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某国の王女オルテンシアは、日頃より長姉アイビーの如き風格を欲していた。「我に足りぬもの、即ち妹なり」オルテンシアはそう思い立つと、義姉妹の契りを結ぶため城下へ向かう。
道ゆく若き娘たちへ申し出るも、彼女らは王女の身分を畏れ、丁重に断るばかり。
その折、蝶々を追う幼子がやってきた。その名はファたそ。愛らしきその姿に見惚れたオルテンシアは、義妹となるよう求め、頭を垂れた。ファたそ曰く、「然るに、余が姉、汝が妹なり。余は幾百年を生きる竜なれば、すべての娘は我が妹に同じ」と。
オルテンシアは驚き、先より一層頭を下げ、己の無礼を詫びた。ファたそは答えて曰く、「汝は義姉妹なれば、余の情は相応に深し。なぜ無礼などと思おうか」と。
ファたそは義妹の頭を撫で、オルテンシアは伏せたまま涙を流した。これが、のちに「三顧の礼」と呼ばれる逸話である。