大企業のエリート会社員は案外楽な仕事をしている
若新:僕がずっと気になっているのは、今の日本は優秀な人材を無駄遣いしているということです。受験競争を勝ち抜いて一流大学に入れた人の多くは、誰もが名前を知っている大企業に就職していきますよね。でも、みんなあまり外では言わないんですけど、何人もの友達や後輩にこっそり教えてもらって分かってきたのは、大企業の仕事って案外楽なんですよ。戦後日本が猛スピードで経済成長できたのは、一部の大企業が儲かる仕組みの構築に成功してきたからです。つまり、既存の大企業はすでにビジネスモデルを確立していて、今必要としているのはそのモデルを崩壊させず、維持できる人材です。その典型例が商社です。大手商社は主だった商品の流通ルートをすでに握っています。だから社員の主な仕事は取引先との良好な関係を維持し、流通の過程でハンコを押すことです。インフラ系企業も同じでしょう。彼らの仕事も給料は高くて安定しているけど、実は難しくない。基本的なインフラはすでに完成していて、それを維持するのが主な仕事だからです。しかも実際に現場で手や体を動かして設備をメンテナンスするのはブルーカラーの人たちで、本社採用のホワイトカラーたちは現場を回って「監督(マネジメント)」するだけです。

津田:でも、取引先との関係づくりや現場監督の仕事も大切では?

若新:もちろん大切ですが、最も優秀な人材でなければ務まらないのか、というのが僕の問題意識です。大きなミスさえしなければ、儲かる仕組みは維持できます。それだけなら、ある意味まじめさと堅実さがあれば務まります。ではなぜそういう仕事に優秀な人材が集まるかと言えば答えはシンプルで、「楽して儲かるから」です。誰だってぬるい仕事で安定して年収1千万円を達成したいじゃないですか。大企業は儲かっているから社員に高い給料を払えます。どうせ高い給料を払うなら、なるべく優秀な人を雇おうとするでしょう。こうして厳しい受験競争を勝ち抜いた人たちが楽な大企業に就職する構図ができてしまいました。「いい大学を出て、いい会社へ」という言葉がありますが、この言葉は少し違っていて、実際には「いい大学を出て、楽な会社へ」になっていると思います。これって、社会全体で言えばとてももったいないことです。日本の社会がせっかくの人材をうまく生かせていない。日本から新しいもの、イノベーションが生まれないのは当然だと思うんです。