【マギレコ】VIPでマギアレコード
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七海やちよの正直すぎる食レポ
今は過去の話となった、ある昼下がりの午後のこと。
その日、七海やちよは一時間枠番組に、グルメレポーターとして出演していた。
当時、芸能界デビューして間もなかった彼女は、まだ助演としての活動が多く、
ドラマに出演する傍ら、コメンテーター等の仕事も増えるようになっていた。
情報番組に出演して共演者と語り合うこともあれば、モデルとして所属していた雑誌社から
CMのオファーを受けたりもしたが、食レポの仕事を受けることになった。やちよが食レポを
初めて行った現場は、参京区に佇む中華屋だった。魔法少女としても母校の生徒としても
後輩である、由比鶴乃が店主を継いだ店、中華万々歳。仲間に忖度しないリポを務めようと、
やちよは意気込んでいた。
『リポーターの七海さぁん』
「初めまして。新設されたこのコーナーを今日から担当する七海やちよと申します」
『七海さんは、食リポは初めてだそうですね?』
「えぇ。そんな私が本日訪れたのは、参京区で最も有名な中華屋、中華万々歳です」
『視聴者の情報によると、七海さんとお店の店主さんは、十年来の友人だとか』
「はい。母校の後輩でもあります。でも、だからと言って甘い評価はしません」
『それはお厳しい。中華万々歳の外観は、どんな感じですかぁ?』
「一目見て歴史の長さが伝わる店構えだわ。0がまだつかない頃の電話番号を、
実物の看板で見れる。ノスタルジーを感じる方もいるのではないでしょうか」
『それは希少ですねぇ。店内の雰囲気はどうですかぁ』 「なんというか、全体的に飲食店で匂ってはいけない臭いが充満しているわね。
飲食店とは思えない不潔さだわ。鶴乃、あなたちゃんと掃除してるの?」
「ひっどいなぁ、ちゃん掃除してるよ!」
『な、七海さぁん、あの…もう少し柔らかい言い回しを…ね?』
「全体的に古臭くてカビ臭くて、清掃が行き届いていない雰囲気ね」
『古風な雰囲気といったところでしょうか…ね?』
「カメラさん、あの隅のところ映して。蜘蛛の巣が張ってるじゃない」
『カメラさん、撮らなくていいですからね?』
「あの蜘蛛は益虫として飼っているんです!お客さんも知っています!」
「飲食店としてどうなのよ」
『七海さん、これ本番生放送ですよ?ところで、お客様はどういった様子ですかぁ?』
「お客さんがたくさん入っていて、人気のほどがうかがえるわ」
『それはいいですねぇ。お客様はどんな感じですか?』
「全体的に若い人が多いわね。ガラが悪くて、食べ方が汚いというか、店内を漂う異臭は、
道の排水溝の近くを通りかかった時のような臭いというか、下水のような臭いがするわ。
豚骨だってもっとマシな臭いよ。底辺ってこういうことを言うのかしら」
『七海さん!あれ?こっちの声、七海さんに届いてる?七海さんちょっと、これヤバイよ?
ま、まぁ……誰でも気兼ねなく入れるフレンドリーなお店、といったところでしょうか』
「ビール一杯が百円という安さしかない店の、一押しのメニューがこれ」
”ランチタイム限定の中華万々歳スペシャル”
「これは私が店主になったとき、考案したメニューなんだよ」 味全3Tのアビリティってその子が死んでも他のメンバーに効き続けるんだっけ? 『おいしそうですねぇ。ラーメン、半チャーハン、ミニ餃子ですか』
「まるで、どこかのチェーン店のパクリみたいなメニューね。麺を一口啜ると、
いかにも業務用スープを使っているという点までそっくり。老舗の割に麺も
スープも手作りではないなんて期待外れね」
「スープはちゃんとお店で作ってるよ!」
「先代の店主で店が落ちぶれた理由が分かるというものね」
『おっかしいなぁ、こっちの音が届いてない気がするなぁ。誰か七海さん止めて』
「チャーハンは油がまとわりついて、残飯を食べている気分ね。スープは味が薄くて
お湯を呑んでる方がマシなくらい。後味も悪くて不快だわ」
「ふおぉぉぉぉ!!」
『本日の食レポはここまでー。次回の……』
「一言でまとめると、これでも50点評価なのが奇跡ね。1000円出してこれか。
半額でも高すぎるくらいよ。カップラーメンに塩むすびぶっこんで食べてた方が
まだ満足できるわね」
『(マズイって言っちゃったか…)マズイっていうのは、七海さんのご実家のある
地方の方言で「美味しい」って意味です』
「こんなメニューでお店が続いている秘密は、夜だけ男性常連客限定で出る鶴乃定」
ここで、映像は突然途切れ、本来の時間より早くコーナーは終わった。
次のコーナーまでの時間はCMで埋められ、その後は何事もなかったかのように番組は進行。
新設された食リポコーナーは、二回目からレポーターが阿見莉愛へと変更された。
名女優七海やちよが辛辣評価をした幻の回は、番組が終了した十数年が経過した今でも、
伝説として語り継がれている。
なお、中華万々歳は今でも参京区で営業を続けている。
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