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 当人だけを置いてけぼりにして様々な思惑が交錯し鬩ぎ合い、結果的に何事もなく今日の課程は終了した。
 担任の板垣から帰りのホームルームの際、十二天に校舎を案内してやってくれと既に今更なんじゃないかと言う依頼の使命を受けた。一部の男子から羨望の眼差し、大多数のクラスメイトからは同情とも憐みとも呼べる視線、そして過激な一部女子からは余計な事をするなと言う恫喝に近い睨まれ方をした。
 「それじゃ十二天、校舎を案内するよ」
 このままここに長居すれば悪口大会の開催が遅れ、一部の女子から一層顰蹙を買いなので早々に退散しようと思い早速声をかける。
 十二天は何も気にしていないであろう自然体でお願いねと言い、俺の後ろをついてくる。
 足早に教室を退散し校舎内の案内を開始する。俺達の通う学校は学級棟と特別棟に別れている。両方とも三階建てで、学級棟は一階から一年教室、階数が上がると二年、三年と学年が上がっていく至ってあり触れた造りだ。教室は全部で四つあるが、一学年三クラスのため一番手前の教室は使われていない。