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(’-’*川アタマイイヒトッテナンダカンダデステキデスヨネ🍹ショウセツカイテミタオ🐰オクレテスミマセン♪
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2021/12/14(火) 23:31:51.324ID:/9sRQ/Kd0
復讐に燃える勇者は暗闇に向き合うと、敵味方の攻撃のやや収まった瞬間の中にどうしてもたまらず仲間に呼びかけると、悩ましい女の声がそこかしこで無事を伝えて返しました。
「ありがとうございます、勇者さま。大丈夫です」
「今だ、後方に退け。ここは任せておけ」
勇者はひとりの女の子の幻影を胸に抱きながら力を振り絞ると途端に敵を圧倒し案の定あらかた始末してしまいました。そうしてようやく味方が激しい攻撃を終えると、何となく愉快になった周りの雰囲気に気付きました。何とも折り合いが悪い仲間のいたずらっ子のような酔っ払いの一行ももう最後には笑いながら誰からともなくありのままの姿となって軽はずみなじゃれあいのような、慰め合いのような、そこからほとんど果てない宴となっていました。愚かしい事です。目の前には頭を振って誰ひとりの存在も目も忘れてしまったような顔つきでひとりの女盗賊が活き活きと誘う目で全てをさらけ出して踊ります。あたりの柳の木は一切大きく垂れ下がり、柳と柳の間からは灰色の空まで石畳の不思議な道がほのかに魔光を放ってそのまま一筋のびているような美しい、でもどこか悲しげな人けのない小屋一つない場所です。チラリホラリ、小さなドラゴンが舌を出したような不思議な花が咲くまだ肌寒い、ほとんど冬の日の夕暮れでした。
勇者は雰囲気に少し圧倒されながらも、妙に頭脳だけ戦いに酔ってしまっているのを自覚すると、ゆっくりやっと少しずつ知らず知らずどうやらようやく落ち着きを感じられました。あらゆる狂ったような心得たような無上の陶酔。多くの笑い声が上がりそれがさらにそれはあふれるよう。勇者は自分をもとめるらしき幾人かの女の子に少し迷惑なような顔であしらうとその両手はもちろん、全身には浴びた敵のぞくぞくするような大量の返り血に気づき、勇者はそこから逃げるようにそそくさとひとり離れ川へと急ぎました。遠い天いく現実のドラゴンを高く静かに見送りながら、あらかたその血を洗い流すと竜の羽ばたきにはあわれにも見ればダメージが痛々しく、悠久の命からがらという様相。勇者は少し胸が空きました。
世にも平和な瞬間。心の中の嵐のけたたましい振る舞いは既に音をたてて破られて、斧持つ鬼、鉾持てる夜叉、剣持つ穢れ知らぬ武人もなんとなく、みながみなに小さくしのがれ心は常に固められ、今はその強い覚悟をもって命をかけたこの無慈悲な旅程の先にも必ずや彼らのすべての光明がめでたく疑いなく信じられ、呪文も念仏も良心もいらないままいつの間にやら仲間たちはいかにも自然今すべてみなぎる力と知恵をもって生まれたままの姿となってたがいにやさしく時に涙しほほ笑み合い、汚らしくも温かく讃えあっているようでした。
天下は我らのものなるぞ、という勇気。
恐ろしい日の光りをも嘲笑うドラゴンすらなお暮れかけた紫の空にただそのまま行きちがうも然し自然ながらその二頭のそれぞれに憤怒の牙と痛々しい、しゃにむの悲しい眷属とともどうしようもない黒雲の影をのみ目指すような。美しい不思議な色彩の空は盾も貫く戦場では頼もしい仲間そのすべてみな慶び祝うような愉快爽快な気分。にわかに激しく胸に高まる大和魂、悪意猛り狂うこの世にさらに極まるよう。
異世界_____
「ボクはついに異世界に勇者の名をあげるよ。君は今どこで何をしている? ボクのことを少しは覚えているだろう」
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2021/12/14(火) 23:32:21.905ID:/9sRQ/Kd0
勇者はようやく水浴びを終えてしまうと少々暗い階段を上って陶酔気味に、でも自信に満ちた表情で往来の女性たちに挨拶をしてこまごまと旅の準備の話をしました。勇者は胸にある女性を描いてしまうと恐ろしいような弱り切るようなちょっとした命の危険を感じるような複雑な心に包まれると、それでもまたボロボロになったような平静を装って明日にも知れぬ互いの命を思うように親愛の情を交わしたりもしました。すると数人の女の子たちが不思議と上機嫌に勇者を囲み、ついには悦びに満ちたような上手とは言えない歌を歌いだしました。その妙に熱っぽい様子に驚いているとそれが周りにも伝染し、皆が皆笑顔となって歌いだすのでした。勇者は迷惑そうな顔を作って愛嬌のような素振りで胡麻化しながらとうとう要約の思いでその騒ぎから離れました。
そのとき、どうしたわけかただ過去に振られてしまった彼女のつんと澄ました露な肌を思って、鍛え上げられた身体にオイルのような生気がいつの間にかみなぎるのを感じました。もしかしたらこれは悪魔の力なのではないのか、勇者はそう思いながら。何もかも悟りきった悲し気な青ざめた笑顔とともに、もうすぐに疲れてしまって更に川辺に歩を進めました。勇者の心には改めて妙な悲しさと妙な悲しさが。様々な幼馴染の女の子の天使のような愛しい姿が波のように心に押し寄せ悩ませるのでした。まるで眠りかけた小さな子の目を覚ますよう。
「ああ…この悲しみを何に例えるべきだろう」
冷たい夜風の合間、神さまにお祈りするような心にとげのようなものがまた感じられ、自然に勇者は一人声を落としました。
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2021/12/14(火) 23:33:23.085ID:/9sRQ/Kd0
勇者は慎重に振り向いてだれともなく、力勝るはずの自分が他の無茶苦茶なくだらない者達にまたどう思われるか、たまるものか、そう思いながらその場の岩にどっかり腰を下ろしました。見ればまだ身体の水が乾ききらず、点々と後に雫が跡を残しています。今更ながらそれに気づくと、非常に間の悪い気がして慣れたようなぼんやりとした後悔に染まっていく心をそのままにしました。その時流石に寒さがしてか、全身をさすっていると自分の股間に残った汚れに面食らって落ち着きを失い、でもちょうど誰も周りにいないのを確かめてしまうと不意に、ふと少しの間慰めをしてしまうのでした。残像のような未練の女性にいろいろと考えめぐらせて想像力の動きにどぎまぎとしながらさらに自分自身をしばらく慰めてしまうのでした。そして改めて命がけの旅の前にかしこまる思い。本当の痛み、そして限界を再三超える肉体のもたらす奇跡、神妙さ、命そのものが高める魂の行くへ、その神掛かる兆候にひとり気構えるのでした。勇者は仲間のもとへ戻りました。
『勇者様、あれを御覧ください。みなあなた様を讃えておるのですぞ!』
すれ違う真面目くさった中年の仲間がうれしげに話しかけてるのに顔がこわばってしまいました。すると間もなく、そこから遠くに見える張られたばかりのテントの中から一人の退廃的な若い女性が、そんな勇者にまっすぐ静かに近づいてくるのでした。愚かにも、この世のあらゆるものが堕落してしまうことをこの上なく上手に証明するかのような眉毛の長い中性的で小悪魔的姿の女性でした。
勇者は身動きもせず、魅入られたようにするとすぐに恥ずかしさを感じ、フッと噴き出すような笑いをしました。はじめてするような笑いでした。
「え?」
女性ははやや恥ずかしそうに尋ねました。
「ご、ごめんなさい。とてもかわいいから…」
勇者は口先だけとっさに取り繕う自分に嫌気を感じましたが、それからその言葉の真意をさとられまいとするような小さな愚かな罪悪感が自分の打ち破りがたい貞操観念というらしきものに対して悪魔が蹴散らすような乱暴な不思議な心の働きをわざと何気なく放っておきました。襲われる村を見殺すような。勇者はそれからおずおずと気を取り直そうとしました。何かしらしきりに考えようとはしましたが彼女の成熟した女の唇を前に、やがて深く弱弱しい妙な溜息を一つ漏らすと素直に恥ずかしそうにはにかんでほほえみました。
女はなぜかもうはきわめて興奮していて、その目は勇者を見ているような見ていないような、とんでもない遠い未来を見ているような。そして女性は男性的な性格をしているのかキビキビとした態度が時々思いもよらないような極端な動きの踊りを大胆に美しく見せ舞うのでした。勇者は押さえつけてきた悪魔のような欲望を少しは解放してやりたいような、神さまにたいして物申したい気持ちになってきてしまってゆっくりと、ぼんやりたしかに自分の頭がしびれてくるのを感じました。
女はそのまま軽やかな肢体を風に舞わせて、透き通るような肌の思案気味で華奢な細身の身体に揺れる乳房をさらして恥ずかしさのためか少し上目遣いをして勇者を見つめます。その美しい拒むものも欠くところひとつないひどく甘美な官能色が、不覚も間違いもない鍛え抜かれた身体の勇者の目に心底震える新しい生きがいに化け変わりその体を稲妻のようにその芯から貫いてしまいます。
そして勇者は自分の欲望をはるかに超越する変に明るい、朗らかで開放的な女の所作に驚いているような恐れを感じるような妙な間に自然自然と自制心を吹き飛ばされていくのでした。ついに防具のその重みにふと腹が立つような突然の興奮に我を忘れると同時に、この上はのぼりつめた舞台の上で震えるような恥の息はきっと睨んで抑え込むも一つしぐさの揺らぎのうちに、たちまちこれまた生まれたばかりの姿でその肉体に棲む大気の縺れを祓おうという素敵にばかばかしい気配となったのでした。ぞっとするほどピンクに光るようなあたたかい蒸気が頬から天を望むのに、一層欲情が煽り立てられて最後の理性を蹴散らしました。
0004jc!ダオ
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2021/12/14(火) 23:33:31.056ID:/9sRQ/Kd0
『乾杯!』
その時どこかで上がるめでたい声。勇者は突き刺すような正気をやっと取り戻すと、案の定妙に臆病な心の常として、例によって結果を予想していろいろと思いまどいいうまでもなくもう何をすべきか全くわからなくなるのでした。今は心が胸を焦がすのを自覚するしかありません。そうしてその恋がだんだんと膨張してくると、今更のようについに破裂するしかありません。これからどうなるのか、勇者にはさっぱり予想ができなくなってしまいました。
この女性にボクは恋をしてしまったんじゃないだろうか?
それがまためでたく顔が真っ赤になるようなうれしいような悲しいような何の理由もなく喪失感を伴うような恥ずかしい気持ちで、またどこかすえ恐ろしいく心が重く、孤独でつめたい胸の苦しみをしばらく感じました。
急に大胆に再び恋を告白してしまおうとあえぐように何かささやく一人の女を目の前に見つめてしまうとついには勇者は思考が一切役に立たなくなるのでした。どうにもこうにも仕方なくなっていると、その時なにやら不思議な、とてつもなく大きな音ともに本当においしそうな肉の焼けるような一種異様な匂いがしました。少女はその煙をかわいらしい女の仕草でその空気をおなかいっぱいに一度吸いこんでしまってためらいがちに微笑むと、気味の悪いほど美しいその若い青白い肉体の赴くままにちょっと伏し目がちに、やがてぼうっとした気になってしきりに強く何か興奮の渦中に夜通しその目が暗く光るような、頬がげっそりとして女らしい乳房だけが成熟を繰り返していくような、木陰で震える小動物のようないつにない衝動が身体中に広がるのに任せてしまいました。あたりは晴れやかな、でも一種異様な緊張感に包まれています。
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2021/12/14(火) 23:33:55.367ID:/9sRQ/Kd0
微笑む潤んだ舌をみせる女の軽やかなその動きの耐えがたいような煽り立てられる瞬間瞬間に、意識に華やぐような不思議なもやもやした霧。でもその時錯覚か偶然か、彼女の眼の奥にわずかに魔物のもつような、洞穴にほの光る妖しい鉱物のような特殊な光が宿ってみえて勇者はついに何度も何度もそれをことごとく確かめようとせざるを得ず、それはとてもむつかしかったのですが、調べているうちにやはりどことなくみるみるとその牙が伸びてくるのを見て確かめてしまうとたちまちそこから飛びのかざるを得ませんでした。同時にとてつもない恥ずかしい思いと激しい鼓動とともに、静かに勇者はたちまち赤黒く変化していく少女を引き離して他でもないどうすることもできない狂気の事態をようやく理解しました。
「しまった!」
周りを見回します。勇者は驚きました。すでに攻撃部隊の男たちにはその壊滅的宴が蔓延し、補給部隊の女たちも元気にその快楽の匂いにあっけなくからめとられつつあります。
輪郭の鋭く変わりつつある目の前の一人の女。だらしなく開かれたその口にしばしば脅威を感じる白い牙は、その灰色の肌にぼろぼろとほとんど何かがはがれていく身体から緊張した表情で何かを必死にもっと生きたいもっと生きたいというような訴えをして諦めきれずこちらを眺めている魂を映すようでした。勇者は硬直して女から離れると尚もすがりつく彼女の無心な呼吸と毛髪の抜け始めてしまった哀れな姿に勇者は息を殺し、どうしてもとうとうその頭を一息に打ち砕いてしまいました。勇者の手は震えました。無数の返り血が再び防具に散りばめられました。きっと終わりなのだと思うと不思議でたまりませんでした。その間他のことをようやく考えめぐらせながらも、もはや心に薄っすら覚悟をきめて、なぜか恥ずかしさとともに記憶によみがえった片思いの女の子の言葉。それがおのれのことながら底知れない湧き上がる不思議な動揺と同時に、乱暴に魂を底からさらされてしまったような総毛立つとても激しい恥ずかしさでした。
「それではあなたとは付き合えません。あなたの彼女にはなれません。ごめんなさい」
0006jc!ダオ
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2021/12/14(火) 23:40:59.844ID:/9sRQ/Kd0
悲劇的なため息をすると、勇者は急に涙ぐましいような人殺しのような熱くって氷のように固い石のような感情が消しても消してもまだ意地悪につぎつぎあらわれては消え、振り返ると意外にもしみじみ死の恐怖こそがその意思の闇の中から発見されてしまうのでした。 
「君は今何をしてるの? その悪魔の支配するようなめちゃくちゃな世界の中で。ボクはもう、君にふさわしくはなれないんだ…」
再びの汚れて頽れる死のイメージとともに、悲しくも純良な笑顔できれいに陽の光に泳がせた髪の毛とともに背を向けて行ってしまう女の子の輝く姿を思いました。今は石のように動かなくなった命が、かえって悲し気で孤独な彼女のものぐるしい恋の眼を再び思い返させて心が立ち上がって苦しくなりました。彼女なしには生きられないという永久の心。首の付け根まで赤くなる底知れない白白とした、ひとつの罪悪感でした。勇者は人知れず震えるのでした。
「ボクはおそらく、いつでも君を追いかけていた、君だけを。君がもし、もし…、もし…」
勇者は動悸が止まりませんでした。
残忍な心が胸に湧き上がっていました。すべての事が首尾良く罠に人を導く誘惑の種に見えて今更ながらむしゃくしゃとしました。勇者はそれからどんな事をしたかよく分からなくなりました。それは一つの不幸な恋が叢雲から月が現れ闇夜を払うように勇者の心をすっかりと現実へと放した瞬間でした。

「はっはっはっはっは…」  
無慈悲な心とともにわけのわからない何とも言えない彼女から離れた後の不思議な転落を思っていました。そこで大事なものをはっきり壊して落として無くさぬよう神さまに隔離され苦しみ浸けられ鍛えられているような自分のこれまでの人生に気づいて、もう一度冷静に自分を見つめなおしました。恥ずかしくなってきました。勇者は暗い気持ちになると、麻酔がかかったようにいとしい彼女の記憶がもやもやとだんだんと無くなっていくのに気付きました。そうした喪失が改めて心にありありとなって、勇者はそれから今更のようにまたグルグルと何か嵐のようなものが魂をひしひししたたか揺さぶるのですが半分頭が壊れているのか、効果的にはご利益ありません。勇者は再び立ち上がりました。静かに、命を川面のそこから蘇らせる天使のように。
0007jc!ダオ
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2021/12/14(火) 23:41:39.442ID:/9sRQ/Kd0
『ああ…!』
いつのまにか体を合せ始めた男女が遠くに見えました。ともに言葉なく、さらりとすぐに下半身の隙間のあらぬ気の渦に魂すべてを委ね、傍目にも鼓動が一気に高まるようです。その周りにもいつものように誠意のない会話と悪い不正直な残念な空気のままいつのまにやら収奪をはじめある者は巻き込まれ、笑い合い、また取り立てて言えば傍目にも必然下半身のうずきだけは愛想も未練もなく強いわけのわからないありがたい幸福感をむなしく脳と全身に漲らせます。そしてそのうたかたの幸福のような時間を過ぎれば必ず絶望の悲鳴と絶叫があがるはずでした。また強姦のような様相のはるかの二人に勇者は自分と彼女を重ねてしまうと少しあさましく、酷くまた新鮮で心地よい気持ちに誘惑されるのでした。勇者はたちまち怒り声を上げました。二人の魔物の兆候を確かめるや今やその頭を一撃のうちにむごたらしく切り落してしまいます。勇者は、その時心に残った得体のしれない、つややかな小さな新しい思いが残るのをはっきりと感じ恐ろしくなりました。そしてその心を憎みました。
勇者は少しの溜息の後、そこでなぜか再び雄叫びを上げました。そうして勇者はうつむいて目を閉じると少し瞑想をしました。苦々しくも何か、記憶のどこか十分に突き止めた気がせず、あと千回はこれを繰り返そうというこの悪の闇から忌々し気に現実のほうへと立ち戻りました。遠巻きの男や女たちの自分を見る眼差しに自然気にかかる新鮮で刺激的な暗示、熱くめでたくその心を震わせますが勇者はそれに風変わりな怒り声を上げました。狂ったような呪いのような全身の神経の高ぶり、それからあんまり夢中になって走っているうちにいつの間にやら底知れない喪失感がむずむずと体を支配してこの世界から一刻も早く抜け出したくなります。
「どうすればいいのか考えた。それすらも飽きるくらいに。もう、破壊しつくしてやる。破壊しつくすか、ボクが死ぬかだ!」
身震いするような甘い解放感が勇者を満たしました。そこに乳房をさらして逃げ惑う女。勇者はそれに憎むような、乾くような、血がにじむような目をしてその魔物化の兆候を見出そうと懸命になりました。もはやだれもが逃走していました。弱り切っているまともな人間のメンバーも一人、二人と魔物と化したかつての仲間たちの毒牙にかかって死んでしまいます。勇者は奇妙な冷たい笑みをその頬に浮かべながら一人ぼんやり何かこの喧騒からただただ何かを取り戻そうというよくわからない欲望にとらわれ、そんなうちにずっと暴れまわって容赦なく、つぎつぎ仲間たちの変わり果てた姿を血しぶきをあげて残忍に切り殺し続けました。その夜、勇者の荒々しい肉体は震えた溜息をひとつ吐くと限界を超えて、疲れ切っていつのまにかついに闘い続けることを放棄してしまいました。なんともいえない生々しい不安にとらわれると勇者はぴったり、そこで息を殺してすっと飛び出し藪のなかにただひとり、たまらない残忍な解放感と現実への郷愁に浸りました。そこに今まで一度も聞いたことのなかったようなみずみずしい青年の澄んだ声が聞こえてきました。悲鳴と怒声、魔物の雄たけびがあたりにはあふれていました。
「すみません、すみません。あなたは127ゴロッケさんですか?」
勇者はその時、透き通ったような笑い声を吹き出してしまいました。
「はっはっはっはっは…」
投げ出すようにそこにそのまま座り込んでしまうと、自分の記憶にある一人のにっこりとしたそれでいて悲し気な幼い女の子のわずかな記憶は本当に自分のものであったであろうか、などと考えてしまいました。。それほどにどうみてもほぼ同一人物、その好きな人自身に似たキャラクターなのでした。唖然として再び、その姿と相対しました。しかもそうした私とどう考えても全く同じ表情をするその少女に、そのうち静かに幸福を感じながら。でもその人は、確かにその彼女ではないのでした。
「悪人め、下種め、馬鹿ゲームメーカーめ、まぬけなこんなゲーム早く発禁されてしまえ…」
そう小さくつぶやいたのは最後の必死の抵抗であったかもしれません。うっとり月の光をうつす泥水に目を移すと、そこに口紅のついた煙草の吸殻が一つ。まるでピカピカと光を放つ何か神さまの目覚ましのよう。
人はなぜ、いつのまにやら恋につられて明け暮れて、やつれて疲れ泥だらけになり取戻し、死ぬまで狂って走り続けるのでしょう?
0008jc!ダオ
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2021/12/14(火) 23:42:28.510ID:/9sRQ/Kd0
勇者と魔術師はぜえぜえしながらそのあと誰にも知られぬまま柳林を抜けて、再びの藪を勇猛につっきって、こんどはぬかるんだ道を何分か走って歩いて突き当ってしまいました。もう二人でいつ死んでもいいという幸福な開放感でした。この異世界に何の未練も穢れもないという感じ。するとそこに一台の新しい小さな自動車が不思議と木に衝突した形で事故をしてしまったのかひっそりなぜか止まっています。中には男女が二人。
何だろうか?
わたしにもさっぱり分からないわ。
勇者たちは立ち止まりました。その懐かしいしかし相容れないはずの光景が愚かしくも戦慄の中にその豊かな経験値のなかにだいたいの一閃の攻略をひらめかせそのうちゆっくり接近を試みました。間違いなく、二人は少しどぎまぎしていますが頑張ります。そしてなにやらその車の窓が少しあいていて、次第に中の男女の肉声と金属的な猛烈に朗らかなラジオの声が勝手に耳に入ってきます。そのラジオの声に、勇者たちは同時にごくりと唾を飲み込むと、ようやく今完全に正気を取り戻し二人同じく頬をピクピクさせました。
「無意味な仕事なんてどうでもいいさ。ただ君だけがボクを束縛してほしいんだ。この世の悪魔の誘惑を遠ざけていてくれ。世界に唯一、ぼくを支えていてくれ、どんな時も。ああ、そして君はなんて美しい眼をしているんだ…」
「わたしはこれでもいくらでも浮気できるのよ?」
「…ああ、いっそぼくを殺してからそうすればいい、いいかい?」
しばらく見つめあう二人。
「いいよ」
どうしたことか、やがていじわるく見つめあって二人は楽しく笑い合いました。そこにラジオが不思議に口をさしはさみます。 
『すばらしいですね。でもこの人たち死んだらどれだけ人助けになるかしれない』
笑い声が起きました。
「私、キスしたいんだけど…」
「おまえ無茶苦茶なことを…。子供が見てる、あ見てるぞ、警察見てる、お見てる、ん?! んおっ!? またコスプレかw」
「子供ね…」

おわり
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