男「寂れた飲食店にトップ動画配信者のふりして入ったら大歓迎されてヤバイ」
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男(さて、昨日投稿した動画はどうかな……っと)
男「……」
男「たったの100再生……」
男「はぁー……あんだけ頑張って動画作ったのに。なかなか底辺配信者から抜け出せないな」
男「これじゃトップ配信者になるなんて夢のまた夢だ」
男「メシでも食いに行くか……」
……
男(ん、やけに寂れた店があるな。まるで俺の動画だ)
男(親近感湧いたし、ちょっと入ってみるか) 店主「いらっしゃいませー!」ニコニコ
男「!」
店主「ささ、お好きな席にお座りくださーい!」
男「どうも」
男(嬉しそうだな。本当に全然客が来てないんだろうな。よくやってけるな)
男(仮に有名人でも来たら、もっと狂喜乱舞するんだろうなー)
男(と、ここで思いつく……悪魔的閃きっ……!) 男「あのー、動画を撮ってもかまいませんか? 機材もあるんですけど」
店主「え、動画?」
男「はい、今はこういうカメラで簡単に撮れるんですよ」
店主「構いませんけど……なぜ?」
男「実は俺、動画配信サイトで結構な有名人でして……再生数10万とか100万とかバンバン出してまして」
店主「!」
男「もしかしたらいい宣伝になるんじゃないかと……」
店主「それはいい! ぜひお願いします!」
男(ぷくく、嬉しそうだ……そりゃそうだよな。店に自分の知らない世界とはいえスターが来たんだから) 店主「お食事はどういたしましょう!?」
男「んー……そうですねえ(ゆったりした態度で大物感をアピール)」
男「とりあえず、この唐揚げ定食をお願いします」
店主「かしこまりましたー!」
タタタッ
男(ウキウキで厨房に駆け込んでいった。笑える〜!) 店主「どうぞ!」
ドン!
男「ずいぶん多いですね」
店主「つい張り切っちゃって、アハハ」
男「(一応動画を撮りながら……)とりあえずいただきます」サクッ
男「うん、うまい!」
男(お世辞でなくうまい。もっと流行ってもいいのに)
店主「ありがとうございます〜! 人気の人にそういってもらえて嬉しいです!」
男「アハハ……」 店主「デザートです!」
店主「一家に伝わる漬物です!」
店主「あ、なんでしたらお酒も飲みます? ハタチ以上ですよね?」
男「いや〜、サービスいいですね」
店主「そりゃもう! すごい人に来て頂いたんですからサービスしなきゃ!」
男「ハハハ、こりゃどうも」
男(明らかに料金以上に飲み食いできた……)
男(いい思いができたな……) 男「……ちっ、やっぱり再生数伸びない」
男「あー、お腹すいたな」
男「今日もあの店行くか!」
……
男「また来ちゃいました」
店主「いらっしゃいませ!」
男(ニッコニコだな。こっちまで嬉しくなる) 店主「この間の動画、どうでした?」
男「え!? ああ、うん。かなり伸びましたよ。すごく伸びました。のびのびと伸びました」
店主「そうですか! それはよかった!」
男「……」
男(伸びてたら、今頃この店に客いっぱい来てるっつうの。なんで気づかないかね)
男(こういうところがこの店が流行らない原因なんだろうな。鈍すぎる)
店主「ご注文は?」
男「今日はアジフライ定食を……」 店主「ありがとうございました〜!」
男「ども」
男(またいい思いできた……)
男(俺がトップ配信者のふりしてる限り、俺はこの店でいい思いができる……)
男(ネットなんてやらなそうなおっさんだし、本当は底辺だってバレる要素もない……)
男(また来よう……) 店主「いらっしゃいませぇ!」
男「どうも〜」
店主「動画作成は順調ですか!?」
男「え、ええ……もちろん!」
店主「今日もサービスしちゃいますからねえ!」
男「あ、ありがとうございます」
男(この人は俺をトップ配信者と本気で信じてる……心に突き刺さる……) 男「……」
男(あの店で何度も飲み食いしちゃったけど……)
男(俺はものすごく悪いことをしてたのでは……)
男(だって、ただでさえ寂れてるのに、俺にあんなにサービスしたらヤバイだろ。マジで)
男(俺はあんないい人を騙して……)
男(何か俺にできることはないだろうか……)
男(できること……それはウソを本当にすることだ!)
男(もっと再生される動画を作って、あの店を宣伝できるぐらいの配信者になるんだ!) 男(そうと決まれば、底辺脱出大作戦!)
男(トップの動画を見て研究するんだ!)
男(今のNo.1配信者は道化ピエロか。話術とか手品とかがすごいやつ)
ピエロ『どうもー! 道化ピエロでーっす!』
ピエロ『今日もはりきって手品をやってこうと思うんですけど……』
男(すごいよな、夢中で見ちゃう。手品の腕もプロ級だし)
男(No.2配信者は半裸おっさん、この人も面白い。No.3は残念美女、可愛いけど毒舌がウリ……) 男(彼らの動画を参考にして、真似をしよう!)
男(上達するには模倣するのが一番だからな!)
男「どうも! こんにちは〜!」
男「今日ははりきって企画をやっていきまーす!」
男(発声はきびきびと、なるべくテンポよく、話術も勉強して……)
男(奇抜なことをやりつつ、決して王道も外さない。動画作りって大変だなぁ……)
……
…… 男「よし、5万再生!」グッ
男(あれこれ模索してるうちにコツをつかんで、だんだんと再生数が増えてきた……)
男(このまま順調に増やしていけば……トップ配信者の仲間入りも夢じゃない!)
男(そうだ! 久しぶりにあの店に行こう!)
男(今の俺なら十分、広告としての価値があるはず!)
男(……潰れてなきゃいいけど) 男(よかった……まだやってた)
男「お久しぶりです」
店主「いらっしゃいませ〜!」
男「あの、唐揚げ定食を……」
店主「毎度!」
男(相変わらず、喜んでくれるな……) 店主「はいどうぞ!」
男「どうも」
パクパク… モグモグ…
男(味も量も料金以上だ。俺はこんないい店を騙してたんだなぁ)
店主「ささ、デザートもどうぞ!」
男「ありがとうございます。ところで……」
店主「?」 男「俺が動画配信者だってのは、以前お話ししましたよね」
店主「ええ、とても再生数があるとか」
男「それなんですけど……」
店主「はい」
男「実は俺、底辺配信者だったんです。人気なんて全然なかったんです」
店主「!」
男「初めて来た時なんて、再生数100がせいぜいでした」
男「それなのに見栄を張って、ついネットじゃ有名人だなんて言っちゃって……」 男「そしたら、大サービスしてもらっちゃって」
男「それに味をしめて何度も通って……本当にすみませんでした!」
男「だけどあれから頑張って、少しは人気出てきました! 10万再生だってもうすぐです!」
男「だから今日は改めて宣伝させて下さい!」
店主「……」 店主「分かりました」
男「ありがとうございます!」
店主「こっちもサービスしたせいで、お客さんをかえって追い詰めてしまったようで申し訳ない」
男「いえいえ、追い詰めただなんてそんな」
店主「それじゃ、楽しい動画を撮って下さい」
男「はいっ!」
男(よかった、怒られなかった……。胸のつかえが取れたよ……) 男「ごちそうさまでした」
店主「またお越し下さい!」
店主「……」
店主「ふふふ、いい子だったな」
店主「わざわざ謝りに来るなんて、あの人柄……彼の動画はますます伸びるだろう」 店主「さて、着替えて……動画撮るか」
モゾモゾ…
ピエロ「どうもー! 道化ピエロでぇーっす!」
END なるほどね
だからどんなに店が廃れてても潰れはしなかったのか
乙 人の作ったものを褒めたいのは分かるが
無理に持ち上げるのも良くないと思うよ
ゴミに良質なものが埋もれて、結果若者が良い作品に触れる機会を減らして審美眼が養われないわけだ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています