高校生の時、
部活の合宿で海の傍の民宿に泊まり込んだことがあった。

怖い顔をしたおっさんが経営する民宿で、
安い割にボロボロで今にも倒れそうな木造だった。

夜、板張りの広い部屋で皆で雑魚寝していると、
突然俺は揺り起こされた。

寝ぼけ眼でぼんやりと起こした奴を眺めると、
そいつが

「トイレに行きたいけど、一人じゃ怖い」

と俺に囁くように言った。


俺は眠くてしょうがなかったが、
そいつが

「頼むよ、お願いだよ」

としつこく頼むので、
分かった分かったと言って布団から抜け出して、
皆を起こさない様に、
そいつと抜き足差し足で部屋を出た。