伊織よ、斬り斬られ、
殺戮、殺戮、殺戮、殺戮。
殺し殺し殺され斬られるの──────辛いものだ。
─────お前は武人の華に、夢を見過ぎた。

そんなものは戯作、戦記談義、
草子、物語、御伽話の中にしかないんだ。

痛い、痛い痛い痛い痛い。
苦しい、苦しい苦しい苦しい苦しい。
生きたい、生きたい生きたい生きたい。

…………人の望みなど、畢竟其れに尽きる。

お前は、知らない。

お前は、戦を知らない。
お前は、血潮の地獄に傷つかずに生きてきた。
あの、紅蓮の恐怖。絶望。殺戮。
そして、光……。

この世に顕現した地獄を知らずに、
只焦がれていただけなんだ

──────だから、
「剣の道など、もう捨てろ」妻を娶り。
子を成し。老いて、生涯を全うする事。

其れが、師匠としてお前に残してやれる、ただ一つの処世術だ。