認知症疑いなのに3億円寄付を金沢医科大が受領、渋谷工業前社長の遺族が主治医ら提訴

認知症の疑いがある患者に3億円を寄付させたのは公序良俗に反し無効だとして、遺族らが金沢医科大(石川県内灘町)と主治医だった同大病院前院長に対し、計2億4750万円の損害賠償を求めて金沢地裁に提訴した。提訴は26日付。

提訴したのは、東証プライム上場の機械メーカー「渋谷工業」(金沢市)の前社長渋谷弘利さんの妻(87)と娘2人。

訴状によると、渋谷さんは2021年1月、脱水症状で約1週間、同大病院に入院。認知機能の低下が指摘され、同大病院の検査でも大脳の萎縮(いしゅく)が確認された。その後も通院を続け、同5月に3億円を寄付し、同10月に90歳で亡くなった。

遺族側は、寄付は渋谷さんの死後に判明したとし、「家族に確認せず、認知機能の低下に乗じて秘密裏に行った。病院と患者という関係性からも極めて不当」と訴えている。同大は「正当な手続きで寄付を受けた。訴状を確認して対応したい」とコメントした。

渋谷さんの遺族と代理人弁護士は27日、金沢市内で会見を開いた。原告の一人、渋谷さんの長女・毛利貴和(きわ)さん(62)によると、渋谷さんにはすでに多額の借り入れがあったにもかかわらず、大学に3億円を寄付。遺族が約2億円の借金を返済しなければならないという。毛利さんは、大学側が家族に相談なく多額の寄付を募ったのは、「極めて異常だ」と語気を強めた。

提訴を前に遺族は金沢医科大学に寄付金の返還について調停を申し立てましたが、大学側は「認知症であることの証明がない」として、返還に応じなかったということです。遺族は準詐欺の疑いで刑事告訴も検討しています。