バトルの特定のチャレンジを除き、『ファイナルファンタジーXVI』にはいわゆるミニゲームが登場しない。釣りも農作業も賭博もなければ、ブリッツボールのような架空の競技に参加するわけでもない。

その理由は、ディレクターの高井浩氏が本作で目指したゲームデザインの方向性にそのような遊びがそぐわなかったからだ。『ファイナルファンタジーXVI』はあらゆる面において、主人公クライヴの物語に没頭して遊んでほしいという思想がゲームデザインの根本にある。

物語の序盤で、クライヴの弟であるジョシュアが目の前で殺される。弟を守るために剣の道を歩んできたが、守り切ることができなかった。そんなクライヴは、復讐だけのために生きる人間となる。

「このように過酷な運命を背負い、自分の人生にすら執着を感じなくなっている、そんな主人公が、自分の目的に合わないパズルゲームを遊ばないと思うし、のんびりと釣り糸を垂らす、とは思えなかったのです」と高井氏。

「もちろん、そういった遊びがシステムとして実装されていて、そういったミニゲーム的要素をプレイするか、しないかは、主人公ではなくコントローラーを握るプレイヤーの自由でいいじゃん、という考え方も理解はしています。ですが、私たちはクライヴという男の生きざまを描くときに、彼の感情や行動心理上、必然性のないものを、遊びのバリエーションを増やす、という目的のために無理に実装することが、今回の物語上、良いこととは思えなかったのです。物語に没入し、クライヴそのものに同調してほしい、と考えました。ですので、物語を体験、プレイしているプレイヤーが徹底してクライヴの心情的に寄り添えるように、『クライヴは今、こんな行動は取らないだろう』と感じられてしまうものは、無くす努力をしたのです」