オニャンコポン(Onyankopon、偉大な者の意[1]; アカン語: Onyankopɔn)は西アフリカ・ガーナのアシャンティ人(英語版)に伝わる神であり、天空神[2]である。

同じくアシャンティ人などに伝わる神ニャメ(英語版) (Nyame) の別名とされることが多いが、オニャンコポンの神としての位置づけには曖昧な部分が多い。アカン語話者の神とされることもある[3][注 1]。

オニャンコポンの役割
アシャンティ人の宗教では、オニャンコポンに代表される神と精霊と祖先の霊という3種類の超自然的な存在が体系を形作っている[4]。すべての精霊はオニャンコポンによって創造されたとされている[5]。

精霊は野に森に遍く存在しているが、その中でも人とかかわりを持つようになった精霊をアボソム(abosom)とよび[5]、この精霊はオニャンコポンの召使いであり[6]、人とオニャンコポンとの間に入る媒介者としての役割を担っている[6]。

それぞれの精霊には司祭職が存在し[6][5]、彼らは薬を処方したり[5]、悪意ある精霊に対処したりといった役割を担っている[5]一方でオニャンコポンに対する司祭職は存在しない[6]。このことから読み取れる、人が神と直接関わりをもてないという考え方はアフリカの宗教によく見られ[7]、アシャンティの場合はオニャンコポンにまつわる神話に則している。

天空神であるオニャンコポンは、昔は人間たちに近い位置に居た。しかしあるとき、一人の老女がヤムイモを臼と杵で搗いていた拍子に、杵をオニャンコポンにぶつけてしまった。それ以来、オニャンコポンは遠く離れてしまったという[1][8](天地分離神話)。老女はオニャンコポンに到達しようと、多くの人に臼を集めさせ、高く積み上げさせた。しかしすべて積み上げても、一つ足りなかった。そこで老女は、積んだ臼の一番下の一つを抜いて上に積むように言った。そのようにしたところ、臼の塔は崩れ、多くの人が死んでしまったという[1][3][9][注 2]。

一方で、オニャンコポンへのお供え物が司祭職を通さずにできるということは、アシャンティの人々がオニャンコポンを身近に感じていた証拠だとする見方もある[6]。最近は廃れてきたものの、アシャンティの村では各家々がオニャンコポンに供物を捧げるための祭壇を持っている[6]。

フォルデ(Forde)はアシャンティがオニャンコポンを身近に感じていたことは彼らの持つことわざからも読み取れるとしている[6][注 3]