研究グループは、目からの情報と身体のバランス情報が矛盾する以前に、脳での視運動情報の処理自体に何らかの異変が生じている可能性があると考え、視運動を処理する脳部位である「MT+野」(Middle Temporal complex)に着目した。MT+野は左脳と右脳両方にあるが、左右差が報告されており、映像酔いで左右どちらかに異変が生じ、それが酔いの原因の一端となっている可能性がある──との仮説を立てた。

MT+の脳活動のの左右脳間の相関に及ぼす映像酔いの効果
 仮説を検証するため、映像酔いを起こしやすい動画と起こしにくい動画を被験者14人に見てもらい、脳活動の波形が左右でどのくらい違うのかをfMRIで調べた。その結果、酔いやすい動画を見ているとき、実際に酔った人たちのMT+野では、左脳と右脳で活動が乖離することが判明した。