当然の務めを果たしたまでだ」
修道女「それともう一つ。明日、私と勝負をしてくれませんか」
騎士団長「……いいだろう」
修道女「ありがとうございます」ペコッ
0099以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:52:05.514ID:dbDih/QT0
僧侶「神父様……」
神父「ん?」
僧侶「騎士団長さんって、修道女さんのお父さん、ですよね」
神父「ええ、そうですよ」
僧侶「ということは、修道女さんはもうこの教会を……」
神父「…………」
神父「彼女がどのような決断をしたとしても、私たちは温かく見守ってあげましょう」
僧侶「はい……」
0100以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:55:30.974ID:dbDih/QT0
翌日――
庭で斧を構える二人。
修道女「…………」
騎士団長「…………」
修道女「挑戦を受けて下さってありがとうございます」
騎士団長「いかなる挑戦からも逃げないのが、騎士の務めなのでな」
修道女「神よ、斧を振るうことをお許し下さい」
騎士団長「来なさい」
僧侶「二人はどうしてこんなことを……!」
神父「必要なことなのですよ。私たちは見届け人になりましょう」
0101以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 00:58:24.400ID:dbDih/QT0
修道女「行きます!」
ガキンッ!
騎士団長「いい一撃だ!」ビリビリ…
修道女「どんどん参ります!」
キンッ! ギンッ! ガキンッ! ガィンッ!
僧侶「どっちも速い! 衝撃がここまで伝わってくる!」
神父「ええ、武術は詳しくありませんが、凄まじい攻防です」
0102以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 01:00:51.090ID:dbDih/QT0
騎士団長「思い切り打ち込んでこい!」サッ
修道女「だああっ!」
ガァンッ!
騎士団長「いいぞッ!」
修道女「もういっちょ打ち込みます!」
ガギィンッ!
僧侶「なんだか……まるで、親子で遊んでるみたいですね。キャッチボールのような……」
神父「おっしゃる通りですね、僧侶君」
神父(そう。二人は十数年を取り戻そうとしている。斧を通じて……)
0103以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 01:02:25.998ID:+mSl9Y1Br
豪快なキャッチボールだ
0104以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 01:03:37.159ID:dbDih/QT0
騎士団長「やるな」
修道女「いえ、とても敵いません」
騎士団長「私が君ぐらいの時には、斧に振り回されていた。それを考えると大したものだ」
修道女「ありがとうございます」
修道女「それで……騎士団長様にお伝えしたいことがあります」
騎士団長「なんだろうか」
修道女「私の父は神父様、弟は僧侶君です。私はこれからも、教会で暮らしていきたいと思っています」
騎士団長「…………」
騎士団長「ああ、そうした方がいい。これからもどうか元気でいて欲しい」
修道女「はい」
僧侶「修道女さん……」
神父「…………」
0105以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 01:07:01.310ID:dbDih/QT0
修道女「お帰りになられるのですね?」
騎士団長「うむ、次の任務もあるのでな」
修道女「では、またお会いしましょう……お父様」
騎士団長「! ……私を父と?」
修道女「はい」
騎士団長「しかし、さっき……」
修道女「神父様もお父様、あなたもお父様、何か問題があるでしょうか。私は全く問題ありません」
騎士団長「……ありがとう」
僧侶「よかった……」
神父(そう……それでいいのですよ。私にもあなたを譲りたくない気持ちはありますが、
あなた方は紛れもない親子なのですから)
0106以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 01:09:01.649ID:dbDih/QT0
……
神父「とても強くとても優しい、いいお父さんでしたね」
修道女「はい!」
神父「疲れたでしょう。それではご飯にしましょうか」
修道女「はい! たくさん食べます!」
僧侶「ボクも負けませんよ!」
修道女「よーし、どっちが多く食べられるか勝負ね!」
神父「ふふっ、たくさん用意しなければなりませんね」
…………
……
0107以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 01:12:11.668ID:dbDih/QT0
― 町 ―
修道女「ではアックスショーを行います!」
修道女「それっ、えいっ!」
ビュオオオオン! ギュルルルルルッ!
僧侶「すごいすごい!」
町民「いいぞー!」
猟師「もう俺じゃ絶対勝てないな……」
盗賊「もう? 元々勝ってなかったくせに」
猟師「うるさい!」
子供「すごーい!」キャッキャッ
町の英雄となった修道女であったが、生活は以前のままであった。
0108以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 01:14:45.538ID:dbDih/QT0
修道女「あー、楽しかった。さ、帰ろう!」
僧侶「はい!」
手を握って教会に帰る二人。
盗賊「ああやって仲良く歩いてる姿は、本当の姉弟みたいだな」
子供「え、そう? ぼくにはまるで仲のいいカップルに……」
盗賊「ほう、お前はそう見るか。だが、どういう仲に落ちつくにせよ、
あの二人はきっと人々のためになるコンビになるに違いないな」
子供「そうだね!」
0109以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 01:17:26.420ID:dbDih/QT0
― 教会 ―
神父「今日も一日が終わりました。それでは神に感謝しつつ、夕食をいただきましょう。いただきます」
修道女「いただきます」
僧侶「いただきます」
神父「さて、食事の最中なのですが、お二人に話があります」
修道女「なんでしょう、神父様?」
神父「今度、王国首都の大きな教会に用事があるので、よかったら一緒に行きませんか」
二人「!!!」
0110以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 01:20:26.902ID:dbDih/QT0
修道女「行きます!」
僧侶「ぜひお供させて下さい!」
神父「滅多に行く機会がありませんからね。是非二人も、と思ったのです。
その時、騎士団のところにも寄れる時間を作りますよ」
修道女「ありがとうございます、神父様」
修道女「初めての首都。楽しみだね、僧侶君!」
僧侶「はい!」
― おわり ―
0111以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 01:20:53.904ID:dbDih/QT0
以上で完結です
ありがとうございました
0112以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします2021/12/16(木) 01:35:23.565ID:+mSl9Y1Br
乙
斧が活躍してくれて嬉しい