わたくしは猫さんなのですぅ 名前はまだありません
 どこで生れたかなんて、とんと見当もつきません
それでも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶しています
で、わたくしはここで始めて人間というものを見たのですよっ
しかも、あとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪な……要するに、凶悪で強い感じの生き物だったそうなのですぅ
この、書生というのは時々わたくしたちを捕まえて煮にて食うとか申します
しかし、その当時は何という考えもなかったから、別段恐しいとも思いませんでした
ただ彼の掌に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかり……なのですぅ