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候補地には最低3回下見に訪れ、移住者に対する説明会にも参加。
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「私たちが溶け込んだと言うより周囲がすぐに打ち解けてくれたっていう感じですね。皆さん、身内みたいに声をかけてくれました。同世代が多かったせいか、まるで昔からの知り合いみたいに交流できて『やっぱり田舎の人は親しみやすくていいな』と感激したものです」
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親しみやすさがいつの間にか重荷に
お互いをファーストネームで呼び合い、子供の頃や学生時代の思い出話に花を咲かせ、気がつけばお互いの生い立ちや移住する前の生活についても赤裸々に明かせるような信頼(?)関係ができあがっていた(ように思えた)。

「でもね、この濃密な人間関係がだんだんストレスになって来たんですよ」
本を読んだり、DVDで映画を観たり、DIYに励んだり、家庭菜園を楽しむなど、現役時代にできなかったことを楽しみながら、毎日自宅でゆったり過ごしている大谷さん夫妻のもとを近隣住民が日課のように訪ねて来る。

「来てくれるのはいいんですよ。話し相手がいる方がこちらも楽しいし…。ただ長居されるのが困りました。朝から夕方までいるんですもん。『そろそろ昼時だね』と言われたら、お昼ご飯を出さないといけないし、3時になると野良仕事をしていた人たちまで休憩がてら顔を出すのでお茶の用意もしないといけない。

お茶菓子もお煎餅を出せば『甘いもんが欲しいねえ』と言われて、お団子を出せば『甘いもんだけだと飽きちゃうね』って言われるので、両方用意しないとダメでした。素直に思ったことを口に出してるだけで悪気はないのかも知れないですけど、こちらとしては手間もお金もかかるし、正直勘弁してくれって思ってましたよ」

誤解のないように付け加えると、住民の方も一方的にタカっていたわけではなく、「今度はうちにも寄ってね」と誘ってくれていたのだが、大谷さん夫妻は気が進まなかった。
「こっちが行ったら、向うはもっと頻繁にうちに来るようになるんじゃないかと思って、足を運ぶ気になれませんでした。とにかく近所付き合いそのものに疲れてたんですよ。

居留守を使おうにも、呼び鈴も押さずに勝手にあがりこんでくるんですもん。言葉は悪いですけど、締め出そうと思って鍵をかけたら『このへんは住民以外来ることがないから、誰も家に鍵なんかかけない』とか『なんでそんな他人行儀なことすんの?』って怒られましたよ。他人なのにね…」

周りから親しくされればされるほど、逆に心の距離ができてしまう…そんな大谷さん夫妻をさらに悩ませたのが地域との「交際費」だった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/db4565c158a5bc96818e260d7ad8d4ca5731a570