骨の成長に異常が生じる「脊椎(せきつい)骨端異形成症」患者の兵藤一晶さん(46)=前橋市=が、障害福祉サービスの重度訪問介護を十分に受けられないのは不当だとして、同市に24時間体制(月744時間)の介護サービス提供を求める行政訴訟を前橋地裁に起こした。11日付。

 兵藤さんは群馬県桐生市出身。1991年に脊椎骨端異形成症の診断を受け、母の介護を受けながら2人で生活していた。しかし母が2021年4月にがんで入院。自宅で生活できなくなり、今年1月から埼玉県所沢市で1人暮らしを始め、同市から24時間体制(2人体制含め月806時間)の重度訪問介護を受けて生活していた。

 出身地の群馬に戻りたいという思いから2月に前橋市に転入。月823時間の重度訪問介護提供を同市に求めたが、市は6割強に当たる月536時間の給付を示した。

 重度訪問介護では、重度障害者が自宅で生活するための総合的な支援を受けられる。障害支援区分が「4」以上で2肢以上にまひがあるなどの障害者が対象となる。厚生労働省の調査によると、20年9月時点で、全国で約2万5000人が利用している。

 兵藤さんの支援区分は最も重い「6」。左手をわずかに動かせる程度で、食事や入浴、床ずれを防ぐための体位交換など24時間体制の介護が必要という。現在は東京都の介護事業所が費用を肩代わりして介護してくれているが、兵藤さんは「ヘルパー費用を自己負担ではとても払えない」と不安を口にする。

 原告側の下山順弁護士は提供時間の地域格差を問題視。「24時間介護の必要性は明らか。介護の空白時にどう対応すべきかも市は示していない」と前橋市の対応を批判する。

 重度訪問介護の提供時間数をめぐる訴訟では、長野県信濃町の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性が24時間体制の提供を町に求めて提訴し、18年に町が給付を決定して和解した事例などがある。