どう

その1
奏太が赤ん坊の頃に両親が離婚した。奏太の親権は父に、姉の千鶴の親権は母に渡った。
以来、母と千鶴の二人と会うことは一切なかった。二人が今どこにいるのかも不明で、赤ん坊の頃に別れたので顔も知らない。

奏太は一家団欒というものに憧れていて、いつか再び家族が揃うことを夢見ていた。家族なんだからどんな苦難も乗り越えられる、じきに冬を越せると信じていた。

しかし19さいのクリスマスに、父が急逝してしまった。母と千鶴は葬儀に参列してくれなかったので、奏太は天涯孤独の身になったと感じた。

一人で暮らし始めた奏太の元に、SNSを通じて千鶴から連絡がくる。二人で食事する運びとなり、奏太はなぜかデートにでも行くような緊張を覚えた。

赤ん坊の頃以来に再会した千鶴はとても綺麗だった。周囲に自慢したくなるような人だったので、正直なところ奏太はときめいてしまった。
別れ際に、千鶴の体に生傷を発見する。千鶴は母から日常的にひどい虐待を受けていた。
奏太は親戚に相談しようと提案するも、千鶴が拒絶。両親の離婚の原因は千鶴にあり、親戚から目の敵にされてるからだという。父の葬儀に参列できなかったのもそれが理由で、奏太には初耳だった。
昔から『家庭が崩壊したのは千鶴のせいだ』とだけ母から言われてきたので、実のところ千鶴にも詳しい事情はわからないという。
母を「怒ると手がつけられないだけで普段は優しいから」と弁護する千鶴を見て、奏太は彼女の目を覚ましてやろうと決意した。奏太が思い描く家族というものは…何があっても家族を傷つけたりはしない。
奏太には千鶴が雪の結晶のようにもろく繊細で美しい存在に思えた。姉を守れるのは自分しかいない。

奏太の思いに心を打たれたのか、千鶴は奏太の胸に顔をうずめてきた。
奏太は、気づけばベッド上に導かれていた。千鶴はかなり手練れていて、何人も男を知っているような印象だった。
千鶴はほぼ知らない他人みたいなもんだが肉親だ。とはいえ、奏太は誘惑に抗うことができずその後何度も千鶴と逢瀬を交わすのだった。