宮崎駿監督の作品では、すべてのカットに監督みずからが手を入れるという異例の体制で制作が進められ、それが「宮崎アニメ」の圧倒的なクオリティーを維持してきた秘密とも言われます。

しかし今回、宮崎監督は映画の設計図となる絵コンテの制作に専念し、作画監督が具体化するという体制で進められました。

「僕は今回勝手にテーマを持っていて、“若い宮崎アニメ”が見たかった。それは絵によって決まりますが、今回の絵は全然違いますよ。だって、ミヤさんは「作画監督」という自分の大事な役割を若者に取られたわけでしょう。じゃあ絵コンテを描く時どうするか」

「作画監督は絵コンテを具体化しなきゃいけないから、ミヤさんの絵コンテは”こんなの描けるか!“みたいな芝居にあふれたんです。つまり自分じゃ描けないくせに、すごいのを押しつけた。でも、作画監督の彼は負けなかった。それによって、がぜん面白くなりました。こうした切磋琢磨が何かを生み出すと信じています」

「小説は原作ではありませんが、ミヤさんが子どものころに読んで受けた衝撃を、お客さんにも提供したいと思ったんでしょう。タイトルを聞いたときは正直、これをお客さんに問うのはどうだろうと思いました。ある種の、押しつけがましさのようなものを感じたんです。ところが、だんだん映画を作っているうちに、気がついたら世の中全体が『君たちはどう生きるか』という時代になってきた」

「今の日本で子どもたちが何を支えに生きていけばいいのか。それに対する宮崎駿監督の考えは、提供するものがあるのだと思います。僕は、それは娯楽だろうと言いたい。そういう中で僕らは学んできたんです。とにかく面白いものを作ろうとして、思っていたことは達成したつもりです。面白いことを僕は請け負いますよ」
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