お題「UFO、札束、転校生」

 「初めまして、十二天光(じゅうにてんひかり)です。出身は神奈川県、趣味はUFOを探すことです。皆さんよろしくお願いします」
 七月七日、七夕の日に転校してきた彼女は自己紹介の挨拶でいきなり爆弾を投下した。近々転校生が来ることは噂されていたし、どうやら女子らしいと言うのが分かった時には大体の男子が浮ついていた。可愛い子だと良いななんて皆期待していたし、事実彼女自身の容姿は想像、いや妄想の上を行った。さらさらと長く美しい艶のある黒髪ロングに透き通る様な白い肌、すらりと脚の長く華奢な体躯、首から上もさながらアイドルの整った顔立ちにぱちりと開いた目、それでいて派手で下品な不良連中とは一線を画す品のある立ち姿なのだからもう完璧というより他なかった。
 彼女が教室の戸を開けてから教壇の前に立った時まで、このクラスの男子全員が唾を飲み込んだに違いない。だがそれも口を開くまでの間までしか持たなかった。明らかに普通と違う、頭のおかしい彼女の発言を受け、我ら男子の心の中で膨らんだ何かはあっという間に萎れてしまっただろう。
 「と言うわけで本日からクラスの一員となる十二天さんだ。皆仲良くするように」
 普段から仏頂面で不機嫌そうな担任の板貝も、言葉の上では取り繕っているが明らかに引いているのがわかる。板貝の引きつった顔がツボに入ってしまい、笑いを必死に堪えていたのだが不意に板貝に名を呼ばれ現実へ引き戻された。
 「十二天の席は一番後ろ、天神岡の隣だ。面倒見てやれよ」
 前回の席替えで運よく最後列、それも窓側から二番目の列と言う好位置を引いたのが仇になった。うちのクラスは奇数人だったため、一番窓側の席は空席だった。実質一番窓側の最後尾と言う非常に贅沢な環境を享受していたのだが、そこにこんな見た目だけ良くて見える地雷をぶら下げた女が越して来てしまった。とんだ誤算だった。