一般にはその国の都会は田舎を搾取する構図で成り立っているものだ。しかし日本は世界的にみて唯一「田舎が東京を搾取している」社会である。東京23区だけで1000万人が在住し、首都圏では国民の3人に1人が暮らしているにもかかわらず、田舎に支配されているという事実に気づいていないのだ。

代表は政治だ。戦後の歴代政権で東京出身の首相はたった2人しかいない。首都は東京にあるのに、政治に東京人の意思は反映され続けることなく、支配者は常に田舎出身だったのだ。
「政権のほとんどを担い続ける自民党は田中角栄元首相に代表される「農村票」政党で、大物政治家の地盤は田舎です。東京政府が首都に集まった富を田舎に利益誘導する政治モデルは首尾一貫しています。野党だって小沢一郎の岩手のように「民主党王国」は田舎県しかありませんでした」(政治ウォッチャー)
結果、たとえば大物政治家の地盤を筆頭に、人口が少なく今後も減るしかない田舎県にばかり高速道路やバイパス道路が過剰に整備され続け、人口が多い東京の交通混雑解消は後回しにされてきた。田舎は結果的に「一人一台」の過剰なクルマ社会になっている。代わりに鉄道は衰退したが、その赤字ローカル線にも税金が投入されてゾンビのように生かされ続け、新幹線も整備される。都会の通勤電車はいくら混んでいても駅ホームを広げるとか新線建設の取り組みは一切なされない。東京の交通地獄は、田舎の交通天国優先で放置されているといってもいいいのだ。
「東京には戦前から解消しない開かずの踏切がいくらでもあり、救急車の到達遅れなど命の問題もありますが、用地買収などの高額な「財源」の必要性を理由に解決しません。しかし、広大な面積に全県あわせて1000万人が暮らす九州地方の交通整備がもし全部凍結されていれば、同じ人口規模ながら範囲の狭い東京都内の交通は今より大幅に改善できており、受益者も大勢いたことでしょう」(道路愛好家)
日本では海外のような公平な民主主義も機能していない。「一票の格差」と呼ばれる田舎の有権者の票が優先されるシステムが解消されぬまま継続していて、「地方交付税」という東京の住民や企業の納めた税金が東京と無縁の田舎県に分配され、東京人はびた一文貰えない歪んだシステムもある。しかしこれらが問題であることに都民さえ気づいていない。与党も野党も田舎が地盤の政治家依存で成り立っているので、問題提起をしないからだ。